
エコツーリズム発祥の地・コスタリカ
「自然と共に生きる」——そんな旅の在り方を体現している国、それが中米の小国・コスタリカです。国土は日本の九州ほどの広さしかありませんが、世界の生物種の約5%がこの国に生息しています。つまり、地球の生物多様性の“縮図”のような場所なのです。
コスタリカは1980年代から国家レベルで自然保護政策を推進しており、国土の25%以上が国立公園や保護区に指定されています。森林伐採が進んでいた時期を経て、「自然を守ることこそが最大の資源」という考えが国全体に根づきました。
さらに観光による収益を再び環境保全へと還元する仕組みを整えたことで、「エコツーリズム発祥の地」として世界から注目を集めるようになったのです。
Pierella Ecological Gardenってどんな場所?

Pierella Ecological Gardenは、コスタリカ北部のSarapiquí(サラピキ)地域にある、家族経営の小さな保護区兼ファーム。首都サンホセから車で約3時間、熱帯雨林地帯に位置しています。
20年以上前、もともと牧草地だった土地を一から植林し、少しずつ森を再生させてきたのがオーナーのウィリアムさん一家。観光業というよりも、「森を取り戻すこと」を目的に始めたプロジェクトでした。いまでは豊かな生態系が戻り、バタフライガーデン(蝶園)、有機農園、保護林が一体となった自然教育の場として、世界中の旅行者や学生が訪れています。ここでは「宿泊すること」自体が、森の再生を支える行為になるのです。
滞在者を魅了する“手づくりの森”
バナナを木に刺して共生をする様子
Pierella Ecological Gardenでまず印象的だったのは、「この森は自然にできたものではなく、“人の手で再生された森”だ」ということ。ガイドさんの説明によると、時間と手間をかけて地元の樹木や果樹を植え、鳥や蝶が戻ってくるように環境を整えた結果、20年をかけて本物の熱帯雨林の姿を取り戻しました。その結果、私たち観光客は、豊かな動植物を安全に楽しむことができます。

朝は霧の中で鳥の声が響き、昼は陽光が葉の隙間を抜けてキラキラと輝く。夕暮れには遠くで鳥やサルの声が聞こえ、夜には蛍が舞う。人の手で再生されたとは思えないほど生命の息づかいが濃密で、“生きている森”という表現がぴったりでした。
出会える生き物たち

森を歩けば、いたるところで生き物との出会いがあります。枝の上でゆっくりと動くナマケモノ、オウム、鮮やかな羽を広げて飛び回るモルフォ蝶。

夜のナイトウォークでは、ガイドの懐中電灯が照らす先に、カラフルなカエルや、「デニムを履いているみたいでしょ?」と赤い体に青い足のレッドポイズンダートカエル。名前の通り、実は毒を持っているので注意!
ガイドさんの説明を聞きながら、動物園とはまったく別物の「自分の足元で生きている」という“動く生態系”に圧倒されました。一瞬一瞬が自然の奇跡であり、その感動は写真には到底収まりません。
iPhoneの絵文字にある蝶 🦋と同じ
ツアーはリクエスト制で、筆者は「可能な限り、生き物を見たい」とリクエスト。夜、早朝、朝ごはん後、昼ごはん後にツアーが催行。最後は自由に歩き回っていいよと自由散策も……! スケジュールや希望をスタッフさんに相談してみましょう。
ファームステイでできること

Pierella Ecological Gardenでは、バナナ、カカオ、パイナップル、サトウキビなどが栽培されています。宿泊者も希望すれば収穫や植え替えを手伝うことができ、作物がどのように育ち、どんな昆虫がその生育を支えているのかを体感的に学べます。
さらにコスタリカではカカオからチョコレートを作る人気の体験もあります! 無類のチョコレート好きの筆者は、本物のカカオが木に実っていることにも、そのカカオからチョコレートを作れる体験にも大興奮。カカオってフルーツの1つだと体感できるアクティビティでした(カカオがフルーツだって知っていましたか?)。

カカオの実

食事はファミリーがキッチンで作ってくれます。そのおいしさやボリュームの多さにまたびっくり。筆者はバナナが苦手なのですが、農園で採れたバナナをキャラメリゼしたものはあまりにもおいしく、自分がバナナが苦手なことも忘れるほどでした。
美味しかったキャラメリゼしたバナナ
さらにとれたてのフルーツに、先ほどの自家製チョコソースをかけたものがかなり絶品なので、ぜひお試しください。
ここでの生活はまさに、デジタルな生活から離れ、 “暮らしの原点”に立ち返るような時間でした。

また、Pierella Ecological Gardenでは地元の子どもたちに自然教育プログラムを提供しており、滞在者がその手伝いに参加することも可能です。観光する側とされる側の境界を越えて、地域の一員として関われるのは、ここならではの経験だと感じました。
予約方法・過ごし方のスケジュール

Pierella Ecological Gardenへの予約はメールあるいはWhatsAppでの問い合わせがおすすめ。宿泊サイトなどでは探せないので、公式HPから問い合わせてみましょう。「何時に行けばいい?」と問い合わせても「anytime(いつでも)」と返事があり、好きな時間に行ってよいようです。交通はレンタカーがおすすめ。広大な農園なので、大通りから小道に入り、少し奥まった場所にあります。

お部屋はロッジタイプで、驚きなのはWi-Fi・シャワー・タオル・シャンプーなどが完備! ドライヤーは見当たりませんでした(筆者は持参していたので問い合わせていませんが、質問すればあったかもしれません)。衝撃なのはビールも買えること! ファームステイですが、不便さは感じませんでした。
18時にチェックイン→すぐにナイトツアー→晩ご飯→朝6時からツアー→朝ごはん→再度ツアー→チョコレートづくり→ファーム散策ツアー→昼ごはん→ファーム散策→チェックアウト
でした。チェックアウトも「何時でもいいよ」と言われ、あまりの柔軟さに、実家のような心地よさを感じるほどでした。

あまりの居心地のよさにもう1泊したくなりました。さて1泊2日、1人で個室を利用しての宿泊費は100USドル。驚きのプライスです。
なぜなら、コスタリカでは、ナイトツアーや朝のツアーに参加するだけで1回30USドルはするのですが、チョコレート作り体験も含め、ツアーを5回も体験した上に、食事が3食、1泊したのに100ドルなのです。いかにコストパフォーマンスがよいか、伝わると嬉しいです。そんな理由もあり、訪れた人々を魅了し、高レビューを集めているのだなと実感しました。
多くの日本人が訪れているのか、日本語の説明も

コスタリカでエコツーリズムを体験したい。そんな理由から訪れたPierella Ecological Gardenで感じたのは観光地を巡る旅では得られない、静かで深い満足感。“見る旅”から“生きる旅”へ。コスタリカのファームステイは、そんな旅の新しいかたちを教えてくれます。エコツーリズム発祥の地・コスタリカのファームステイで、あなたも森と生きる時間を体験してみませんか?
所在地 Calle La Plaza, Heredia, Sarapiquí, Horquetas, コスタリカ
https://pierella.com
©︎Keiko Morota
※営業については最新情報をご確認ください。


