愛と自由と痛みに生きたフリーダ・カーロ
日本人女性にも熱烈なファンが多い、メキシコを代表する画家フリーダ・カーロ(1907~1954)。強く自由な女性であり、その情熱的な人生がたびたび映画化されています。日本公開された『フリーダ』(ジュリー・ティモア監督)で興味を持った人も多いことでしょう。
彼女の人生はまさに激動。少女時代、乗っていたバスが事故に遭い、下半身を鉄のパイプが貫通する大けがをし、その後遺症に悩まされながらも創作活動に没頭しました。
そして、メキシコ壁画運動の中心にいた、巨匠画家ディエゴ・リベラ(1886~1957)と結婚しますが、彼は根っからの女好きで、フリーダの妹にも手を出してしまいます。そんなディエゴの裏切りから受ける傷を紛らわすかのように、彼女もたくさんの恋に溺れるのです。芸術家のイサム・ノグチや革命家のトロツキー、メキシコを代表する女性歌手のチャベーラ・バルガスとも恋愛関係にありました。
フリーダの幻想的な自画像 ©Miho Nagaya
彼女の作品には自画像が多く、そこには孤独、痛み、苦しみ、夢、希望などが生々しく刻み込まれています。
ディエゴとフリーダは、激しくぶつかりあい、結局離婚をしますが、フリーダの病状が悪化したときに、ディエゴは彼女の元に戻りました。そして、ディエゴはフリーダの死を見届け、その3年後に亡くなりました。
メキシコの500ペソ札にはフリーダとディエゴの肖像が描かれている ©Miho Nagaya
フリーダとディエゴの愛の家が博物館に
フリーダ・カーロ博物館の入り口 ©Miho Nagaya
そんなフリーダとディエゴが、暮らしていたメキシコシティ南部コヨアカン地区にある、青い壁の邸宅は「青い家」と呼ばれ、現在はフリーダ・カーロ博物館となっています。
この博物館は、彼らが住んでいた当時のインテリアを保存しているのです。
鮮やかな青の邸宅 ©Miho Nagaya
メキシカン・フォーク・アート好きにはこたえられないインテリア ©Miho Nagaya
味のある食器コレクション ©Miho Nagaya
キッチンのインテリアが新鮮 ©Miho Nagaya
鍋ひとつとっても可愛い ©Miho Nagaya
フリーダのアトリエ ©Miho Nagaya
フリーダが使っていた車いすもある ©Miho Nagaya
フリーダの寝室。このレコードプレーヤーでどんな音楽を聴いていたのだろうか ©Miho Nagaya
フリーダの使っていたベッドに置かれた彼女のデスマスク ©Miho Nagaya
青い家の壁には「フリーダとディエゴがこの家に住んでいた」と書かれている ©Miho Nagaya
フリーダが普段着にしていた伝統衣装が史上初公開中
フリーダ博物館では、2014年1月31日まで、彼女の着ていた衣装を一挙公開する展覧会『Las apariencias engañan: los vestidos de Frida Kahlo(人は見かけによらぬもの:フリーダの衣装)』がファッション雑誌ヴォーグ・メキシコとのコラボレーションにより開催されています。
フリーダの死後、ディエゴは、彼女の衣装や身のまわりの品を誰にも公開しないことを決め、クローゼットを封印しました。ディエゴも亡くなり、彼の友人でありパトロンであったドロレス・オロメドが、
ディエゴの死後15年間はフリーダのクローゼットの扉を開けないという遺言を受けました。
その遺言を守ったドロレスですが、今度は自身が亡くなるまで、クローゼットを封印しようと決意したのです。
そして、ドロレスは2002年に亡くなり、フリーダの死後58年たった今、ようやく一般公開されることになったのでした。
「フリーダの衣装」展示のようす。フリーダのコーディネイトはいま見ても斬新で素敵 ©Miho Nagaya
フリーダの家族はメキシコ南部オアハカ州出身だったこともあり、彼女はオアハカの伝統的な衣装を普段着としていました。革新的な女性であったフリーダですが、メキシコのルーツである先住民文化や、民芸に対して、深い愛情と敬意をもっていたことを感じるのです。
長屋美保 ライター
メキシコシティの路地裏から見た生のラテン文化や社会を追い続けるフリーライター兼なんでも屋。雑誌、WEB、ラテン圏アーティストのCD解説、映画、コンサートのパンフレットなど、メキシコを中心としたラテンアメリカの記事を日本の媒体に執筆するほか、リサーチやスペイン語⇔日本語翻訳も行う。情報サイトAll Aboutのメキシコ公式ガイドでもある。
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