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無知なジェスチャーが、旅先でもあなたを危険にさらしている|安積陽子氏インタビュー<4>

Posted by: 米田ロコ
掲載日: Dec 20th, 2018. 更新日: Jan 12th, 2019

仕草や振る舞いと同様に、ジャスチャーにも日本と海外で意味の異なるものが多くあります。中には、全く逆の意味になってしまうジェスチャーも。今回は、日本人が海外旅行でもやってしまいがちな、不快や危険を招くジェスチャーについて安積さんに伺っていきます。

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海外で“笑われてしまう日本人の服装や振る舞い”を辛口で紹介した話題の本『NYとワシントンのアメリカ人がクスリと笑う日本人の洋服と仕草』。周囲の視線を気にする日本人が、洋服の選び方や着こなしについては、なぜか無頓着。 奥深い内面があれば、当然、それは外見にも表れているべきという国際認識がある中、今後私たちは洋服をどのように装い、周囲にどう振る舞えばよいのか? 

同書の著者で、国際ボディランゲージ協会代表理事、イメージコンサルタントとして世界標準の装いや仕草に精通する、安積陽子氏へインタビュー。


連載 第4回 テーマ:無知なジェスチャーが、旅先でもあなたを危険にさらしている

仕草や振る舞いと同様に、ジャスチャーにも日本と海外で意味の異なるものが多くあります。中には、全く逆の意味になってしまうジェスチャーも。誤解だけならまだしも、身の危険を招くジェスチャーは、ぜひとも覚えておきたいものです。今回は、日本人が海外旅行でもやってしまいがちな、不快や危険を招くジェスチャーについて安積さんに伺っていきます。

以下のリスト、一つでもチェックがつく人は必読ですよー!

  • 外国人と接する機会がある
  • 海外旅行が好き
  • 会話中の身振り手振り(ジェスチャー)は多いタイプ
  • 姿勢が悪い

—前回は、誤解を招く日本人の仕草や振る舞いについてお話頂きましたが、引き続き、ジェスチャーについてもお話を伺いたいと思います。 まず、ジェスチャーには世界共通認識のものはあるのでしょうか?

「実は、ジェスチャーの捉え方は地域によって異なるだけでなく、宗教によっても異なります。ですので、万国共通で正解を見つけるほうが難しいですね。日本人同士では些細なジェスチャーでも、異なる文化や宗教の中においては、命の危険にかかわるようなメッセージを放っていることもありますので、海外旅行の際などでも注意が必要です。

ブッシュ元大統領も失態を招いた、逆ピースサインの罠

↑逆ピースサイン、ついついやってしまっていませんか?

ーでは、日本人に馴染みのあるジェスチャーのうち、海外で不快を招くジェスチャーには、どのようなものが挙げられますか?

まずは、日本でもお馴染みのピースサインです。アメリカでは平和や勝利を意味するサインとして、日本でもポジティブな意味で使われるジェスチャーではないでしょうか。
 ですが、ギリシャでは『くたばれ』の意を示すジェスチャーです。また、逆ピースサイン(※拳を自分側に向けたピースサイン)も同様に、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドではネガティヴな意を示すジェスチャーと言えます。

ーピースサインだけでなく、逆ピースサインにも注意が必要なのですね。

「はい。逆ピースサインについては、故ジョージ・ブッシュ(父ブッシュ)元大統領も失態を招いています。彼は、1992年のオーストラリア訪問の際、移動中の車の中から、逆ピースサインをして気さくさをアピールしたのですが、オーストラリアにおいては『侮辱』の意を示すサインですので、オーストラリア中から非難を浴びてしまいました。
 最近では、日本のアイドルや著名人、一般の方も、逆ピースサインをして写真を撮っていますが、国によっては大変な不快を招くジェスチャーですので、海外へ渡航する際はくれぐれも気をつけて頂きたいと思います。

Facebookの『いいね』のもう一つの意味

↑Facebookでも使われているこのジェスチャーも、実は気をつけたいサイン。

ー確かに、ピースサインのように、ポジティブな意味として使っていても、相手に不快感を与えるジェスチャーは知っておいて損はないと言うか、国際化が加速する中では知ることが至極当然の流れのように感じます。

「そうですね。昨今、ITの発達に伴った更なる国際化は、誰しもに関わる事です。また、SNSが普及したことで、国境を超えたコミュニケーションも容易になりました。だからこそ、各国におけるジェスチャーの捉え方は知っておいたほう良い。ジェスチャーについては、SNS上でも思わぬ落とし穴が存在していますので、それを知っているだけでも、コミュニケーション上の致命的なトラブルを避けられますよね。

-SNS上にも存在する、ジェスチャーの落とし穴とは?

「例えば、日本でも言わずと知れたFacebookですが、投稿に対するリアクションボタンの中に、親指を上げるジェスチャーを表す“いいねボタン(Like)”が存在するのはご存知だと思います。親指を上げるジェスチャーは、北米では『OK』や『いいね』を示しますので、北米で誕生したFacebookは当初、そのサインをリアクションボタンに採用したのでしょう。 しかし、中東や南米、西アフリカなどの一部では侮辱を意味するジェスチャーになりますので、Facebook上で『いいね!』という意味で“いいねボタン(Like)”を押したつもりでも、それを複雑な気持ちで受け取る人もいる、ということです。」

ーなるほど。今はリアルだけでなく、ネット上でもジェスチャーには注意を払うが必要があるのですね。

「はい、それはありますね。見ず知らずの人々と繋がることのできるSNSは、便利なツールですが、異文化への理解なくしては成り立たないものだと思います。」

オッケーサインは、全くOKではないサイン

↑所変われば品変わる。OKサインも、違う意味のサインになってしまいます。

-ところで、人差し指と親指で丸を作る“OKサイン”は、様々な解釈を持つジェスチャーと言われていますよね。やはり、これも気軽には使わないほうが良いのでしょうか?個人的に、SNS上でついつい使ってしまう絵文字(ジェスチャー)でもあるため、確認のためにもお聞きしたいです(笑)。

「人差し指と親指で丸を作るジェスチャーは、アメリカでは『OK』や『いいね』を意味し、日本では、時に『お金』を意味するサインとしても使われますよね。しかしながら、ブラジル、スペイン、イタリア、ギリシャ、トルコ、ロシアなどの国々では、性的な侮辱を意味します。スペインやフランスと同じヨーロッパ圏にあっても、これがフランスでは、『ゼロ=役立たず=価値がない』ことを示すジェスチャーになりますので、このジェスチャーを活用する場合、使う場所には非常に注意が必要となります。
 このジェスチャーを使って良いのか否かに自信がない場合は、『OK』や『No Problem』など、言葉で意思表示をするのも手です。」

ーこのジェスチャーをネガティヴな意味としてとらえる国が結構多いことに驚きました。

「それだけに、日本にいるときのように気軽には使えないジェスチャーと言えますよね。場所と場合によっては、身の安全を脅かす事態に繋がる可能性もありますので、海外では不用意に使用しない方が宜しいかと思います。
 日本人がよくやるジェスチャーでも、外国人から見ると、危険を招いていると思えるものは案外多いんですよね。人によっては、癖のようになってしまっている場合もありますので。」

危険を招く、日本人特有のジェスチャーと仕草

-その、日本人特有の危険なジェスチャーをぜひ知りたいです!

「沢山あるのですが、まず、日本でもよく見かけるのが、顔の前で手を振るジェスチャーですね。日本では、『私ではありません』『いいえ』といった意思を示すジェスチャーですが、海外では『臭い』と解釈されることがあります。
 あとは、前回のお話でも話題に上りましたが、日本人特有の口元に手を当てて笑う仕草は『軽蔑する微笑み』ととらえる国も沢山あります。」

↑『上品な微笑み』のはずが、海外では『軽蔑の微笑み』に見られてしまうことも。もしくは、『自分の口臭が臭い』『相手の口臭が臭い』というようにも解釈されてしまう仕草。

「他にも、レストランのウェイターや街頭でタクシーでなどを止める際に、日本人は手を真っ直ぐ上に伸ばして拳をパーにしますよね。いわゆる、挙手の仕草ですが、ドイツやその周辺国を訪れる際は控えるべき仕草です。

ーえっ? ドイツでは、“挙手”も良くないのですか?ウェイターさんやタクシーを呼び止めたいときに、困ってしまいそうです・・・。

「この姿はナチス式敬礼やヒトラーを思い起こさせるため、ドイツにおいては非常に不快に思われる仕草ですし、ドイツの子どもたちは、“絶対にやってはならない仕草”として、大人から教育されます。」

「ドイツやその周辺国で、ウェイターさんを呼び止めたいときはアイコンタクトで知らせるか、タクシーを呼び止めたいときは、このように人差し指を軽く立てて、手を挙げるようにすると良いと思います」と安積さんは話す。

—ジェスチャーは、その国の歴史とも大きく結びついているのですね。歴史が異なれば、ジェスチャーへの解釈も大きく異なるという、分かりやすい事例ですね。

ジェスチャーだけではない、日本人特有の歩き方が危険を招く?

—この他にも、自らの危険を招く可能性のあるジェスチャーや仕草はありますか?

「もちろん、この他にも沢山あります。ですが、意外と盲点になっていて、ご本人が気づきにくいのが“歩き方”かな、と思います。日本人の歩き方は、攻撃を誘発する歩き方とも捉える事ができます。

ー歩き方・・・ですか? 攻撃を誘発する訳は後ほど伺うとして、まず、日本人の歩き方って、そんなに分かるものなのでしょうか?

「はい。それが分かる外国の方は、“足音を聞いただけで日本人だと分かる”とおっしゃるくらいです。 
 過去のことになりますが、アメリカにいたときに“日本を見直したい”と思い、アメリカで日本舞踊を習い始めたんですね。すると、その日本舞踊の先生が言うには、『日本人が歩くときには、特有の足音がする。だから足音で日本人だとすぐ分かる』と。どんな足音かと尋ねると、ズズッと靴底を擦るような音だとおっしゃるんです。  
 日本では着物で歩く際は、足を擦るように小股で歩きますよね。たぶん、この和式歩行を、なぜか洋服を着ていてもやってしまっているのでしょうね。」

「日本人の歩き方を指摘されたときは、私もハッとして、自らを振り返りました。歩き方には国民性が表れるそうで、靴の減り方・歩くリズム・足を蹴り上げるのか足を擦って歩くのかなど、国ごとに傾向があるそうです。」と安積さん。

ーこの歩き方が(相手の)攻撃を誘発する可能性があるのは、なぜですか?

犯罪者に襲われやすい人の歩き方として、ある研究結果から見受けられるのは、どこか不自然な歩き方や、手を差し伸べたくなるほど不安定な歩き方だということです。
 日本人は、和式歩行と洋式歩行が混じり合っている方が多く、歩き方がアンバランスに見える方も少なくありません。
これには、遺伝的特徴(骨格、筋肉のつき方)や姿勢、生活習慣も大きく関係しているので、ある意味仕方のないことではありますが、外国人から見ると、なんとなく不自然で不安定な歩き方に見えてしまいます。」

ーなるほど、そういった理由があったとは知りませんでした。自分の歩き方の特徴を把握するのはなかなか難しいと思うのですが、海外において自分の身を守るという観点からも、姿勢や歩き方は見直す必要はありそうですね。

ご自身の歩き方を見直すという意味では、靴底を見れば、自分がどのように歩いているのかを把握できます。美しい佇まいや歩き方をされている方は、靴底が左右均等に平らに減っていますが、歩き方に歪みが生じている方は、靴底が斜めに減っています。姿勢が悪かったり、ご自身の歩き方に違和感を感じていたりする場合は、靴底と併せて、ご自身の動きを見直されるのが宜しいかと思います。」

ーでは、家に帰ったら直ぐに、靴箱の靴を片っ端からから確認してみたいと思います!(笑)

 普段使っているジェスチャーも、なんとなく使っているだけでは、上手に使いこなすことはできないようです。装いや立ち居振る舞いと同じく、“なんとなく”というスタンスを卒業して、意識的に使うことで、ジェスチャーが活きてくる。 最終回の次回は、装いや立ち居振る舞いを通して、日本らしさと世界標準の間で、これから私たちはどう在るべきかを考えていきたいと思います。
どうぞお楽しみ!
  
安積陽子氏インタビュー連載
<1>海外で笑われないための装い、洋服選び
<2>日本人は着物と一緒に「装いの哲学」も脱ぎ捨ててしまった?
<3>日本の常識は世界の非常識?日本人を残念に見せる仕草とは
もぜひチェックしてくださいね。

[Interview photo by MASASHI YONEDA]
Do not use images without permission.

米田ロコ

LOCO Yoneda ライター・編集者。
自由と自然を愛し、Vanlifeにて日本を旅する。

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