軍港の街・横須賀。じつは日本一トンネルの多い街としても知られています。
トンネル同様、あちこちで見かけるのが防空壕。その多くは埋め戻されたり、塞がれたりしていますが、生活のなかで活用されているものもあります。今回はライブハウスとして活用されている防空壕をご紹介します。
山肌に残る防空壕の痕跡
JR 横須賀駅を降りると、眼前に広大な軍港が広がります。自衛隊の船艦や潜水艦に目を奪われつつも、ドブ板通りのある京急線・潮入駅へ向かいます。すると山肌に沿って防空壕の痕跡をたくさん見かけます。
まず目を奪われるのが、国道16号線に面したタクシー会社の車庫です。防空壕を掘り拡げて車庫として使用しているようです。
ゆうに10台は格納出来そうな巨大な壕。なかなかワイルドな光景ではないでしょうか。
東京ガスが使用している防空壕の跡です。
この斜面にはふさがれた壕口がいくつかあったそうですが、何年か前に擁壁の補強工事が行われ、分からなくなってしまいました。
駅に向かう道すがら、駅前商店街の裏側でも金網越しに壕口をみかけました。
戦時中の横須賀には要塞状のトンネルがいくつも掘られていたそうです。現在でも米軍横須賀基地内には、その当時の地下要塞が残されているとのこと(一般人は入れません)。
また横須賀芸術劇場の裏側の山には、防空壕を利用した焼き肉店がいくつもあったそうです。残念ながらその手の店は、時の流れと共になくなってしまいました。
ドブ板通りの裏手で見かけた、埋め戻された壕(クリーム色のトタン)。以前は車庫だった。
X JAPAN の HIDEゆかりの、ショッカーの基地のようなライブハウス
しかし今も一軒だけ頑張っている店があるのです。それがライブハウス「かぼちゃ屋」です。
横須賀出身のミュージシャン、 X JAPAN の HIDE も遊びに来たという地元の有名店です。
三代目店長の清遠武彦さんによると、この壕が掘られたのは戦時中ではなく、戦後とのこと。ですから正確には防空壕ではないのかも知れませんが、その妖しい魅力に抗うことは出来ません。
ライブ中は観客の熱気で湿度が急上昇。天井から水滴が滴るといいます。それを常連客は「横須賀汁」と呼んでいるのだとか。
防空壕は町中だけに留まりません。国道16号線沿いに車を走らせると、車庫として現役の防空壕をみかけて唖然とします。
追浜町2丁目、国道16号線沿いの C 急傾斜地の防空壕車庫
ふたつの壕は横穴でつながっていました。
戦争の痕跡というと悲惨な光景ばかり連想されます。しかし焼け跡から復興を成し遂げた、庶民のたくましさを感じ取ることも出来るのでした。
[Photo by Dambala Tell-Kaz]