群馬県館林市の市庁舎でトイレのピクトグラムが生まれた?

(※画像はイメージです)
ただ、1964年に東京オリンピックのピクトグラム制作でデザインチームのリーダーを果たした故・田中一光氏は、1963年の段階で既に、男女のマークをもってトイレを意味するサインを、群馬県館林市の旧本庁舎(現・市民センター)に制作していたという事実も発見されています。
東京オリンピックの前年、1963年に完成した地下1階・地上5階の館林市旧本庁舎は、故・菊竹清訓氏が設計し、細部のデザインを故・田中一光氏が務めています。
この旧庁舎のトイレに実は、翌年の東京五輪で採用されるトイレのマークの原型が、田中一光氏の手によって制作され、採用されているのですね。
当時の情報に詳しい、同市出身のデザイナー・田中茂雄氏(館林市の市民センターの保存プロジェクト、館林城の再建をめざす会の代表)に聞くと、1963年にトイレのピクトグラムが制作されていたという事実が、1963年9月号『建築』(青銅社)で明らかにされていると言います。
下に掲載した画像は、故・田中一光氏が館林庁舎に制作したピクトグラムを、田中茂雄氏がトレースしたイメージになります。間違いなく男女のマークを用いて、トイレのサインを制作していますよね。
後の1964年に採用されるサインの原案は、庁舎竣工の1963年の段階で既に存在していたと分かります。しかも着工は1962年7月ですから、1962年の段階でアイデアができていた可能性もあるはず。

(※田中茂雄氏による、故・田中一光氏のピクトグラムのトレース画像 館林城の再建をめざす会ホームページより)
こうなると、いよいよトイレのサインの考案者について、UIC、IATAの回答がない現状ではなんとも言えなくなってしまいますが、いずれにせよ1960年代の初めごろに考案されたトイレのマークは、故・田中一光氏をはじめとするデザインチームの総意として、1964年の東京オリンピックで全面的に施設に採用され、世界的に広まる大きなきっかけとなったという点は、間違いがありません。
※2017年12月1日 筆者追記
UIC(国際鉄道連合)からの連絡により、少なくとも故・田中一光氏の方が、男女のピクトグラムを使ったトイレのサインをUICよりも先に発表していると判明しました。引き続き米国の国際航空運送協会(IATA)によって1962年に発行された『空港設備設計に関する手引書』の初版について、調査を進めています。
2020年の東京オリンピックの時期を迎えたら、用を足すついでに会場のトイレのマークをチェックしてみてください。何でもないトイレのマーク1つをとっても、前の東京オリンピックを契機に世界に広まり、また東京に戻ってきたというユニークな歴史があるのですね。
仮に競技観戦用のチケットを手に入れられなかったとすれば、トイレのマークだけでも五輪会場に眺めに行ってみては?

(※画像はイメージです)
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Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
1979年東京生まれ、埼玉育ち、富山県在住。成城大学文芸学部芸術学科卒。国内外の媒体に日本語と英語で執筆を行う。北陸3県を舞台にしたウェブメディア『HOKUROKU』の創刊編集長も務める。
https://hokuroku.media/
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