異国の旅先を鉄道でじっくり旅するー。
何だか心がワクワクする旅の予感がしますよね。世界にはロシアのシベリア鉄道、アメリカやオーストラリアの大陸横断鉄道などさまざまな路線がありますが、日本人にはもっと身近で安く安全に楽しめる格好のルートが、同じアジアのマレーシアにあります。
(C) Tourism Malaysia
そこで今回は、実際にマレーシア鉄道の旅を体験した筆者が、マレーシア鉄道の魅力を紹介したいと思います。
1:マレー半島縦断の途中にタイ・シンガポールの国境越えもできる
日本人にとって、国境を越える旅には特別な感動や憧れを持つ人も多いのでは? 海に囲まれている島国に住んでいる限り、国境を陸路で越えられる場所は国内にどこにもありません。
しかしマレーシア鉄道は、その気になればシンガポールからマレーシアを経由して、タイへと2つの国境線を陸路で越えられます。しかもその手段は旅情たっぷりの鉄道。
筋金入りの鉄道ファンのみならず、マレー半島の縦断は世界中の旅人たちが愛する人気のルートです。旅を愛する人であれば、一度は足を運びたいですね。
2:寝台列車での長旅も楽しめる
マレーシア鉄道の始まりは1885年。マレー半島中部のタイピンという町で盛んに産出されたスズを近隣の港町まで運ぶために、周辺を植民地支配していたイギリスが13kmの鉄道を引きます。その後、線路は徐々に延伸され、今ではマレーシアの西海岸と東海岸に向かう鉄道網が整備されています。
飛行機のある現代にわざわざ鉄道でその路線を回るとなると、丸1日を移動に費やす場合も。「ちょっと面倒では?」と思う人もきっといるはずですが、見方を変えれば、その長旅を夜行の寝台列車などで“あえて時間をかけて”満喫するといった楽しみ方もあるのです。
3:圏外旅行で心を解放できる
移動中にスマートホンさえ切ってしまえば、何かを催促する電話も、確認を迫る緊急のメールも届きません。ゆっくり考えたいと思っていたデリケートな問題や、人生の迷いなどに答えを出す絶好の機会かも。
読書好きにとっては、大好きな作家の分厚い単行本を一気に読むチャンスでもあります。ドストエフスキーもトーマス・マンも司馬遼太郎もロマン・ロランも読み放題です。もちろん沢木耕太郎の『深夜特急〈2〉マレー半島・シンガポール』も。
何かの作業に疲れたら、車窓に目を向けてみてください。マラッカ海峡に沈む夕日や南国の油ヤシの森を眺めているうちに、何年も抱えてきた心の重荷が、いくぶんか軽くなっているはずですよ。
4:車窓からは南国の景色を楽しめる
マレー半島は赤道近くに位置し、熱帯気候に属します。車窓から見える植生は日本のそれと全く異なっています。窓の外には油ヤシやゴムの木々が続き、草をはむ水牛や水浴びする子どもたちなど・・・。まさに南国ムードたっぷり。
太陽の輝きはどこまでもまぶしくて、木々の緑には生命の勢いが感じられます。日本の電車から見る景色や、極東の荒野を行くシベリア鉄道から楽しむ車窓の風景とも違う、南国の地を抜けるマレーシア鉄道でしか楽しめない見事な絶景が、沿線にどこまでも広がっていますよ。
5:車内でさまざまな人と出会える
マレーシア鉄道の車内ではマレー系の人、インド系の人、中国系の人が座席を分け合うように座っています。まさに多民族国家の縮図。
トイレの待ち時間に、日本に留学経験を持つマレーシア人に知り合ったり、近くの席に座っていた人が偶然にも、サッカーのアジアカップで笛を吹いた有名なレフリーだったり、日本の列車の旅ではちょっと味わえない出会いが待っています。
そうした出会いは、旅行が終わって日本に帰ってもなお残る財産。ずっと大切にしたいですよね。
予算と旅のスケジュールに応じて列車や電車の種類を変えたり、予定にない駅に思い切って飛び降りてみたり、旅の行程を柔軟に決められる自由さも鉄道ならでは。
治安もよく英語も通じて日本から近く物価も安い。海外で鉄道旅行をしてみたいと願う日本人にとっての最有力候補が、マレーシア鉄道です。お気に入りの単行本をトランクに詰めて向かうマレーシア鉄道の旅。探していた何かが、見つかるかもしれませんよ。
今回参加したツアーは、マレーシア観光文化省、マレーシア政府観光局、
マレーシア鉄道観光協会 主催によるプレスツアーになります。
[moonwalk-travel ] [Photos by Masayoshi Sakamoto & shutterstock.com ]
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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