
文学の薫り漂う、京の街。京都出身・在住の作家も多く、この地を舞台にした文学作品は数えきれないほどです。中でもおすすめの現代小説を5つピックアップし、作中に登場するスポットも併せてご紹介します。
『鴨川ホルモー』、万城目学
京都の大学生たちが「ホルモー」に夢中になる青春活劇。ホルモーとは、何とも説明しがたいのですが千年の昔から実行されている競技を意味します。
このホルモーの一環として、主人公たちは吉田神社で裸踊りを行います。裸踊りといっても、歴史ある儀式ですから真剣勝負。師走の深夜、寒さに身を震わせながら男たちが全裸で踊り狂います。
小高い吉田山の上に建つ吉田神社は、山と一体になったような厳かな佇まい。ここでなら奇妙奇天烈な行事が行われても不思議ではない――と思わせる妖しさがあります。
[鴨川ホルモー]
『エンキョリレンアイ』、小手毬るい
いま恋をしている人、特に「エンキョリレンアイ」をしている人なら心揺さぶられるであろう、ストレートな恋愛小説です。言葉の一粒一粒がていねいにつづられ、読み進めるほどに心が澄みわたっていくようです。
主な舞台は東京とニューヨークですが、物語のすべてが始まるのは京都の書店です。具体的な店名は書かれていませんが、「京都駅の裏に立っている、薄墨色のビルディングの六階」といえばアバンティブックセンター京都店しかありません。
牧歌的な雰囲気の漂う書店ですが、ここからロマンチックな恋物語が始まったかと思うと胸がどきどき。京都駅から地下直結の立ち寄りやすいロケーションなので、ここで本書を買い求めて旅のお供にしてはいかがでしょう。
[エンキョリレンアイ]
『宵山万華鏡』、森見登美彦
京都を舞台とすることが多い森見作品。中でも特に京都らしいと筆者が思うのが、この『宵山万華鏡』です。宵山の一夜に起こる不思議な物語をぎゅっと詰めた、楽しい連作短篇集です。
祇園祭の宵山は、山鉾巡業の前夜祭。コンチキチンと響くお囃子に、白々と闇に浮かぶ提灯。普段は無機質な表情の四条烏丸のオフィス街が、幻想的に輝く時です。
本書を読んでから宵山に出かけると、お祭をより楽しむことができるでしょう。人ごみの中をちょこまかと駆ける、赤い浴衣の女の子が見えるかもしれません。
[宵山万華鏡]

『異邦人(いりびと)』、原田マハ
アートを軸に物語を展開するのが得意な著者。本作は、京都の美術界を舞台にした長編小説です。どんなに美しい芸術作品も、人の子が作ったもの。裏では人々の思惑やお金が動きます。美術品がどのように誕生し、展示され、鑑賞されるか。その裏側を覗けるような面白みがあります。
京都市内は味わいあるギャラリー・画廊が充実しており、中でも寺町通り沿いは見どころの多いエリアです。本作を読みながら寺町通りをぶらつくと、物語と現実の狭間がとろけて見えなくなってしまうことでしょう。
[異邦人(いりびと)]

『砂漠の青がとける夜』、中村理聖
最後は、気鋭の新人小説家による爽やかな長編小説です。東京での仕事を辞めて京都に移り住んできた女性、美月が主人公。外の世界からやってきた美月の視点を通し、俯瞰的に京都の美しさが描かれます。
時間のゆるやかな流れ、住民の優しいぬくもり――「旅先」として描かれることが多い京都が、「住み処」として表わされています。京都に生まれ育った人は街の魅力を再発見し、それ以外の人は京都に住みたくなることでしょう。
物語は、京都のカフェを舞台に展開します。どんなお店なんだろうと思いを巡らせながら、お気に入りのカフェで本書のページをめくりましょう。
[砂漠の青がとける夜]
旅プランの参考にするもよし、読んで京都の思い出に浸るもよし。また、行かずに京都気分に浸るもよし。京都を素晴らしく描いた5つの現代小説、ぜひ読まれてみてください。
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Misako Treutel ライター/翻訳業
1986年生まれ。大学では英米文学・英語学を専攻していたが、授業そっちのけで留学、国際インターンシップ、旅に明け暮れる。大学卒業後は出版社に入社し、約80点書籍を制作。2015年に退社し、現在は米国シアトル在住。
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