現在ドイツを拠点に、フリーランスのトラベルライターとして活動している筆者。そのライフスタイルは、日本で会社員として働いていたころとはあまりにも大きく変わりました。
フリーランスのトラベルライターになってみて感じる、メリットとデメリットを包み隠さずお伝えします。
好きなことが仕事になる
トラベルライターをしている人、あるいはトラベルライターになりたいと思っている人は、例外なく旅することが好きなはず。フリーランスのトラベルライターとして働く最大のメリットは、やはり大好きな旅自体が仕事になるということです。
大多数の人にとって、旅行は限られた休暇を利用して楽しむもの。しかも、旅行をすればするほどお金は出ていきます。しかし、フリーランスのトラベルライターになれば、いつでも好きなだけ旅をすることができるうえ、旅をすれば記事を書くためのネタが集まるので、旅行が「出費」というよりも「投資」になるのです。
タダで旅行できるチャンスがある
一般にはあまり知られていませんが、トラベルライターになると無料で旅行ができるチャンスがあります。というのも、各国の観光局やホテル、旅行関連会社などが主催するプレスツアーに招待されたり、クライアントが取材経費として旅行費用を負担してくれたりすることがあるからです。
すべてのトラベルライターがこうした恩恵にあずかれるわけではなく、タダで旅行するためにはある程度の実績や実力、あるいは運が必要になることが多いですが、無料で旅行ができるなんて旅好きにとってはまさに夢のような話でしょう。筆者自身は、ヨーロッパ10か国以上を無料で旅する機会に恵まれ、とても幸運だと感じています。
旅の空き時間が有効に使える
旅行をしていると、朝や夜にたいてい空き時間ができるものです。筆者が会社員だったころは、旅行中の空き時間はなんとなくダラダラと過ごしていたと記憶していますが、フリーのトラベルライターになった現在は、空いた時間に仕事をしています。
旅行中であっても、時間が許せば仕事をしてお金を稼ぐことができるのは、旅好きにとってたまらないメリットです。
興味や知識の幅が広がる
トラベルライターとして旅をすると、個人の趣味としての旅行だったら行かなかっただろうと思う場所に行くことがあります。そして、時にそんな場所が思いがけず興味深く「来てよかった」と思うことがあるのです。
たとえば、ポーランドのクラクフにある「シンドラーの工場」。「シンドラーのリスト」で有名なオスカー・シンドラーの工場跡を利用した博物館です。クラクフ中心部からやや遠いうえ、入場できる人数が限られているという情報があったため、趣味の旅行ならおそらく行くことはなかったと思いますが、「記事のネタになる」との一心から訪れました。
結果的に、当時のクラクフやユダヤ人の状況が肌で感じられる展示が素晴らしく、ライター魂が功を奏した経験となりました。
また、趣味として観光旅行をしていたころよりも、訪れる場所について深く知ろうとするようになったことで、さまざまな国や都市の歴史や文化に対する興味や知識が広がったと感じています。
写真を撮るのが上手くなる
フリーランスのトラベルライターとして活動していると、文章だけでなく写真も含めてひとつの記事として納品することが多いので、必然的に写真を撮る機会が増えます。
自分の撮った写真が旅行サイトにそのまま掲載されるわけですから、できるだけ魅力的な写真にしたいと思うのが当たり前。以前は、スマホやコンパクトデジカメで写真を撮っていた筆者ですが、トラベルライターになってからは、ミラーレス一眼を購入しました。
いい道具をもつ効果は絶大なもので、今では写真を撮ること自体がすっかり趣味になりました。もちろん、写真の質もコンパクトデジカメで撮っていた頃とは比べ物になりません。個人差はありますが、フリーランスのトラベルライターになると、多かれ少なかれ写真技術は向上するはずです。
収入が安定しない
当然のことながら、フリーランスのトラベルライターは、会社員のように決まった月給やボーナスがないので、収入が不安定になりがちです。
筆者の場合、月に3週間以上旅していることもあり、旅行中は執筆に割ける時間が減るのでそのぶん収入が少なくなるのも頭の痛いところです。旅好きであり、トラベルライターである以上、旅することはやめられませんが・・・。
加えて、旅行サイトに寄稿する場合、旅行サイトによっては入稿(納品)日ではなく、サイト上で記事が公開された日を報酬発生の基準日としているところがあります。入稿日から記事の公開日まで時間がかかれば、報酬が支払われるのが記事の執筆から数か月後ということもあるので、貯金の少ない人はハラハラすることもあるかもしれません。
つい「ネタになるか」を考えてしまう
トラベルライターとして旅するようになってから、ついつい「記事のネタになるか」を考えてしまうようになりました。もちろん、ネタのために行った場所を思いがけず気に入ったり、ネタになりそうな場所を探した結果、素敵なレストランやカフェを見つけたりといった、「ネタになるか」を意識することがポジティブに働くこともあります。
一方、純粋な趣味として旅行を楽しんでいたころに比べると、「ここは写真撮影が禁止されているから記事にはならないな」といった、打算的な感覚が生まれてしまったことも否定できません。トラベルライターといえど、まったく仕事を意識せずに純粋な休暇旅行をしたいと思うことがたまにあります。
旅が忙しくなりがち
会社員時代に旅行を楽しんでいたころは、旅全体が休暇でした。しかし、トラベルライターとなった現在は、旅行は趣味であり、仕事でもあります。
旅を記事というアウトプットにつなげる必要があるため、訪れる場所について深く知る必要がありますし、記事として成立させるために十分な量と質の写真を撮影する必要もあります。
さらに、旅行中の空き時間は仕事をしているために、旅行中は完全な自由時間が極端に少ないという事態に陥りがちです。筆者は2週間を超える旅をすることも珍しくないので、時折ぐったりしてしまうことも。トラベルライターは思いのほか体力勝負だと実感しています。
「旅しながら働く」と聞けば、気楽なゆるりとしたイメージがあるかもしれませんが、案外そうでもないのが現実です。それでも、大好きな旅を仕事にできているのが幸せなことに変わりはありません。
[All Photos by shutterstock.com]