国全体が冬の魔法にかかるクリスマスマーケットの本場、ドイツ。アドベント(待降節:クリスマス前の約4週間)の時期には、各地で2500以上のクリスマスマーケットが開催されるとあって、日本で有名なもの以外にも、こっそりと教えたくなるような美しいクリスマスマーケットが多数存在します。
そのひとつが東ドイツの学芸都市、ライプツィヒのクリスマスマーケット。ノスタルジックであたたかな空気に心癒される、ライプツィヒのクリスマスの魅力を現地からお届けします。
町全体がクリスマスムードに染まるライプツィヒ
東ドイツの学芸都市、ライプツィヒは中世の時代から商業や金融で発展してきた町。ゲーテゆかりの地を結ぶゲーテ街道沿いの町として知られているだけでなく、バッハやシューマン、ワーグナーといったそうそうたる音楽家が活躍した音楽の都でもあります。
そんな文化の薫り高い町も、アドベントの時期にはロマンティックなクリスマスムードに染まります。マルクト、ナッシュマルクト、アウグストゥス広場、ニコライ教会前をはじめ、市内6つの広場でクリスマスマーケットが開催され、広場と広場を結ぶ通りにも美しく飾られた屋台の数々が。
キャンドル、ガラス製品、クリスマスオーナメント、石鹸、ランプといった雑貨の屋台、東ドイツらしいバウムクーヘンの屋台など、色とりどりのお店を見ているだけでワクワクします。
華やかなメイン会場
ライプツィヒのクリスマスマーケットの魅力は、会場によって異なる趣向を凝らしたマーケットが楽しめること。なかでも、最もにぎやかな雰囲気に包まれるのが、メイン会場であるマルクトです。
両側にクリスマス飾りや手袋、クリスマス菓子、ソーセージなどを売る屋台が並ぶ通路は、まさに色と光の道。
会場の中心には、毎年個人が所有する木のなかから選ばれるというきらびやかなクリスマスツリーがお目見えします。2~3日かけて手作業で飾りつけが行われるというクリスマスツリーは、うっとりしてしまうほどの美しさ。
中世風のクリスマスマーケット
道路を挟んでマルクトと向かい合うナッシュマルクトでは、中世風のクリスマスマーケットが開催されています。マルクトと目と鼻の先でありながら、屋台も売り手の衣装もすべてが中世風で、タイムスリップしたかのような雰囲気。
ドイツのクリスマスマーケット定番のグリューワイン(ホットワイン)も、ここでは素朴な素焼きのカップでいただきます。
グリルしたソーセージや「Handbrot」と呼ばれる窯焼きパンなど、シンプルなおいしさが光るグルメも充実。あちこちから漂ってくる香ばしい匂いに食欲をそそられること間違いなしです。
グリム童話の世界を再現
大きな観覧車が登場するアウグストゥス広場では、「メルヘンランド」と銘打ってグリム童話の世界を人形で再現したコーナーを展開中。
喋る樫の木があったり、「オオカミと7匹の子ヤギ」のオオカミのお腹が動いていたりとなかなか凝っているのですが、この人形たち、「日本人が作ったらこうはならないだろうな」と思わせるシュールさがあるのです。こんなところで日本とドイツの文化の違いを感じるのも面白いものです。
幻想的な平和の泉
ライプツィヒのニコライ教会は、旧東ドイツ時代にベルリンの壁崩壊のきっかけとなったデモが行われた場所。向かいの広場には、その出来事を記念して造られた「平和の泉」と呼ばれる噴水と、ニコライ教会内部の柱をかたどったニコライ記念柱があります。
平和の泉はキャンドルのイルミネーションで彩られ、闇夜に浮かび上がるニコライ記念柱のそばには、小さいながらもあたたかな雰囲気のクリスマスピラミッドが。
ここには、ライプツィヒのクリスマスマーケットのなかでもひときわしっとりとした幻想的な風景が広がっています。
「昭和」を思わせるノスタルジックなムード
ライプツィヒのクリスマスマーケットを歩いていると気づくのが、どこか懐かしいノスタルジックなムードが流れていること。華やかでありながら「洗練されている」というのとは少し違う、いわば「昭和」のような古き良き雰囲気があるのです。
それがクラシカルなたたずまいを残しているライプツィヒの美しい町並みと調和して、見る者の心の琴線に触れます。
世界的に有名なクリスマスマーケットとは違って、地元客が中心の穏やかであたたかい空気も魅力。クリスマスマーケットで話題になることの少ないライプツィヒですが、実際に出かけてみたら、思いがけない素晴らしさにすっかり魅了されてしまうことでしょう。
[All Photos by Haruna Akamatsu]