日本ではそれほど名前を知られていないのですが、ロンドンには「ウォレス・コレクション」という貴族趣味のきらびやかな美術館があります。18~19世紀に集められた絵画、彫刻、家具、武器、鎧、磁器などが、侯爵のお屋敷にこれでもかというほど並んでいます。寄付が推奨されていますが、入場は無料。中ではどんなものが展示されているか見てみましょう。
武器のコレクション
玄関ホールに入ると、大理石の階段が伸びているのが見えます。階段を上がらず、左手のおみやげ売り場を通り過ぎると、武器のコレクションエリアへ。武器の部屋は4部屋も続きます。おびただしい数の鎧や剣などが並び、息苦しさを覚えるほど。
その中で目玉とされているのがこちらの鎧。1480年のもので、この時代のほぼ完全な形で残されている馬鎧は、世界に3つしかないそう。馬の鎧はユニコーンのように角が伸びています。さすがにこの部屋は、この貴重なコレクションを際立たせるためにすっきりした配置です。
武器のエリアが苦手な人でも、東洋のナイフや王冠は楽しめそうです。
絵画のコレクション
おそらく絵画のコレクションの中でもっとも有名なのがこちら。1767-1768年に描かれた、フランスの画家ジャン・オノレ・フラゴナールの「ぶらんこ」です。
ロココ美術の傑作を飾るにふさわしい、2階のオーバル型の部屋にあります。
絵画のコレクションが飾られる中で、一番大きい部屋が2階の「グレート・ギャラリー」。広いですよね!
ここには、カナレットが描いたベネツィアの景色2点や、「虹のある風景」などがあります。
グレート・ギャラリーの隣のイースト・ギャラリーには、レンブラントが息子を描いた肖像画が。これも美術館のハイライトになっています。
館内はエリアによって、壁紙の色が違います。それもお楽しみのひとつ。
同じイースト・ギャラリーには、驚くほど瑞々しく描かれたぶどうの静物画も飾られていました。
ゴージャスな家具と並んでもしっくり馴染む、金色の消火器もしっかりアートだなと一人感心してしまいました。
反対側のウェスト・ギャラリーで、スタッフに見どころを尋ねたところ、こちらの作品を紹介されました。ルーブル美術館に飾られている作品のレプリカなのですが、ロンドン塔に幽閉されたエドワード8世と弟のリチャードを描いたもので、実話に基づくことから人気だとか。
若い娘がライオンの爪を切る作品も印象的です。戸惑うライオンと、周りの人々の心配そうな表情と「The Lion in Love」というタイトルが興味深いのです。
その他のコレクション
1階の16世紀ギャラリーに、15世紀後半の角笛が飾られています。
こちらは2階のキャビネットにある、嗅ぎタバコを入れる18世紀のフランスのケース。
1階の廊下に飾られている、15世紀のイタリアのボウルも素朴で可愛らしいです。
こちらは2階のグレート・ギャラリーにあるフランスの貴重品箱。
2階のウェスト・ギャラリーにあるフィレンツェのモザイコのテーブル。家具は、館内のいたるところに効果的に飾られています。
休憩したくなったら、中庭へ。天井がガラス張りの明るいレストランです。お茶やアフタヌーンティーの他、金曜と土曜の夜は星空の下でフレンチをいただくこともできるという仕掛けです。
建物が大きすぎないので、気合を入れなくても来れるのが魅力です。
The Wallace Collection
開館時間 10:00~17:00 ※12月24~26日以外
Hertford House,
Manchester Square,
London W1U 3BN
https://www.wallacecollection.org/
[ All photos by Shio Narumi ]