
ヨーロッパの権威あるミュージアムオブザイヤーに2回ノミネートされたことのある人気の博物館がイギリスの南部ポーツマスにあります。16世紀ヘンリー8世の時代に沈没した軍艦が400年の時を経て引き上げられ、その後長い時間をかけて復元作業が行われたという壮大なストーリーがあるのです。
チューダー朝のメアリーローズ

メアリーローズがどのようにして海底へと沈んだのでしょうか。こちらの博物館では、そのときの状況についていくつもの仮説を提示しています。

1545年、ポーツマス沖で行われたフランスとの戦い。イングランド王ヘンリー8世は陸上で陸軍と海軍を指揮していました。
メアリーローズは34年間活躍していたベテランの船。それが、傾き始めてからものの数分で沈みました。理由ははっきりわかっていないのですが、突風で船が傾いたときに砲門から水が流れ込んだせいなど、複合的なものではないかとされています。

メアリーローズには500人もの乗組員がいました。200人の船乗り、185人軍人、30人の砲射撃手などなど。このとき生き残ったのは35人だけ。接戦に備えて、フランス軍の侵入を防ごうとして船の出入り口に張っていた網が裏目に出て、船の中にいた乗組員たちの脱出をも防いでしまったようです。

その後メアリーローズは深い海泥の底で長い時間を過ごします。1836年に発見されるも、当時の技術では引き上げることができずにいました。1971年から調査が行われ、深い海泥の底にあったメアリーローズは、長い調査の末、1982年に引き上げられました。チャールズ皇太子も委員長として関わった世紀の大プロジェクトでした。
歴史を学んだあとは、次の間へ。
メアリーローズと対面

蒼く暗い空間に置かれた大きな船の骨組み。これがメアリーローズです。ガラス越しですが、実際その姿を目にすると迫力に息をのみます。
その雰囲気は、映画タイタニックを思い出させます。

乗組員の映像が投影されると、今度はカリブの海賊のような雰囲気です。


最上階からはガラス越しでなく、ダイレクトに見ることができます。
そうすると、気になるのがにおいです。酸っぱいにおいが漂っているのです。
学芸員の方に訊いたところ、木材自体のにおいだと。ワックスなどさまざまなものが施されてきたからだということで、決してカビによるものではないそうです。また主な木材はオークということです。
実際、1982年に引き上げられてから2013年に公開されるまで、12年をかけた塩抜き作業、そして保存剤の入れ込みといった復元作業が行われています。
展示されているもの
博物館には、乗組員たちの姿や当時の様子を伝える様々な展示がなされています。

骨格から推定される弓の射手の姿。

乗組員たちの履いていたもの。

食器。こういったものが、大工、パイロットなど乗組員の職業ごとに分かれて展示されています。
メアリーローズには500人×2週間分の食料を積んでいたと考えられている、といったことなども展示されています。1800kgの牛肉、900kgの豚肉、750kgの魚、これらは乾燥か塩漬けのものです。そして3,150の固くて甘くないビスケット、31500リットルのビール。豆やチーズ、バターもあったようです。
これらの資料も興味深いのですが、やはりメアリーローズ自体が印象的すぎました。
おみやげ

おみやげコーナーで特に目立っていたのが、このメアリーローズの模型。お値段£380です。

歴史を感じさせるデザインのポスターは、£2.99。

博物館を後にしたあとも、しばらく心をメアリーローズに掴まれていました。ミュージアムオブザイヤーにノミネートされたのも、わかる気がします。
The Mary Rose Museum
(営業)
11月~3月 10:00~17:00(最終入場16:15)※元旦は11:00~17:00
4月~10月 10:00~17:30(最終入場16:45)
(休日)
12/24~26
The Mary Rose, Main Road, Portsmouth, PO1 3PY,
https://maryrose.org/
参考
[トリップアドバイザー]
[ONLINEジャーニー]
Shio Narumi ライター
イタリアはフィレンツェとタオルミーナの料理留学、イギリスはウエストン・スーパー・メアとケンブリッジの花留学を経て、現在はロンドンと神奈川を行ったり来たり。飛行時間の大幅短縮が実現するよう、心から科学の進歩を願う水瓶座。
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