外国人に大人気の京都ですが、もちろん日本人にとっても京都は特別な旅先です。毎年一度は訪れる、という人もいるでしょう。いつも心の中でまた行きたいと思っている、という人もいるでしょう。
今回は、京都好きな人が京都通になるための京都本、またもや京都に行きたくなってしまう5冊をご紹介します。
京都本其の一「京都手帖2017」
今年で11年目を迎えるという、京都の観光情報がぎゅっと盛り込まれたスケジュール帳。週間カレンダーにはお祭りなどの京都の行事やおすすめグルメの紹介が、月間カレンダーには暦や月の満ち欠けが掲載されています。地図や路線図、名所300軒以上の連絡先も。眺めていると、「次はいつ京都に行こうかな」と自然に旅の計画を立ててしまう手帖です。離れていても、心は京都とともにある、そんな感じでしょうか。
京都に想いを馳せ、リサーチした京都情報を自ら書き込み、京都を旅し、旅の感想をつづり、また次の京都旅行の計画を立てる。まさにPLAN・DO・SEEな手帖になりそうな一冊なのです。京都案内の英文が載っているのも現地で役立ちそう。カバーはリバーシブルで裏はシックな黒です。
[「京都手帖2017」光村推古書院編集部/光村推古書院]
京都本其の二「京都はお茶でできている」
濃茶をビールで点てる、お茶道具の収納にマダガスカルのドラム缶やトルコのアイスクリームカップを利用する・・・知りたいけれど敷居の高いお茶の世界が、こんなにも自由に楽しんでいいものだったのかと驚く一冊です。見ているだけでため息が出そうな和菓子や、とっておきの抹茶スイーツ情報なども。
それにしても、お茶はどこまでも感性とセンスの世界なのだなあとしみじみ思いました。型や作法は美しくてもいざ学ぶとなると腰が引けます。しかしお茶の本当の心は、相手と過ごす時間や空間を研ぎ澄まし、愉しむことにあると、この本は教えてくれます。きっとお茶は本来、人とともにあるための感性やセンスを磨くための場だったんでしょうね。
[「京都はお茶でできている」暮らす旅舎/青幻舎]
京都本其の三「京都ぎらい」
京都本の紹介で「京都ぎらい」とは・・・とお思いでしょうか。しかし、いかなるときも、清濁併せ持つことで物事は深まります。きれいな部分だけ見ていても、本質はわかりません。この本には、京都のいやらしい部分がユーモアを加えながらいろいろと書かれています。
その筆頭が、洛中洛外問題。山手線の内か外か問題よりもずっと根深いものがそこにはあるようです。京都(洛外)にも、大阪にも、東京にも住んだことがある筆者自身も「たしかに」と思わざるをえない、京都・大阪・東京それぞれの思惑。他にも、京都の寺院の敷地が昔はもっとずっと広かった話、武将らのホテル的な一面をになっていた話、拝観料の不思議など、知られざる京都の裏話が満載です。
[「京都ぎらい」井上章一/朝日新聞出版]
京都本其の四「百々世草」
幕末期の京都に生まれた日本画家・図案家である神坂雪佳の木版画集。日本人として初めてエルメスの雑誌の表紙を飾ったことでも有名です。神坂雪佳の描く風景を眺めると、日本の美しさを再発見します。日本の四季を彩る美しさ、その美しさを切り取る視点、構図の斬新さ。実際、春の田んぼや吉野の桜の美しさを感じる心は、神坂雪佳の作品によって筆者は知りました。
そして、この本を京都本として紹介する所以は、京都を旅するとき何より大切なのが、この神坂雪佳的視点だと思うからです。京都をもっと楽しめる心を作る教科書として、手元に置いておきたい一冊。
[「百々世草」神坂雪佳/芸艸堂]
京都本其の五「すっぴん芸妓」
京都、祇園芸妓・小喜美の天真爛漫なエッセイ。すでに絶版となっていますが、中古を取り寄せてでも読む価値のある一冊です。祇園芸妓のありのままの生活が、ときに情緒あふれる四季とともに、ときに笑いを交えながら赤裸々に語られます。そこには、知られざる祇園の真実がいろいろ。
芸妓はいわば生涯学生で、一年に一度の始業式で成績(売上順位)発表がある話、「お化け」と呼ばれる節分の行事では、数人ずつ組んで学園祭さながらの出し物をする話(着物でヒップホップ!の年も)、舞妓から芸妓になる約1か月間しか舞えない「黒髪」という舞の話、舞妓芸妓たちが毎年お揃いでしつらえる白地に紺の粋な浴衣の話などなど。そしてそんな独特の世界を生きながらも、小喜美はどこまでも普通の一人の女子なのです。等間隔で並ぶ鴨川のカップルに憧れたり、お座敷が遅くなり明け方帰宅するとつい通販番組で衝動買いしてしまうというキュートな一面に、ほっこりしてしまいます。
[「すっぴん芸妓」山口公女/ローカス]
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