旧東独ノスタルジー漂う街
ドレスデンからローカル線で1時間の距離にあるケムニッツは、旧東ドイツ時代の名前を「カール・マルクス・シュタット(Karl-Marx-Stadt)」と言います。これは共産主義思想の創始者、カール・マルクスの名を冠した「カール・マルクス・シティ」を意味する名称。当時の名残を伝える巨大なマルクスの頭部像が市街中心部に残っていて、東ドイツノスタルジーを今に伝えています。
古くから工業都市として栄えたケムニッツは、ドイツの中でも類を見ないほど多くの産業遺産が残る街。産業革命による急激な近代化と二度の世界大戦、東西分断とドイツ再統一という激動の歴史を経験したこの街の数々の建築物を通して、ドイツの知られざる歴史の側面をたどることができる、ちょっぴりマニアックなお宝スポットです。
“産業化と衰退”激動の歴史を経験
ケムニッツを代表する場所のひとつが、旧工場建築を利用したザクセン産業博物館(Sächsisches Industriemuseum)。洗練された佇まいの赤れんがの建物は、今では記念碑に指定されています。
ここでは人々の生活を劇的に変化させた近代の産業発展の歴史が、当時の蒸気機関などの機械とともに展示されていて、その多くは今でも稼働できる状態にあるのだとか。
19世紀ドイツの代表的な建築様式、グリュンダーツァイトとユーゲントシュティールの宝庫と呼ばれるのが、ケムニッツのカスベルク(Kaßberg)地区。精緻な装飾が施されたファサードが美しいマヨリカの家群(Majolikahäuser)に代表される優雅な住宅街は、19世紀の急速な産業化とともに発展しました。
ちなみにユーゲントシュティール様式といえば、市街中心部の市庁舎にも注目です。
もっと旅が楽しくなる!豆知識
- グリュンダーツァイト|Gründerzeit
- ユーゲントシュティール(アール・ヌーヴォー)
- プレハブコンクリート建築
1871年の普仏戦争後の好景気時代と、当時好まれた建築様式を指す。おもにバロックやロココなど歴史主義建築の復古様式がこれにあたる。
19世紀末〜20世紀初頭にかけて登場した建築・デザインなどの様式。動植物のシルエットなどをモチーフとした、柔らかい曲線美が特徴。
工場生産したコンクリートパネルを現場で組み立てるタイプの建築。旧東ドイツの集合住宅などに多く見られる。
2025年に開催されるフラッグシップ・プロジェクトのひとつが、#3000Garagen プロジェクト。旧東ドイツ時代に建てられたケムニッツ市内の3万件のガレージを公開し、所有者の個人史を紹介すると同時に、このユニークな場所を活用したアートプロジェクトです。
カール・マルクス像周辺など、市内には東ドイツ時代の社会主義的建築の代表ともいえるプレハブコンクリート建築が今も多く残っている一方で、19世紀の雰囲気を色濃く残す重厚な建築も存在感を示しています。そのコントラストが醸し出すノスタルジックな雰囲気が絶妙です。
クリスマスマーケットとお宝雑貨
そしてケムニッツが最も輝く季節は、クリスマス前の4週間、市庁舎前の広場にクリスマスマーケットが立つアドベントの時期です。
地元エルツ山地オリジナルのくるみ割り人形などクリスマスの伝統工芸品の屋台が立ち並び、まさに絵本の中から抜け出したクリスマスの子ども部屋のような多幸感に包まれます。
寒い中で飲むホットワインと、ソーセージやボリュームたっぷりのザワークラウトのスープなどの地元料理も絶品。
またこの街はクリスマスシーズン以外にも、豊富な伝統工芸品や旧東ドイツ時代のレトロ雑貨を見つけることができる蚤の市が有名で、お宝探しが楽しめます。
ケムニッツ近郊の見どころ
2025年の欧州文化首都に選ばれたのは、ケムニッツとその周辺の中部ザクセン38自治体。ケムニッツ周辺で必見の観光スポットを以下にご紹介します。
リヒテンヴァルデの宮殿と庭園
ポツダムのサンスーシ宮殿などと並び称される、バロックアンサンブルの庭園が美しいリヒテンヴァルデ城。職人技術の粋をきわめた庭園建築と水の芸術、多種類の植物や花々が、ドラマチックな構成をなしています。宮殿建物の中にある宝物美術館も見どころ満載です。
フライベルク
850年以上前に、銀の豊富な産出地として「シルバー・ラッシュ」を経験したエルツ山地のフライベルクは、世界遺産のエルツ山地鉱業地帯の一部であり、ザクセンに富と栄光をもたらしてきた重要な意味を持つ場所です。歴史的旧市街にある記念碑指定建造物の数はなんと500件に上ります。バロック・オルガンの製作者として名高いゴットフリート・ジルバーマンはエルツ山地出身。良質な木材や金属を使ったジルバーマン製作のオルガンは、この街に4台残されています。
https://www.sachsen-tourismus.de/jetzt-nach-sachsen/staedte/stadtschoenheiten/freiberg
アンナベルク=ブーフホルツ
2019年にユネスコ世界遺産に選ばれた「エルツ山地鉱業地域」の主要都市アンナベルク=ブーフホルツ。銀や錫、鉄などの多様な鉱山資源に恵まれたこの地域は、鉱山産業が廃れたあともクリスマスの工芸品やおもちゃなどの手工業の産地として栄え、現在に至っています。ドイツ最古の鍛冶ミュージアム、フロナウアー・ハンマー(Frohnauer Hammer)では、17世紀当時の水力技術を見学することができます。鉱業と手工業で発展した街の歴史を伝える美しいクリスマスマーケットも有名です。
ツヴィッカウ
音楽家のロベルト・シューマンの故郷であり、ドイツで最も美しい音楽ミュージアムのひとつとされるシューマンハウス(ROBERT SCHUMANN HOUSE)が存在する街ツヴィッカウ。旧東ドイツの片隅に位置するこの街は、実はドイツ自動車産業の歴史の重要な舞台でもありました。戦前にここで高級車アウディの前身ホルヒが誕生し、戦後は西側へ移転。残された工場設備を利用して、東ドイツの国産車トラバントが製造されました。アウグスト・ホルヒ・ミュージアム(August Horch Museum)では、その激動の歴史をたどることができます。
https://www.sachsen-tourismus.de/jetzt-nach-sachsen/staedte/stadtschoenheiten/zwickau
2025年欧州文化首都関連主要イベントリスト
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