ドゴン族はマリ共和国に住む民族。700ほどの村に点在し、25万人ほどが暮らしています。裸眼では見えない星の運行を彼らは伝承で知っていた、と世の中を驚かせたこともありました。
独特の建物や倉庫
おとぎ話の小人が住んでいそうな、独特の彼らの住居は、日干し煉瓦造り。ワラ葺きのとんがり屋根の建物は倉庫です。
倉庫には男性用・女性用があり、男性用は食料を、女性用は衣類を保管しているのだとか。
彼らのほとんどは昔からの土地の信仰を守り続けていますが、イスラム教徒になった人々もいるため、モスクのある村も。こちらも泥とワラでできています。
争いを好まないドゴン族には、和を大切にする多くの儀式や工夫があります。トグナと呼ばれる集会所もそのひとつ。かがまないと入れない天井の低い集会所は、おじぎをしないと中に入れないようにし、話し合いが白熱したとき立ち上がって喧嘩になるのを防いでいるのだそうです。
信仰とアート
村の背後にそびえる断崖には、無数の穴が。実はこれは先住のテレム族の住居だったそう。ドゴン族はこの洞窟を「もうひとつの世界をのぞき込むための眼」と考え、先祖のための聖廟にしています。
割礼の儀式が行われる場所には、印象的な壁画がたくさん。
壁や扉の彫刻は、神話を視覚的言語で表したもの。例えば扉に描かれたワニは、家の中の人々を守ってくれるのだそうです。素朴で力強いアートは、訪れた人々を魅了するだけでなく、西洋芸術にも影響を与えたと言われています。
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迫力の仮面ダンスは、死者が次の世界に行く橋渡しの儀式や、60年に一度のシギの祭りなどで披露されました。今は観光イベントとしても見ることができます。竹馬のダンサーは、鳥に扮してるそうです。
実は先述の星の運行の謎については、「彼らに情報を伝えた西洋人がいる」「そのような伝承はなかった」という説が今は主流だそう。しかしそんな伝承の存在を信じたくなるような神秘的な文化が、ドゴン族にはあるのだと思います。