福建土楼(ふっけんどろう)。漢民族の末裔である客家(はっか)が、異民族の侵入を逃れて南下し、福建・広東省の山奥に建てた住居です。
砦でもある住居
客家は独自の文化や言語をもっていました。よそ者である彼らは、周りの住民との争いも多かったため、敵を防ぐ砦の役目もかねて、土楼を築いたそう。
上空から見ると、特殊な何かをつくっている工場のようにも見えます。中には、楕円形や方形のものも。
土楼の壁は厚さ2メートル近くあり、頑強でセメントよりも硬く、雨風から守るのはもちろん、耐震・防火の役割も果たします。井戸や食糧庫もあるので、1〜2年籠城することもできるのだとか。
一族の絆を強める空間
中はさながらスタジアムのよう。開放的で親密な空間です。
広い中庭には、土楼により井戸や先祖をまつる堂があったり、家畜小屋があったり、木造家屋が何重にも連なっていたりします。入り口はたいてい、1つしかありません。
木造の家屋は、どこか懐かしい雰囲気。夏は涼しく、冬は温かいそうです。共同生活という意味でマンションの原点ともいわれますが、1階は台所、2階は食堂、3階は倉庫、4階は寝室という構造が多いようです。基本的に隣とはつながっていないので、すごく縦長な居住空間といえます。
土楼は客家だけでなく地元の人々が住んでいたものもありますが、その数は4000以上。そのうち福建省にある46の土楼が、世界遺産に登録されています。
夜、ライトアップされた土楼の風景も素敵です。宿泊できる土楼もあるので、ホームステイ感覚で客家生活を体験してみるのもよいかもしれませんね。
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