パソコンとインターネット環境さえあれば、どこでも仕事ができることから関心が高まっているトラベルライター(旅行ライター)。ところが一口に「トラベルライター」といっても、その働き方はさまざまです。
現役トラベルライターの筆者が、おもなトラベルライターの種類と、それによってライフスタイルや待遇がどう変わるのかをご紹介しましょう。
旅行メディアへの寄稿中心のフリーランサー
「トラベルライター(旅行ライター)」と呼ばれる人のなかでも、特に多いのが旅行関連メディアに寄稿するフリーランサーです。この場合、トラベルライターはそのメディアを運営する会社に雇われるわけではなく、記事の執筆を受託し、成果物に対する報酬を受け取ります。
旅行メディアに寄稿するフリーランサーとして活動するメリットは、比較的誰でも始めやすいこと。自分でメディアを構築する必要はありませんし、書いた記事に対してはほぼ確実に報酬が受け取れます。
また、寄稿するメディアによってはライター経験が求められない場合もあるため、トラベルライターとしてのキャリアの第一歩としてチャレンジしやすいといえるでしょう。
一方で、旅行メディアへの寄稿を中心に活動するデメリットは、収入が低くなりがちだということ。個人差はあるものの、同年代の会社員の年収よりも低いことが多いです。
募集が多いwebメディアを例に挙げると、一般的な旅行サイトの場合、記事1本あたりの報酬は、写真込みで2000~5000円が主流。なかには無報酬あるいは1本500円、1000円といったケースもあり、原稿料だけでは生活できないトラベルライターも少なくないのが現実です。
自分でメディアを運営するフリーランスまたは個人事業主
近年では、自ら旅行ブログなどのメディアを運営し、広告収入等で生計を立てているトラベルライターも増えつつあります。このスタイルのメリットは、すべてを自分の好きなようにデザインできること、そして、メディアの収益はすべて運営者であるライターに還元されるということです。
たとえば、外部の旅行サイトに寄稿する場合、当然のことながら、サイトのデザインはすでに決められていて、ライターの意思で自由に変更できるものではありません。通常、掲載する写真のサイズや文体などにも規定がありますし、寄稿メディアの方針と一致しなければ、書きたい記事のアイデアが却下されることもあります。
しかし、自らメディアを運営する場合は、「大きな写真をたくさん載せたい」といった自分の希望を反映したメディアを自由に構築することができますし、何でも自分の好きなことを書くことができます。
さらに、外部のメディアに寄稿している限りは決まった額の報酬しかもらえませんが、自らメディアを運営していれば、そのメディアが生んだ収益は、すべてライターのものになります。
ところが、ここで問題になってくるのが、果たして収益性の高いメディアを構築できるのかということ。仮に旅行ブログを立ち上げた場合、少なくとも最初の数ヵ月はほとんどお金にならないでしょうし、下手をすれば、何年経ってもお小遣い程度の収入しか得られないという可能性もあります。
限りなく自由なライター活動が可能で、人気メディアに仕立て上げられれば大きなリターンが期待できるものの、成功へのハードルは決して低いとはいえません。
特定の企業に所属する雇われライター
割合として多いとはいえませんが、旅行関連会社や旅行メディアの運営会社など、特定の企業に雇われているトラベルライターも存在します。この場合、トラベルライターといえど会社員なので、給与や社会保障などの待遇面が比較的安定しているのがメリットです。
一方、フリーランスとは異なり、所属企業の方針に沿って働く必要があるため、自分が好きなときに好きなところに旅に出ることが難しいのがデメリットです。当然のことながら、他の多くの会社員同様、職場での人間関係のしがらみ等も生まれやすくなります。
旅をしないトラベルライターもいる!?
ここまで、トラベルライターとしての3つの働き方(肩書)をご紹介しましたが、トラベルライターは人によって、ライフスタイルや旅のスタイルにも大きな違いがあります。
トラベルライターのライフスタイル(旅のスタイル)には、大きく分けて、何年間もずっと旅をしながら執筆を続けるノマド型、特定の住まいを拠点として定期的に旅に出る定住型、また自分自身はあまり旅をせず、調べたことを材料にして記事を書く情報収集型があります。
3つ目の情報収集型は、「旅の経験を記事にする」という狭義のトラベルライターには当てはまりませんが、「旅行に関する記事を書く」という広義のトラベルライターであるといえるでしょう。
旅をしなければ自分で写真を撮ることはできませんが、ストックフォトサイトの写真などを使うことができれば、必ずしも自ら旅をしなくても旅行記事を執筆することは可能なのです。
トラベルライターとしてのあり方は生き方そのもの
現在筆者はドイツに定住しながらヨーロッパを中心に各地を旅行し、TABIZINEを含む複数の旅行サイトに寄稿しているフリーランサーです。おもな旅先がヨーロッパなので、旅をするのは気候のよい5~9月が中心で、その期間は毎月1~3週間の旅に出ている状態。その時期の旅行期間を合計すると2ヵ月半程度になります。
日本に一時帰国するときは、日本国内を旅行したり、日本帰国前にアジアの国に立ち寄って数週間滞在したりもします。
何年も旅をしながら記事を執筆するノマド型になるという選択肢もあり得なくはないのですが、結婚している筆者には長期にわたって一人で旅することは考えられませんし、そもそも何年も旅を続けることが自分に向いているとも思えないために、現在のスタイルをとっています。
ノマドのように何年も旅をしながら記事を書くなんて、旅好きなら一度は憧れるライフスタイルかもしれませんが、実際のところは相当な体力と気力、好奇心が必要で、万人に向いているとはいえません。トラベルライターになるにあたっては、どんなライフスタイルが自分に合っているのかを見極めることが大切です。
実際にトラベルライターになってみて実感しているのが、トラベルライターとしてのあり方は、生き方と直結しているということ。
どのような形でトラベルライターとして活動するのかを決めることは、自分の生き方を選ぶことそのものであるといえるでしょう。
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