子どもたちにプレゼントを持ってきてくれるサンタクロースは、世界中の子どもたちの人気者ですよね。でもオランダのサンタクロースは、他の国とはちょっと違うんです。
まずお名前は、シンタクラース(Sinterklaas)といいます。白く長いおひげをたくわえた老紳士であることには変わりないのですが、服装は赤いマントをつけています。そして「ズワルト・ピート」と呼ばれる、おっちょこちょいな従者たちを連れているのが特徴です。このピート、煙突を通って子どもたちにプレゼントをとどけるため、顔がいつも炭で真っ黒になっています。
船で旅するシンタクラース
そして、通常のサンタクロースがトナカイのソリで世界中の街を回るのに対し、シンタクラースは船でやってきます。普段はスペインに住んでいるそうで、毎年11月中旬ごろにやってきます。どの港に着くかは毎年変わり、直前になるまで分かりません。2015年はドレンテ州のメッペルという場所にシンタクラースご一行が入港したのですが、市長直々に「わが州への初めての入港にとても感激しています」とコメントを出しました。そして、このシンタクラースのオランダ到着の様子は、テレビ中継もされるというから驚きです。
(C) Naoko Kurata
その後に、アムステルダムなどそれぞれの町にシンタクラースが船で個別に訪れます。運河の沿道では、大勢の人たちがシンタクラースご一行を歓迎するために駆けつけています。シンタクラースを一目見たいと思うのは大人も子どもも変わらないようで、年齢にかかわらずシンタクラースに向かって手を振る様子はなんとも可愛らしいです。
子どもの夢を守るイベント
肝心の子どもたちへのプレゼントは、12月5日の夜に届けられます。そして翌12月6日、シンタクラースはピートたちを連れて、ひっそりと誰にも知られることなくスペインに帰っていくのだとか。
「じゃあ、12月25日のクリスマスは祝わないの?」と思いますよね? そのクリスマス当日は、日本のお正月のように家族で過ごすための日になります。もちろん教会のミサに参加する人も大勢います。サンタクロースがキリスト教の聖人であるのに対し、シンタクラースは宗教色を排した、どんな人でも楽しめる子どものためのイベントなのです。
そして時には、学校にシンタクラースがやってきてプレゼントをくれたりもします。神妙にお話を聞く子どもたちが可愛いですね。子どもたちの夢のために、テレビ中継したり政治家もコメントを出したり、時には学校も協力したり。とっても微笑ましいイベントですね。こういう国で育つ人にとって、子ども時代は楽しい思い出として記憶に残るのではないでしょうか。