自然を相手に仕事をしている人であれば共感できると思いますが、海や山に対して自然な形で畏敬の念を覚える感覚が人間には備わっています。
富山県の立山も少し前までは山岳信仰の聖地として多くの信者が命がけで足を運んだ霊山でした。そのふもとの村、芦峅寺(あしくらじ)で行われてきた女性救済の宗教儀式が、サントリー地域文化賞を受けて注目を集めています。
そこで今回は、富山県立山町で今も3年に1度行われている擬死再生の宗教儀式、布橋灌頂会(ぬのばしかんじょうえ)の魅力を紹介したいと思います。
女人禁制の立山に入山できなかった女性を救う宗教儀式
冒頭でも触れた通り、富山県の立山は古くから山岳信仰の拠点として、多くの信者を迎え入れていました。弥陀ヶ原(みだがはら)や地獄谷を代表するように、この世とは思えない独特な景観が多いために、あの世と同一視された霊山だったそうです。
立山入山は死を意味し、死を経て罪を清め生まれ変わって下山する、そのプロセスが当時の信者には非常に重要だったとか。しかし、女人禁制の立山は女性の入山を厳しく制限していたため、女性の信者は救われる術を持てません。
そこで立山の入り口である芦峅寺で行われた女性のための宗教儀式が、布橋灌頂会になります。
三途の川に掛けられた布橋を往復して死と再生を疑似体験する儀式
布橋灌頂会は、芦峅寺の布橋で行われます。布橋の掛かるうば堂川を三途の川と見立て、「この世」である芦峅寺の村から、対岸の「あの世」へ一度渡り、死を体験して罪を清め、再び橋の向こう側から戻ってくる儀式になります。
女性の信者は、白装束に編み笠を身に付け、白い布で目隠しを行います。橋の上には浄土への道を意味する白い布が3本敷かれ、その上を女性は視野を失った状態で歩きます。
明治時代に取りやめになった宗教儀式ですが1996年に130年の時を経て復活し、今では3年ごとに、女性であれば誰でも参加できるスピリチュアルなイベントとして開催されています。
どうしても断ち切れない悩みや迷いがある女性は、当時とほぼ同じ内容で死を体験する宗教儀式に一度参加してみるといいかもしれません。目隠しを取り光を取り戻したとき、新しい自分に生まれ変わっているかもしれませんよ。
前回開催は2014年9月。次回は2017年です。まだまだ先になりますが、これから注目される行事になりそうです。
[立山を代表する華麗な橋渡り儀式「布橋灌頂会(ぬのばしかんじょうえ)」がサントリー地域文化賞を受賞しました! – サントリー]
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