ダージリンという言葉を聞いて、何を思い浮かべますか? 恐らくほとんどの人が「紅茶」を連想するはずですが、ダージリンとはインドの町の地名になります。ダージリンで栽培されている紅茶が「ダージリンティー」として世界的に知られているのですね。
ダージリンはインド北東部の山岳地帯にあり、そのダージリンに向けて全長88.48kmの山岳鉄道が敷設されていて、世界文化遺産にも登録されています。欧米各国からも観光客が集まる人気のスポットで、実際に乗ってみると同鉄道には驚きの特徴がいろいろとあります。
そこで今回は日本人がダージリン・ヒマラヤ鉄道に乗って驚いたこととして、ユニークな特徴を紹介したいと思います。
その1:勝手に乗って勝手に降りる乗客が後を絶たない
実際に筆者がダージリン・ヒマラヤ鉄道(通称トイ・トレイン)に乗った区間は、終点のダージリンから世界で3番目に標高が高いGhoom駅までのほんの短い距離。ただ、標高の低いシリグリの町からダージリンを目指して、線路沿いを車で並行して移動していましたので、ずっと鉄道を観察するチャンスがありました。
トイ・トレインは時速10kmほどの低速運転が基本のため、とにかく遅いです。言うまでもなく自動車の方が早く移動できます。走れば追いつけます。勝手に電車に飛び乗って、料金を払わずに勝手に電車から飛び降りる人を何度も見かけました。それでも誰も何もとがめ立てないところを見ると、おおらかな人が多いのかもしれませんね。
その2:線路と道路や町の境界があいまい
路面電車はまた別として、日本の鉄道だと、線路と道路ははっきりと区別されていますよね。境界には柵があり、誰も線路には立ち入れないようになっています。しかしダージリン・ヒマラヤ鉄道は線路と道路の境界があいまい。
そもそも急斜面の山岳地帯に敷設されたために線路が2ft(0.610m)と狭く、その線路に道路や町が折り重なるように広がっています。線路のぎりぎりに露店が並んでいたり、故障して停まっている車を避けるように、平気で線路の上に自動車が乗り上げたり・・・。線路が道路と横断歩道なしに交差する場所も少なくないため、接触事故も少なくないようです。
その3:世界で3番目に標高の高い駅がある
先ほども触れた通り、世界で3番目に標高が高いGhoom駅が終点のダージリン駅の手前にあります。標高は2,258m。富士山で言えば五合目と同じくらいの標高ですね。
ダージリン・ヒマラヤ鉄道は標高114mにある始発駅のNew Jalpaiguri駅から、最高所である標高2,258mのGhoom駅を経て、少し下りダージリンへと通じています。その高低差を登っていくと次第に周辺は寒くなり、霧も深くなっていきます。
終点のダージリンも「霧の町」と呼ばれるくらいで、筆者が以前長期滞在のために初めて到着したとき、周囲は濃霧で幻想的な雰囲気がありました。薄暗い濃霧の中で人々が行き交い、車やトイ・トレインがライトをつけながら忙しく往来していた街のにぎわいを、今でもはっきりと覚えています。
その4:電車がジグザグに進む
ダージリン・ヒマラヤ鉄道は山岳地帯の斜面に沿って、ジグザグに進んでいきます。路線上には6カ所のスイッチバックのポイントがあって、進行方向を切り替えて斜面を登っていくのですね。もちろん日本にもスイッチバックの駅はありますが、それだけ急斜面を電車が登っているのだと実感させられました。
その5:片道32円!?驚くほど運賃が安い
終点のダージリンから世界で3番目に標高が高いGhoom駅までの往復は、観光用の蒸気機関車に乗ると1,300ネパールルピーとなっています。およそ1,400円ですね。しかし通常のディーゼル列車で行くと、ダージリンからGhoom駅は2等席で片道30ネパールルピー。32円ほどです。
観光用の列車は蒸気機関車に乗れる上に、途中の絶景スポットに停車してくれる、博物館に入場ができるといった特権がありますが、ダージリン・ヒマラヤ鉄道は市民の足ですから、通常の運賃はすごく安いのですね(少なくとも日本人の感覚で言えば・・・)。
何しろ始発のNew Jalpaiguri駅から終点のダージリン駅まで総延長88.48km、約7時間の鉄道の旅が1等の座席でも片道1,295ネパールルピー、1,414円ほどです。少なくともお金は気にしないで、現地に行ったら乗っておきたいですね。
以上、ダージリン・ヒマラヤ鉄道に日本人が乗って驚いたことを紹介しましたが、いかがでしたか? トイ・トレインは各種のトラブルも多くダイヤも乱れがち。時間に余裕を持って出かけてみてくださいね。
[Mountain Railways of India – UNESCO ] [Darjeeling Toy Train Rides, Services & Schedule – Darjeeling Tourism ] [All Photos by shutterstock.com ]
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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