夏休みの自由研究のように、心惹かれることについて、じっくり調べてみる。考えて、試行錯誤し、また考えて、まとめて、発表する。TABIZINEにもそんな場がほしいと思い【TABIZINE自由研究部】を発足しました。部員ライターそれぞれが興味あるテーマについて自由に不定期連載します。
今回は、オランダ在住TABIZINEライター、倉田直子の自由研究「ドライトマト出汁deだいたい(大体・代替)和食」をお届けいたします。
それでも食べたい「日本の家庭料理」
海外在住歴が8年を超えた筆者ですが、海外育ちの子供のためにも、週の半分は日本の家庭料理を作ることを心がけています。けれど、そこに立ちふさがるのが食材の壁。以前、【TABIZINE自由研究部】自然の葉っぱで納豆は作れる?でもお伝えしましたが、海外在住者にとって日本食材を入手することは日本ほど簡単にはいきません。
和食の基本である出汁(だし)を取るにしても、昆布や鰹節、干ししいたけや小魚などは貴重なので毎日使うのを躊躇してしまいます。
そんな貧乏性の筆者は、ある日偶然、素晴らしい食材に巡り合いました。その食材との出合いは、和食のみならず、洋食も含む我が家の食卓に革命をもたらしたと言っても過言ではありません。
その食材とは実は・・・!
どうやって使うの?ドライトマト
それは、ドライトマトです。イタリア料理で多用されるこの食材、実は和食にも合う美味しい出汁を生み出す素晴らしい存在なんです。
ある日、何気なくネットサーフィンしていたところ、ドライトマトを扱う日本のネットショップを見つけました。そのサイトに「出汁は、お吸い物にもおススメ」というようなことが書かれていたのです。それを見て、文字通り筆者は雷に打たれたような衝撃を受けました。出汁が命のお吸い物を、ドライトマトで作れるですって!?
当時はイギリスに住んでいましたが、慌てて近所のスーパーでドライトマトを購入し、そこから筆者の試行錯誤の日々が始まりました。そして約3年が経過し、だいぶドライトマト出汁を使いこなせてきている自信がついたので、その魅力の一端をご紹介したいと思います。
(c)Naoko Kurata
これはオランダで愛用している商品ですが、ヨーロッパ各地で購入できるイタリア産のドライトマトです。ちなみに1パック100gで(筆者行きつけのスーパーでは)2ユーロ(2016年11月現在約235円)。数えてみたら、この時は1袋に22個入っていました。1個10円強くらいですね。オリーブオイル漬けの商品もありますが、和食の出汁を取るには、乾燥しているタイプのほうがおススメです。
(c)Naoko Kurata
実際の出汁を取るには、ドライトマトを熱湯に浸すだけ。煮出さなくても大丈夫なんです。筆者はよく、朝のうちにアツアツの熱湯に浸して夕方まで寝かせておきます。
(c)Naoko Kurata
これは300ミリリットルの熱湯に浸したまま放置し、夕方まで8時間置いた状態です。ブランデーのような琥珀色は、自然にドライトマトから出てきた色です。
(c)Naoko Kurata
8時間も待てないときには、時短テクとしてキッチンばさみでドライトマトを切り刻んでから熱湯に入れます。上の画像は、約600ミリリットルのお湯に入れてから3時間経った状態です。先ほどよりも色が薄いですが、これでも十分良い出汁になっています。
更にもっと時間が無い時は、ドライトマトを鍋に入れて、一緒に調理してしまうこともあります。そのまま一緒に食べてもいいし、後から取り出しても大丈夫です(種などが鍋に落ちているかもしれませんが)。
では具体的に、ドライトマト出汁の何がそんなに魅力的なのでしょうか。
ドライトマト出汁の5つの魅力
ドライトマト出汁の魅力その1:出汁を取るのが簡単
先ほどもご説明しましたが、ドライトマト出汁は熱湯に浸しておくだけで出来るんです。鍋での過熱は必要ではないので、非常に取り扱いがラクチンです。
ドライトマト出汁の魅力その2:和食にも洋食にも使える
元々はイタリアン食材なので洋食に合うのは想像できると思いますが、「甘い鰹だし」のような風味でクセがなく、筆者の感覚では殆どの和食に合うと思っています。(後ほど、どのような和食にチャレンジしたか、ご紹介します)
ドライトマト出汁の魅力その3:使う調味料がシンプルになる
前述のようにドライトマト出汁は、それそのものが非常に甘いです。そのため、砂糖やみりんを使わなくてもよくなるのです。ドライトマト出汁を使うようになってからの筆者は、和食でも主には「ドライトマト出汁、醤油、酒(主に白ワインで代用)」くらいしか使わなくなってしまいました。後は、時々塩を追加するくらいです。
ドライトマト出汁の魅力その4:必要以上に子供に化学物質を与えないで済む
化学調味料(うま味調味料)の使用頻度も減りました。大人はともかく、成長期の子供に必要以上に化学的なものを食べさせないで済むので、心理的な負担も軽くなっています。
ドライトマト出汁の魅力その5:「トマトが赤くなると医者が青くなる」
アメリカには「トマトが赤くなると医者の顔色が青くなる」(Tomato red, the doctor’s face green.)という諺があるそうです。昔の人はそれくらい、トマトの健康パワーを信頼していたのですね。トマトにはリコピンという抗酸化物質が豊富に含まれているので、病気への抵抗力が高まるのです。アメリカのがん研究所(AICR)もトマトを「がんと闘う食品」(FOODS THAT FIGHT CANCER)のひとつとして挙げています。
お次は、筆者がドライトマト出汁を使ってどのような「和食」に挑戦したのかが紹介したいと思います。
ドライトマト出汁で作った料理たち
椀物
(画像はイメージです)
お味噌汁などの椀物も美味しく食べられます。お吸い物やお雑煮は、ドライトマト出汁に醤油、お酒少々をお好みの分量でどうぞ。
うどん
(画像はイメージです)
うどんのつゆだって、ドライトマト出汁で大丈夫! 我が家は、時間をかけて浸したドライトマト出汁1リットルに醤油大匙1杯が基本の配合ですが、お好みでどうぞ。温めるときに薬味の長ネギを少々加えると、より一層風味が増します。筆者の家族(日本人)も、「美味しいね」と食べてくれています。
(c)Naoko Kurata
夏には、濃い目の分量で「冷やしうどん」も美味しいですよ!
煮物
(c)Naoko Kurata
肉じゃがなどの煮物にもぴったりです。基本の「出汁、醤油、酒」をお好みの配合でどうぞ。出汁そのものが甘いので、砂糖やみりんが無くても十分甘くてまろやかな仕上がりになります。どうしても不安で砂糖やみりんを入れる場合は、通常よりも控えめにしてください。
どんぶり物
(画像はイメージです)
親子丼やかき揚げ丼に挑戦しましたが、どれも素晴らしい味わいでした。同じく基本の「出汁、醤油、酒」をお好みの配合で。
鍋物
(画像はイメージです)
寒い冬には欠かせない鍋も、ドライトマト出汁で作れてしまいます。和風の鍋なら「出汁、醤油、酒」で十分ですが、ゴマ油やオイスターソースなどを加えて中華風にもアレンジできました。
茶碗蒸し
(画像はイメージです)
個人的に最近ヒットだったのが、ドライトマト出汁で作った茶碗蒸し。材料は、ドライトマト出汁400ミリリットルに醤油小さじ1杯、塩ひとつまみ、溶きたまご2個。三つ葉の代わりに使ったセロリの葉も、とても相性が良かったです。
まとめ:ドライトマト出汁は、大体(だいたい)和食になる代替(だいたい)出汁
ここまで熱くドライトマト出汁への愛を語ってしまいましたが、もちろんこれは正統派和食ではないということは重々承知しています。それでも、醤油さえあれば海外在住者にも「だいたい和食」の味わいを楽しませてくれる非常にありがたい存在なのです。
そして実は洋食やカレーにもドライトマト出汁を使いこなす筆者ですが、まだ中華料理での活用は研究不足で二の足を踏んでいるところです。今後は、そちらのほうの実験もいろいろ重ねていきたいと思います。
[AICR’S FOODS THAT FIGHT CANCER]
[Photos by shutterstock.com]