「祇王寺」の小さなお庭で四季の美と心通わすひとときを【京都・奥嵯峨】

Posted by: kurisencho

掲載日: Apr 5th, 2020

京都の観光地で人気の嵐山。渡月橋、竹林、天龍寺など人気のスポットが多々ありますが、その喧騒を離れ、ひっそりと心を落ち着かせることができる場所があります。渡月橋と反対側の奥嵯峨の方面に佇む、竹林に囲まれた尼寺「祇王寺」です。朝の早い時間に訪れると、決して広くはなく派手でもないその尼寺には、ただただ静かに時が流れ、無限に四季の美が広がっていました。

祇王寺 外観

平家物語に登場する“悲恋の尼寺”

嵯峨嵐山駅から、嵐山の観光名所の竹林を抜け20分ほど歩くと、少し長い坂道の先にある 「祇王寺」に辿り着きます。法然上人の門弟良鎮により創建された昔の往生院の敷地内にあり、平家物語にも登場しています。

平氏全盛の頃、白拍子(平安時代末期から室町時代初期にかけて行われた歌舞を演じた舞女)の祇王と祇女という姉妹がおり、姉の祇王が平清盛の寵愛を得て、妹の祇女も有名となりました。そこに仏御前という白拍子が清盛の屋敷に現れ、清盛はたちまち心移りしてしまいます。

祇王寺 苔庭の入口
都を追われるように去ることになった祇王は、「萌え出づるも 枯るるも同じ 野辺の草 いづれか秋に あはではつべき」と障子に歌を書き残して、母・刀自と祇女とともに出家。入寺したのが祇王寺だそうです。その後、剃髪した仏御前も仏門に入り、4人で往生の本懐を遂げたと記され、「祇王寺」は“悲恋の尼寺”として知られています。

祇王寺 朝の苔庭
竹林に囲まれた境内は少し高低差がある小径が続き、苔庭は美しい陰影を見せてくれます。ゆっくり歩くと、すぅっと気持ちが落ち着いてきます。

祇王寺 庭の苔
春の日差しの中、深い緑の苔に日差しが反射して、近寄って見てみると小宇宙のような輝きを放っています。

祇王寺 苔の盆栽
手入れの行き届いたお庭に、可愛らしい苔の盆栽が飾られていました。

草庵の「虹の窓」で歴史を読む

苔庭の小径の先には祇王たちの仏像が安置されている草庵があります。

祇王寺 青空と苔庭
仏壇には、御本尊の「大日如来」「平清盛」「祇王」「祇女」「刀自」「仏御前」の木像が安置され、祗王と祇女の像は、目が水晶(玉眼)で鎌倉時代の特徴を表しています。

祇王寺 吉野窓
仏間の奥には季節ごとに彩りを変える「吉野窓」があり、影が虹の色に見えることから「虹の窓」と呼ばれているそうです。大きな円形の窓の向こうには緑の景色が広がっています。奥行きある仏間に、窓の格子を通って、心と体に心地よい風がふわっと吹いてきました。

祇王寺 吉野窓と絵本
窓の手前には小さな机があり、『祇王・仏』という絵本と洋書が置いてありました。お線香のやわらかな薫りに包まれて、静けさの中で「祇王寺」の歴史のページをめくります。

祇王寺の四季を感じて嵐山散策を

祇王寺パンフレット
(写真:祇王寺パンフレットより)

今回、春の祇王寺を訪れましたが、深い緑の苔庭と竹林が光輝く新緑の夏、苔庭が一面真紅に染まる紅葉の秋、水墨画のような雪降る冬と、四季を通して自然の美を見せてくれます。

ちなみに「祇王寺」と「大覚寺」の共通拝観券もあり、散策ルートもあるので立て続けに訪れてみるのもいいですね(徒歩約25分)。周辺には、「二尊院」「常寂光寺」「滝口寺」「あだしの念仏寺」と立ち寄りたい所ばかり。

祇王寺 椿と苔庭
川のせせらぎ、竹林の葉音としなる音、鳥のさえずりに耳をすませ、風に乗せるように、歴史に想いをはせて。平安の時代から現代まで、人々が安住した安らぎの地に身を置いて、四季折々の美しさに魅せられてみてはいかがでしょう。

祇王寺
住所:京都市右京区嵯峨鳥居本小坂町32
TEL:075-861-3574
拝観時間:9:00~17:00(受付終了16:30)
拝観料:大人300円・小人(小中高)100円
大覚寺・祇王寺(2カ寺)共通拝観券: 600円(大覚寺はお堂エリアのみ)
交通:JR「嵯峨嵐山駅」から徒歩約23分/京都バス「嵐山天龍寺前」から乗車、「護法堂弁天前」下車徒歩約7分
HP:http://www.giouji.or.jp/

[all photos by kurisencho]

PROFILE

kurisencho

kurisencho ライター

熊本県天草の凪いだ海と潮の香りの中で育ちました。東京に住むことで、新しいもの、昔からあるものの良さを再発見し、今まで見てきた世界が広がりました。デジタル化の中で生きるアナログの力を確信し、儚いけど美しい、人と風景の一瞬をとらえたいと思い写真を撮っています。

熊本県天草の凪いだ海と潮の香りの中で育ちました。東京に住むことで、新しいもの、昔からあるものの良さを再発見し、今まで見てきた世界が広がりました。デジタル化の中で生きるアナログの力を確信し、儚いけど美しい、人と風景の一瞬をとらえたいと思い写真を撮っています。

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