近年旅行先として人気上昇中の中央アジアの国、ウズベキスタン。乾燥した大地に、鮮やかなブルーのモスク・・・そこには、日本人がイメージする「アジア」とはまったく異なる世界が広がっています。
なかでも、歴史的な街並みが世界遺産に登録されている3都市は必見。エキゾチックな風景に魅了される、ウズベキスタンの3つの街を訪ねてみましょう。
青の都、サマルカンド
「ウズベキスタン」と聞けば、真っ先にサマルカンドを思い浮かべる人も多いことでしょう。美しいブルーの建築物の数々から、「青の都」の異名をもつサマルカンドは、古来よりシルクロードの要衝として栄えた古都。
ところが、13世紀のモンゴル軍の侵攻により廃墟と化してしまいます。そんなサマルカンドの街をよみがえらせたのが、一代で帝国を築き上げた英雄・ティムールでした。世界のどこにもない美しい都を造ろうと考えたティムールは、遠征先から東西の優秀な技術者や職人を連れて来ます。
こうして生まれたのが、中国の陶磁器とペルシアの顔料が融合した「サマルカンド・ブルー」と呼ばれるタイル。今も残るサマルカンド・ブルーの壮麗な建造物群が、かつての栄華を物語っています。
レギスタン広場
サマルカンドの代名詞ともいえるのが、レギスタン広場。「砂の場所」の意味をもつこの広場は、ティムール朝のもとで政治、経済、文化の中心地として大いに繁栄しました。
15世紀から17世紀にかけて建てられた、3つのマドラサ(神学校)が見せる均整の美は、はっとするほどに見事。
精緻な装飾で彩られたブルーのタイルを眺めていると、そのあまりの美しさに吸い込まれてしまいそうです。
朝、昼、夜と、時間帯に応じてその表情を変えるレギスタン広場は、何度でも会いに行きたくなる魔力をもっています。
シャーヒ・ズィンダ廟群
サマルカンドにおいて、レギスタン広場と並ぶ必見スポットが、シャーヒ・ズィンダ廟群。「シャーヒ・ズィンダ」とは「生ける王」の意味で、ティムールの妻や部下、親族などを祀る霊廟が並んでいます。
サマルカンドきってのパワースポットで、シャーヒ・ズィンダ廟群に2回お参りすると、メッカに行ったのと同じとみなされるほどなのだとか。
鮮やかなブルーの霊廟が建ち並ぶ光景を見ていると、現実から切り離された別世界にいるような気さえしてきます。精緻な文様や彫刻は、まさにイスラム美術の神髄。
グリ・アミール廟
ティムール朝を興したティムールと、その息子や孫が祀られているのが、グリ・アミール廟。もともとは孫を葬るためにティムールが1404年に建設した霊廟ですが、ティムール自身も翌年にこの世を去り、ここに祀られることとなりました。
誰もが圧倒されるのが、金の装飾で埋め尽くされた廟内。1996年の修復時には、当時の模様を再現するために3キロもの金が使われたといいます。
タイルに貴石をはめ込んだ象嵌細工、植物やアラビア文字をモチーフにした彫刻の数々は圧巻。ため息なしには見られない芸術空間です。
次は聖なる古都、ブハラへ。
聖なる古都、ブハラ
古くから隊商都市として栄えたブハラは、中央アジアで最も古い街のひとつ。各地から有能な宗教家や科学者が集まり、一大文化都市を形成していました。ところが、13世紀のモンゴル軍の来襲により、街は壊滅状態に。
16世紀のシャイバニ朝の時代になって、再び多くのモスクやマドラサが建設され、街は復興を遂げます。20世紀の初頭までブハラ・ハン国の都が置かれ、イスラム世界の文化的中心地としてその名をとどろかせていました。
ブハラの街をを歩けば、いたるところで他では見られない貴重な建造物や、珍しい建築物に出会えます。
カラーン・モスク
ブハラを代表する観光スポットが、カラーンモスクとカラーンミナレット。「カラーン」とは、「大きい」「偉大な」といった意味で、その名の通り、最大で1万人もの信者を収容できるという大規模なモスクです。現在残っているのは16世紀のシャイバニ朝の時代に建てられたもの。
広い中庭に入ると、玉ねぎ型の青いドームと、アーチが連なる回廊が神秘的な風景を描き出しています。ドームがオレンジの光で輝く、夕暮れ時もムード満点。
ブハラの風景のなかでも特に印象に残るのが、たこ焼き器をひっくり返したかのような不思議な形の建物。これは「タキ」と呼ばれる交差点バザールで、かつてはラクダの背に載って東西から運ばれてきた品物がここで売り買いされていました。
現在では、ブハラらしい品物が手に入る土産物店が並んでいて、職人の技が光る手作りの製品は見ているだけで旅情が盛り上がります。
イスマイル・サーマーニー廟
現存する中央アジア最古のイスラム建築として知られているのが、イスマイル・サーマーニー廟。9世紀にブハラを都としたサーマーン朝を開いたイスマイル・サーマーニーの霊廟で、892年から943年にかけて建てられました。
ほぼ正方形のシンプルな外観ですが、レンガの組み方によって何通りにも表現された壁面の装飾が印象的です。
次は中央アジアの真珠、ヒヴァへ。
中央アジアの真珠、ヒヴァ
「中央アジアの真珠」とも称される美しい街並みを誇るヒヴァは、古代ペルシャ時代からカラクム砂漠への出入口として栄えた街。1592年にホラズム王国の都が置かれ、1920年までヒヴァ・ハーン国の王都として繁栄しました。
外敵の侵入を防ぐために二重の城壁で守られていて、「イチャン・カラ」と呼ばれる内城は全域が世界遺産に登録されています。
タシケントからはるか西へ750キロ。ようやくヒヴァにたどり着くと、中世イスラム都市の面影を色濃く残す街並みに感激。「ずいぶん遠くまで来たんだなぁ」と実感することでしょう。
内城には、宮殿やモスク、マドラサといったイスラム建築がぎっしり詰まっています。
カリタ・ミナル
イチャン・カラの西門をくぐると最初に目に入ってくるのが、短くて太い、不思議な形をしたミナレット。当初、中央アジア最高となる109メートルのミナレットとして着工されましたが、26メートルの時点で未完のまま終わってしまったのです。
完成した姿が見られないのはちょっと残念ですが、ぼってりとした形には、細長いミナレットにはない愛嬌がありますね。
イスラム・ホジャ・ミナレット
ヒヴァで最も高いミナレットが、このイスラム・ホジャ・ミナレット。1910年に建てられた、イスラム・ホジャ・マドラサ併設のミナレットで、その高さは45メートル。黄土色のレンガをベースに、青や白などのタイルで帯状に模様が付けられた個性的なデザインは、遠くからでも目を引きます。
ミナレットの上からは、世界遺産のヒヴァの街並みが一望できます。夕陽の名所としても知られるヒヴァ。ここから、ホレズムの大地に沈む夕陽を眺めてみてはいかがでしょうか。
キョフナ・アルク
17世紀に建てられた王の居城。かつてここには王の公邸から、モスク、ハーレム、兵器庫、造幣所にいたるまで、さまざまな施設が揃っていました。
ここで見逃してはならないのが、アクシェイク・ババの見張り台からの眺め。イスラム・ホジャ・ミナレットからは街全体が見渡せますが、ここからはカリタ・ミナルをはじめとする、近くの建造物が間近に眺められます。
砂漠色の街並みに、ところどころ顔を出すブルーやグリーンの建物が映える、ヒヴァならではの風景です。
それぞれに個性が光る、ウズベキスタンの3つの世界遺産の街。いままで知らなかったアジアの魅惑の風景に、心を奪われることでしょう。
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