旅の予算は239万円から!?今実現している【宇宙旅行】ガイド

Posted by: 坂本正敬

掲載日: Jul 3rd, 2018

「ホリエモンロケット」の打ち上げ失敗のニュースを目にした人も多いと思いますが、実際、現在の宇宙旅行はどこまで現実的になっているのでしょうか。費用がどのくらい掛かって、どのような準備が必要で、そもそも実際に宇宙旅行は実現しているのかなど調べてみました。

旅費は239万円から!?【宇宙旅行】行先別の旅行ガイド

SNSに公開すれば、読む人がびっくりしてコメントが殺到する旅先と言えば、どこを思い浮かべますか? 北極点や南極点もインパクト大ですし、エベレストの頂上なども歴史に名前を残せます。ただ、最大の驚きを持ってリアクションがくると予想される旅先は、宇宙ではないでしょうか。

でもこの宇宙旅行、分からないことがいっぱいですよね。費用がどのくらい掛かって、どのような準備が必要で、そもそも実際に宇宙旅行は実現しているのかなどなど。そこで今回は宇宙旅行について、まとめてみました。

 

宇宙にもいろいろな「宇宙」がある

旅費は239万円から!?【宇宙旅行】行先別の旅行ガイド

宇宙旅行と言うと、どのような形を思い浮かべますか? アメリカの『スペースシャトル』やロシアの『ソユーズ』、中国の『長征』に乗って宇宙空間に飛び出し、宇宙遊泳をして、帰ってくるというイメージでしょうか。

宇宙旅行にもいろいろな形があり、宇宙のどのあたりを旅行するか、例えば地表から100kmを超えた「宇宙空間」と言われるエリアに出るのか、高度400kmの国際宇宙ステーションに行くのか、38万kmも離れた月まで行くのかによって、予算も参加の難易度も旅行期間も大きく変わってくると言います。

大まかに言って「宇宙旅行」と呼ばれるプログラムは、

・無重力体験飛行

・宇宙の入り口までの飛行

・弾道飛行

・軌道飛行

・月飛行

といった形に分類が可能です。無重力体験もある意味の「宇宙旅行」で、飛行機の中で宇宙飛行士が体験する無重力状態を満喫できます。予算は数十万円程度。

旅費は239万円から!?【宇宙旅行】行先別の旅行ガイド

(地表から20km地点の写真 ※写真はイメージです)

宇宙の入り口までの飛行は、例えば『MiG-29』戦闘機に乗って高度24.4km、成層圏の中でもオゾン層がある辺りまで稲妻よりも早い速度で飛んでいく旅行になります。高度24.4kmと言えば、エベレスト山の3倍の高さですね。

高度80km以上がほぼ真空状態になり、人工衛星はさらに高く100km以上を飛ぶと考えると、まだまだ「地球の中」と言った感じですが、24.4km地点からは青と白の地球が湾曲して見えて、頭上には暗黒の宇宙が広がって見えると言います。戦闘機の外はマイナス60℃、しかしコックピットの窓は摩擦熱で温かいのだとか。費用は高重力訓練を含め数百万程度が相場です。HISの場合、2,394,790円~という値段設定でした。

 

弾道旅行は最も身近な宇宙旅行?

旅費は239万円から!?【宇宙旅行】行先別の旅行ガイド
(写真はイメージです)

弾道飛行は、いわゆる「地球の外」に向かう宇宙旅行の形になります。一概に地球と宇宙の境目ははっきりと言えないのですが、一般的に高度100kmが宇宙との境界線と言われています。流れ星やオーロラよりも高い100kmに向けて地表を離れ、空気の薄い場所からロケットエンジンを点火して、一気に上昇します。「宇宙」に飛び出したら、10分前後で地球に戻ってくる旅の形になります。予算は1000~2000万円以上ですね。

弾道飛行になると実際に「宇宙空間」に飛び出しますから、事前に3~4日の集中飛行訓練を受ける必要があります。手元にある『The Space Tourist’s Handbook』という本には、事前の集中飛行訓練として、

・高重力状態や無住旅行状態の訓練

・航空業務や計器の学習

・飛行中の加速についての学習

・安全訓練

・装置の取り扱い訓練

などのプログラムがあると書かれています。クラブツーリズム・スペースツアーズの場合、実際に宇宙に飛び立つパイロットや乗客と一緒に疑似宇宙船を使った実技訓練、専門医の健康診断なども行われるのだとか。健康であるか、船内で他の乗組員と協調して行動できるかといった点も問われるみたいですね。

 

国際宇宙ステーションまで行く軌道飛行

旅費は239万円から!?【宇宙旅行】行先別の旅行ガイド

実績のある旅の形としては、ロシアの宇宙船『ソユーズ』を使って、成層圏も中間圏も突破し、高度400kmまで上昇して国際宇宙ステーションを目指すフライトがあります。2001年から既に実際の旅行者が出かけており、人類で初めて民間人として私費で宇宙旅行を楽しんだデニス・チトーさんも、軌道旅行で宇宙を楽しみました。

国際宇宙ステーションに到着後は、宇宙ステーションとドッキングし、国際宇宙ステーションに1週間ほど滞在して地球を周回しながら、地球に戻るプログラムになります。費用も数十億円とかなりのお金が必要になり、訓練もロシアの宇宙訓練センターで数カ月間行わなければいけません。上述した弾道旅行に必要な訓練に加えて、通信、操縦、エレクトロニクスの知識まで学ぶ必要があると言います。それだけ本格的な宇宙旅行になるのですね。

 

片道38万kmの宇宙空間を往復する月世界旅行

旅費は239万円から!?【宇宙旅行】行先別の旅行ガイド
(写真はイメージです)

最後は月を周って、あるいは月で滞在して帰ってくる宇宙旅行になります。映画ファンの筆者としてはジュール・ヴェルヌの原作よりもジョルジュ・メリエスの映画『月世界旅行』を真っ先に想像しますが、レオナルド・ダ・ヴィンチが、ヤン・ファン・エイクが、ジョセフ・ニエプスが描き、撮影した天体に向かう旅路となります。

オーソドックスな方法としては、

・地球から月を目指し、月の裏側を周って地球に帰ってくるコース

・地球から国際宇宙ステーションを経由し、月に向かって帰ってくるコース

・(未来の話として)月に宇宙ステーションを作り、その宇宙ステーションに滞在するといったコース

があります。10年前のムック本ですが『宇宙旅行に行こう』(昭文社)の初版を見ると、月世界旅行の旅費は120億円、宇宙船『ソユーズ』に乗る場合には、ロシアの宇宙訓練センターで合計8カ月ほど訓練を重ねなければいけないとも書かれていました。

旅費は239万円から!?【宇宙旅行】行先別の旅行ガイド

ただ、現実的にはハードルがまだまだ高い様子。最近の話で言えば、民間企業である米スペースX社が月の周回旅行を企画し、今年2018年に2人の民間人を月へ2人送り込むと宣言していますが、6月の執筆時点で、具体的な情報は発表されていません。

2018年は人類がアポロ8号で初めて月を周回(10周)してから50年の節目の年、夢のある旅の実現を見守りたいですね。

 

以上、宇宙旅行についてまとめましたが、いかがでしたか? ちなみに宇宙空間からの絶景の撮影ポイントは、万里の長城、エベレスト山、アマゾン川、バハマ諸島、ハリケーン、火山の噴火、雷雨の雲、オーロラなどになるそう。

ただ、国際宇宙ステーションから地球を撮影すると、宇宙ステーション自体が時速8kmで動いているため、シャッタースピードが遅い場合、ブレてしまうのだとか。地球上の被写体をしっかり撮影するためにも、800mmのレンズを持参し、シャッタースピードを変えられる一眼レフカメラを持ち込む必要があるみたいですね。

旅費は239万円から!?【宇宙旅行】行先別の旅行ガイド

 

[成層圏から、青い地球を確認せよ。宇宙の入口への道草旅 成層圏体験プログラム – HIS]
[宇宙旅行のご案内 – クラブツーリズム・スペースツアーズ]
[The Space Tourist’s Handbook – Eric C. Anderson|Quirk Books]
[空と宇宙の境目はどこですか? – Japan Aerospace Exploration Agency]
[宇宙旅行に行こう!|昭文社]
[All Photos by shutterstock.com]

PROFILE

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

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