イタリアの最果てで見る絶景、湖の中の鐘楼
北イタリア、オーストリアとの国境をまさに超えんとする道に、心に焼き付くその絶景はあります。
アルプス山脈に抱かれた静かなる湖の中に立つ鐘楼をご紹介します。
アルプス山脈に抱かれた静かな村
イタリア北部アルト・アディジェ州、メラーノ駅からさらにローカル電車に乗り換えて、終点のマレッスへ。そこからまたバスに乗り換えてさらに、オーストリアとの国境を目指します。
アルプスの頂が手が届きそうに迫り、もうすぐ国境というところにあるクローン・ヴェノスタという小さな村で下車します。
いかにもアルプスの村といったかわいい町並み。この村の外れにあるレジア湖にその絶景はあります。
言葉を失う美しさ、湖の中に静かに立つ鐘楼
空を映す大きな鏡のように青く輝く湖の中にポツンと立つ鐘楼。なぜそれがそこに? という驚きは、その美しさにかきけされてしまいます。
手が届きそうな空、空をそぐように反り立つアルプスの山々は雪を抱き銀色に輝き、紅葉した森の木々は黄金色に陽の光を照り返す。その美しき景色の全てを映す静かな湖が、まるで祈るように抱く鐘楼。その光景は言葉を失う美しさです。
この湖の中の鐘楼にはこんなストーリーがあります。
この湖は水力発電のために作られた人工湖。元々ここには村がありました。湖が作られるにあたって、村人は移住し、村はつぶされ水の底へと沈んだのですが、14世紀に作られた、ロマネスク様式の美しい鐘楼だけは残されました。全てが水に沈んだあとも、その美しい塔の先端を水からのぞかせているのです。
少し切なくなるようなお話も、人々がこの美しい鐘楼を守ったことで、素敵な物語になったような気がします。もしかしたら、普段私たちの身に起こる悲しくなるような出来事も、大切なものを一つでも守れたなら、素敵な物語になっていくのかもしれません。
イタリアの最果てで見た絶景。人々の祈りを天に届けるように、今日も鐘楼は静かに湖の中に立っています。
[All Photos by Ryoko Fujihara]
[レジア湖へ向かう交通機関を含む、トレンティーノ・アルトアディジェ州の交通機関に関する総合サイト]