北をロシア、南をトルコ、アルメニア、アゼルバイジャンと接する国、グルジア。
当地のワイン造りの歴史は古く、8000年以上前に遡ります。醸造法は当時とほとんど変わっていないため、古代のワインが今でも楽しめるのだそうです。また諸説ありますが、グルジアはワイン発祥の地として知られているほどで、そのワイン文化は人々の生活に深く浸透しています。
しかし日本はおろか、世界でも「グルジアワイン」はあまり知られていません。そこで今回は無形文化遺産に登録されている「古代グルジアの伝統的な発酵ワイン」について見ていこうと思います。
まずはグルジアという国について
古くから文明が発達していた同国は、アジアとヨーロッパを結ぶ中継地として発展してきました。紀元前4世紀から5世紀にかけて王国のあった「ムツヘタの文化財群」や「神の砦」という意味のウプリスツィにある洞穴住居跡など、歴史ある建造物や跡地が点在しています。洞穴住居跡にはワインの醸造所があり、紀元前2世紀にはこの場所でワイン造りが行われていたそうです。
あまりに遠い昔のために実感が湧かないけれど、今でも当時の面影を感じられるのはすごいことだと思いませんか?
グルジアとワイン
ワインは神聖な物とされており、日々の食卓にはもちろん祭事には欠かせない飲み物です。グルジアの一般家庭にあるワインセラーは家庭内で最も神聖な場所なのだそうですよ。日本の家庭にある神棚と似たようなイメージなのかもしれませんね。
ゼロから始まるワイン造り
縄文土器を思わせる「Qvevri(クヴェブリ)」と呼ばれる大きな壷のなかで発酵させて造ります。まずはクヴェブリ作りからスタート! クヴェブリ職人たちが土の選定から焼成まで一連の作業を丁寧にこなしていきます。
©2012 by Ministry of Culture and Monument protection of Georgia
©2012 by Ministry of Culture and Monument protection of Georgia
グルジア原産のぶどうは520種類にも上りますが、現在ワイン造りに使用されているのは32品種。収穫したぶどうをつぶしてクヴェブリ内で発酵させるのが伝統的な製法です。約2週間後に新たなクヴェブリに入れ替え密閉して土の中で自然発酵させます。こうした製法は世界には例がないといいます。
©2012 by Ministry of Culture and Monument protection of Georgia
©2012 by Ministry of Culture and Monument protection of Georgia
西洋のワインと比べて熟成期間が3〜6カ月間と短いのも特徴のひとつ。 果実を丸ごと発酵させるため、独特の風味が生まれるのだそうです。
主な産地と銘柄
代表的なワインの産地は東グルジアにあるカへティ地方とイメレティ地方。日本でも飲みやすい銘柄は、とろけるような甘さとコクのある口当たりの赤ワイン「フヴァンチカラ」、琥珀色をした芳醇な白ワイン「ムツヴァネ」など。伝統製法ではありませんが、世界でも評価の高い辛口の赤ワイン「ムクザニ」も試してみたいところ。
東京でも飲める! グルジアワイン
実はこのグルジアワイン、都内でも楽しむことができます。さまざまなグルジアワインが味わえるグルジアワインバー「Ancient Wines」。 クヴェブリを用いた伝統製法で造られるワインを始め、珍しいスパークリングワインなどもあります。
東京まで出るのはちょっと、という方にはグルジアワインをネット通販「ワインで世界の国巡り葡萄屋」でオーダーすることもできますよ。 1000円代からあるので、気軽に楽しめそうです。
現在は西洋ワインに押されつつあるグルジアワインですが、伝統製法に基づいたものは全く異なる味わいだそうです。遠い昔に思いを馳せつつ、試飲してみたいものです。それにしても、世界には知られざるワインがたくさんありますね!