(写真はイメージです)
温泉に浸かりながら、「あー、家でも蛇口から温泉が出てきたら!」そんな風に思ったことがある人はきっと多いはず。温泉をひくのは場所が限られますが、自宅で温泉を楽しんでいる人たちは意外といるようです。温泉宅配がどんなものか試してみました。
箱根の強羅から30km圏内の宅配サービス
(c) 株式会社創泉コーポレーション
まず、箱根の強羅に源泉をもつ温泉宅配の会社に話をきいてみました。箱根の強羅から30km圏内で、ホースの長さから3階までのお宅が配達可能です。こちらは1回3,000円ですが、単発での配達は受けていないとのこと。個人の場合は週1などの定期的な利用を前提に契約しているそうです。
「箱根からそう遠くないところに住んでいる、でも頻繁に通えるほど近くはない」ところにあるお宅が多く、どこも追い炊き機能などで2~3日利用しているとのことでした。2日目以降の利用のために、ポリタンクなどに少しサービスで温泉を注いでくれるそうです。
取材のため特別に単発利用をさせてもらえることになりました。決まった曜日の朝10時から11時に配達するけれど、お湯が50度と熱いので、入れるのは18時くらいになるだろうという話でした。筆者の家のお風呂は追い炊きができないので、夕方まで温度が保てるのかが懸念事項です。
温泉は硫黄成分が入っていないのでお風呂へのダメージはないものの、無色透明無臭ということなので、自宅のお風呂で温泉って感じがするのかが気になるポイントでした。ちゃんと温泉水を届けてくれるのだろうかといった警戒は、ホームページに許可番号を含め、温泉の情報が詳しく載っていたのでかなり軽減されましたが、完全には消えていませんでした。
また家族は、温泉なら入りに行く方がいいなんて言っていました。
宅配の当日入浴まで
それでも当日、我が家に温泉がやってくるということで、なんだかんだ皆はしゃいでいました。
(c)Shio Narumi
約束の時間より早く、9:30に、あと5分で着くという連絡が。そして推定70代の2人組が、2トン車でやってきました。会ってみて、穏やかな感じがよい方々で大分安心しました。
(c)Shio Narumi
温泉は、タンクからエンジンポンプで送り出されます。耐熱のホースを窓から室内に入れるのに、まず車を停め直したりしました。1人が車のところに、もう1人がお風呂場にスタンバイ。スイッチを入れると、お湯がどんどん湯船にたまっていきます。
お風呂場担当の方が、5分ほどで「ストーップ!」と大声で言いながら手元のスイッチを動かし、もう1人がエンジンポンプを止めました。この時点でホースの中にあるお湯は破棄となるので、タイミングを合わせるのが大切なんですね。
湯船が大きくないので、すれすれまで入れてもらいました。その後片付け、お会計など含め、20分ですべてが完了。近くの地域ではどのへんにお客さんがいるとか、社員で宅配サービスを利用しているなどきいて、信頼感が増しました。
(c)Shio Narumi
お風呂場に戻ってきて温泉に触れてみると、あちっというくらいの温度です。見た目はいつものお湯ですが、ちょっと舐めてみたら、話通りの塩味だったので、やっぱり温泉なんだと思いました。
サービスでバケツに入れてもらった分で足湯をしてみることに。片足を温泉に、もう片方を普通のお湯につけてみましたが、温まり方の違いは分かりませんでした。温泉の方がちょっと肌が滑らかになったように思います。においをかいでみると、普通のお湯は塩素の臭いが気になりました。こういう実験ができるのも楽しいです。
この日は気温が21度で、14:30時点で入浴するにはちょっと熱いくらいになったので、風呂蓋をして浴室暖房をスタートさせました。
実際入浴してみると
(写真はイメージです)
先に入った家族が、冷めた温泉を使って温度を下げたようで、18:30頃は適温でした。普通にしていると無臭ですが、手についたお湯を嗅ぐと、発泡スチロールに似たにおいが微かにしました。温泉なのかホースなのか分かりませんが、ふだんとは違うにおいです。
アルカリ性の美肌の湯なので、肌にふれると滑りがよいです。また、入浴剤なしに何人か入ったあとに感じるお湯のにおいが全然ありません。こういった感覚や、実際温泉を入れているところに立ちあったことなどから、温泉に入っているんだという高揚感は想像以上にありました。
母は一緒に立ち会っていたので温泉だなと思って入れたそうですが、何も見ていない父は入浴中温泉って感じがしなかったそうです。やはり、色や分かりやすいにおいがしない場合は、本人のもっている情報次第で実感が変わるようです。
ただ、肌への刺激が穏やか、あたたかさが続いた、温泉特有の疲れを感じた、翌朝の肌の調子がいい、などという感想もありました。そして、温泉まで行くには車で1時間以上運転するし、人に気を遣わず入れるから、リラックスできてこっちのがいいのでは?という、予想以上にポジティブな結論でした。筆者も、ふだん温泉ではやってはいけない、頭をお湯につける、など楽しめました。
結論として、今回の体験は有意義なものでした。お値段以上に皆が楽しめました。
単発利用可、群馬のにおいや色がある温泉
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もうひとつ、群馬の太田市に、関東全域、場合によっては全国に温泉を配達できる会社がありました。建物の4F以上であっても、「基本的にはそこに浴槽があればどこでもお届け致します」とのことです。かっこいいですね!
現在取り扱いのある温泉はアルカリ性単純泉の3種類。「しゃくなげの湯」は硫黄の香りがする無色、「赤城南麓の湯」はほのかに鉱物臭がしてわずかに黄金色、そして「ささの湯」は無色無臭です。しゃくなげの湯は硫黄の香りとききましたが、どれも「硫黄分を含まないアルカリ性単純泉」なので、風呂釜や浴槽にはほとんど影響ないそう。
身体上の理由等で温泉に行けない方やご高齢の方の利用が多いそうですが、最近はプレゼントとしての利用が増えてきているそうですよ。
料金は、250リットルあたり、太田市は3500円、少し離れたさいたま市あたりは6000円、都内になると、おおよそ10,000~13,000円(税込)になるそうです。温泉は、さめたままでも、温めての提供でも料金は同じです。
段ボール入の温泉
また、温泉を箱詰めで発送しているところもあります。追い炊き機能などがあれば問題なく使えるでしょう。無色で無臭で箱詰めだと、温泉という分かりやすさは減るかもしれませんが、宅配便なので受け取りに時間がかからない、安価というメリットがあります。
また、全部お風呂にいれなくても、入浴剤代わりにお湯に追加したり、アベンヌウォーターのようにスプレーして使うという人もいるようです。
気軽に温泉を楽しむ方法はいろいろありそうですね。
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