
ネットやSNSで世界各地の絶景や穴場スポットの情報が手に入る現代。筆者の心を旅へと突き動かしたのは、とある写真集との出会いでした。今回は偶然見つけた写真集から始まったベトナムスイティエン公園への体験記をお送りします。
情報が溢れる時代に目を引いたモノ

「次はどこへ行こうかな」という考えは常に頭の中にあり、筆者の生きるモチベーションでもあります。ある日なんとなくネットで旅行サイトを見ていたら、たまたまフォトグラファー佐藤健寿氏の写真集「奇界遺産」のことを知りました。世界に散らばる奇妙な場所や物をだけ集めた写真集というのが気になって早速購入し、ページをめくるたびに世界にはこんな場所があるのか!と衝撃を受けたことを今でも鮮明に覚えています。
一通り見終えると実際に自分でその風景を見たくていてもたってもいられなくなり、写真集の中で紹介され表紙にも選ばれたベトナムの「スイティエン公園」を次の旅先に決定したのです。
写真集では「ベトナム建国の神話を元にしたにしたテーマパーク」と紹介されており、行く前から期待値を上げすぎないように、ネットで調べたのはホーチミンからバスに乗って行けるという情報のみ。他はその場の流れに任せてとにかく行ってみることに決めました。
あえて情報を集めずたどり着いた先には

現地に着いてからは宿の人にも確認をしながらバス停までたどり着いたものの、果たしてスイティエン公園まで無事にたどり着けるのか半信半疑になりながら、バス停で待っていた現地の人にジェスチャーを交えつつ何度も「スイティエン?」と尋ね、それらしいバスに乗ることに成功。本当にたどり着けるのだろうか、無事に帰ってこられるのか、そもそもスイティエン公園が目的の女の一人旅っていかがなものだろうかなど、道路に鳴り響くクラクションを聞きながら様々な考えが頭をよぎりました。

バスに揺られることしばらくして、それらしき施設の前にバスが止まりました。施設の外から眺めてまずびっくりしたのは、とにかく派手なエントランス。園内に入っていくと目の前に広がるのは、広大な敷地の中にこれでもかというくらいに散らばる不思議なオブジェとアトラクション。当日は雨模様で人が少なかったこともあり、殺伐とした薄暗い景色が園内の異様さをさらに際立てていました。
常識を覆すカオスな空間

アトラクションの多くは不気味なほど派手に装飾された建物の中にあり、中でも印象的だったのは建物の地下に入っていくと1m以上もする巨大なナマズが大きな水槽いっぱいに泳いでいるミニ水族館のような施設。水槽から漏れる光がうっすらと湿った暗い通り道を照らしており、巨大な魚が何十匹も目の前を遊泳する姿は不気味以外の何物でもありません。決して怖いアトラクションではないはずなのに、お化け屋敷に入ったようなひんやり感を味わいました。
また園内ではパレードらしきものも行われており、華やかな装飾のされたパレードと対照的なパーク全体の薄暗い雰囲気が、さらに異様さを引き立てていました。

おどろおどろしいアトラクションの前をカラフルなパレードが陽気な音楽とともに通過する光景は、かなりシュールです。

写真集の表紙に選ばれた伝説の国王「ラック・ロン・クアン」とも無事に対面し、静かな達成感も得られました。

園内でしばらく過ごすと、それまでいちいち驚いていたオブジェやアトラクションにも慣れていき、「テーマパーク」が必ずしも個性的な人気キャラクターやスリル満点のアトラクションを必要としないこと、とにかくなんでも詰め込んでOKなことなど、それまでの筆者の頭の中にあった「テーマパークたるものこうあるべき」という考えがいかに浅はかで物事をつまらなくしているかということに気づきました。

一冊の写真集を手にしたことから始まったベトナム旅行。それは筆者の想像を打ち砕くようなワンダーランドへの招待状でもありました。写真で見たインパクトよりも、実際に自分の目で見て、感じた体験はさらに衝撃的で忘れられない旅になったことは言うまでもありません。
旅の目的は美しい景色、美味しい食事、有名な世界遺産を巡るだけである必要はない。
世界中に散らばるまだまだ知られていない不思議なスポットを訪れる旅は、新しい旅の目的を筆者に教えてくれたのでした。
[All photos by Yoko Nixon]
[佐藤健寿 奇怪:The Wonderland]
『これぞ奇界遺産!シュールな遊園地「スイティエン公園」でワニが釣れる?【ベトナム・ホーチミン】』もあわせてどうぞ。

Yoko Nixon ライター
高校時代初めてアメリカのテキサス州に留学してから、縁あって大学もそのままテキサスへ。帰国後リーマントラベラーとして暇を見つけては世界各国を旅し、旅と写真の面白さにハマる。現在はアメリカのアーカンソー州在住。目先の目標はアメリカ全州を制覇することです!
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