歴史ロマンが満ちる古道「山の辺の道」

「山の辺の道の石標」画像提供:桜井市役所観光まちづくり課
奈良県の三輪山や春日山を南北に繋ぐ「山の辺の道」は、有史以前から存在したとされている日本最古の古道。古墳時代から政治的・宗教的な中心地を結ぶ重要なルートでもあり、歴史ある神社仏閣、天皇の陵墓や古墳、史跡、万葉歌人たちによる歌碑が点在する全長約35kmの歴史ロマンに満ちた小径です。
JR奈良駅からJR万葉まほろば線「天理駅・長柄駅・柳本駅・巻向駅・三輪駅・桜井駅」にかけて続く南側の「山の辺の道」。天理駅近くの「石上(いそのかみ)神宮」から桜井駅の「仏教伝来之地碑」までの全長約12kmのこちらの南コースが最も人気の区間です。
観光案内に配布されているパンフレットには南側のハイキングコースの全長と見どころが記載されています。『古事記』や『万葉集』ともゆかりのある柿本人麻呂ら歌人が詠んだ歌碑や、大和三山の景観を望みながら散策できるのも魅力です。
三輪駅~檜原神社ルートの見どころ・名所
今回私は、三輪駅へ向かい「大神神社」を北上し、大神神社の摂社である「檜原神社」まで歩いてみました。片道約1.5km(約20〜35分)のお気軽ルートです。
日頃から篤く信仰されている「大神神社」。境内には、大物主大神の化身である白蛇が棲むと云う「巳の神杉」、熊野三山の神様をお祀りする「神宝神社」、縁結びに御利益のある「夫婦岩」など摂社末社が多く、神聖な空気で満ちています。
境内の左手奥には「狭井神社」が鎮座し、拝殿脇には万病に効くという「御神水(ごこうずい)」が湧いています。コップ1杯いただくと何だか元気がでてきました!
大神神社から檜原神社を目指して、山の辺の道へ。鳥たちの歌に耳を傾けながら、しばしの心穏やかになれる散策。大神神社の末社で雨を司る神様を祀る「貴船神社」や真言宗の寺院「玄賓庵」も見えてきます。
清々しい緑のトンネルを通り、文明的な石畳の道や山道などを歩くことで脳もリフレッシュ。すれ違う人達と挨拶を交わせるのも小径ならではの距離感。人の温もりを感じられる瞬間です。
山道では足元に気をつけて進みましょう。歩きやすい靴がベスト!
約20分で、大神神社の摂社「檜原神社」に到着。天照大御神が伊勢神宮に祀られる前に、宮中から最初に祀られた地(元伊勢)として知られている聖地です。青空と山並みの美しさに心が洗われました。夕方、鳥居の向こうに広がる夕景も絶景のようです。
檜原神社の隣には、2026年に藤庭園も開園予定。白、ピンク、紫の藤棚の先に山も望める絶景が待っています。庭園が開園したら、奈良の絶景スポットとして注目されそうですね。
天理駅~桜井駅ルートの見どころ・名所
天理駅から桜井駅まで、各駅から徒歩圏内の見どころを紹介します。

石上神宮
「天理駅」から約2km先にあるのは、『古事記』にも登場する最古の神宮「石上(いそのかみ)神宮」。こちらには天の岩戸開きの神話にも登場した鶏が縁起のいい鳥として放し飼いにされています。
その先には、桜のスポットである「内山永久寺跡」があり、石上神宮から2.5km先には春日大社の4神を祀る「夜都伎(やとぎ)神社」も見どころ。
「長柄駅」の近くの森の中には、戦艦大和にゆかりがある「大和神社」が鎮座しています。
「柳本駅」の近くには、卑弥呼の鏡と云われる“三角縁神獣鏡”が出土した「黒塚古墳」、弘法大使が開山した古刹「長岳寺」、全長約242mの前方後円墳「崇神天皇陵」など見どころがたくさん。
「巻向駅」の近くには、相撲発祥の地とされる「相撲神社」、日本武尊の父で第12代景行天皇の巨大な古墳「景行天皇陵」、“穴師坐兵主神社・穴師大兵主神社・卷向坐若御魂神社”の三神合祀の神社「兵主神社」も外せないスポットです。

「大神神社・二の鳥居」画像提供:大神神社
「三輪駅」の近くには、三輪山を御神体とする「大神神社(おおみわじんじゃ)」が鎮座し、駅の反対側には「大神神社の大鳥居」も聳えています。身体健康・病気平癒の「狭井(さい)神社」、天照大御神が宮中より最初に祀られた地とされる「檜原神社」という大神神社の摂社へと続いています。
大神神社と檜原神社の途中には、平安時代の高僧・玄賓僧都(げんぴんそうず)の庵「玄賓庵」があり、檜原神社からさらに足をのばして、卑弥呼の墓の可能性があると云う「箸墓古墳」まで散策するのもいいですね。
「桜井駅」方面には、十一面観音が御本尊で大神神社の神宮寺でもあった曹洞宗の寺院「三輪山平等寺」、“山の辺の道の南の起点・到着点で最初に仏教が伝えられた「仏教伝来之地碑」があります。
全コースをがっつりハイキングするのもいいですが、各駅から出発し、目的の寺社仏閣の参拝、古墳や史跡を訪れるついでに気軽に歩いてみるのもよいでしょう。
万葉歌人たちの歌碑
山の辺の道は、天智天皇、倭建命(ヤマトタケル)、飛鳥時代の歌人柿本人麻呂、俳人の松尾芭蕉など歴史上の人物の詩が刻み込まれた歌碑が全39基点在しています。
版画家の棟方志功、文豪の川端康成、日本画家の東山魁夷など、昭和を代表する著名人たちによる“揮毫”も現地での見どころ。

「十市遠忠の歌碑」画像提供:天理市産業振興課
恋の詩、自然の優美さを表した詩があるなかでも、柳本町・天理市トレイルセンター付近にある戦国武将の十市遠忠の歌碑「天下おさまる時を朝夕の 月にも日にも先(まず)いのる哉」(出典:百番自歌合)は印象的。戦が続く時代に平和を祈っている想いが、目の前に広がる穏やかな景色とともに胸に染み渡ります。
古人の歩いた道を気軽に歩いてみよう
パンフレットの地図や道中の標識をアイテムに気軽に歩いてみてほしい「山の辺の道」。草花や風の心地よさ、神様の存在を感じながら、古の人々と心を重ねて情緒豊かなひとときを満喫できることでしょう。
所在地:奈良県天理市・桜井市
問い合わせ:
(桜井市観光まちづくり課)0744-42-9111
(天理市産業振興課)0743-63-1001
*山の辺の道の桜井市側は「桜井市観光まちづくり課」へ、天理市側は「天理市産業振興課」へお問い合わせください。
(参考資料)
・一般社団法人桜井市観光協会
公式サイト:https://sakuraikanko.com/
・天理市観光協会
公式サイト:https://kanko-tenri.jp/
・三輪明神 大神神社
住所::奈良県桜井市三輪1422
TEL:0744-42-6633
交通:JR「三輪駅」から徒歩約5分
公式サイト:https://oomiwa.or.jp/
[photos by kurisencho&PIXTA]