ゲリラ豪雨はどれだけ怖い?
ゲリラ豪雨については、筆者も苦い、というか怖い思い出があります。あるとき、小型船舶の免許を持っている兄の操縦で、筆者と兄、兄の子どもの一人(おい)、われわれの両親、さらにイヌ一匹で、海釣りに出掛けました。
お盆の時期で、空は夏晴れ。釣りが好きな兄と父は海釣りに熱中し、筆者とおいと母とイヌは、海の上で水平線や空を眺めて、楽しんでいました。
しばらくすると、遠くの西の空に、独立した巨大な積乱雲が見えます。「あの雲はそのうちに自分たちのほうに来る」と直感し、早めの避難を進言しましたが、釣りに夢中な兄と父は「わかった」と言いながら、マリーナに帰ろうとしませんでした。
積乱雲は案の定、近づいてきます。そのうち、遠くで雷鳴が聞こえました。兄と父は釣りを続けていましたが、にわかに空が暗くなり、雨がぽつぽつと降り始めます。その段階で、兄も父もマリーナへ引き返そうとしましたが、手遅れでした。
大粒の雨のカーテンが突然、前方から迫ります。船といっても小型なので、簡単な屋根があるだけで、逃げ込める船室はありません。
局地的大雨、いわゆるゲリラ豪雨で船は海上で揺れ、追って雷鳴と稲光が周囲でさく裂し始めました。
おいは泣き始めます。大人の筆者も怖くなり、暴れるイヌを組み伏せて、船内で姿勢を低くしました。正直、生きた心地がしなかったです。
結果として、無事にマリーナに帰れましたが、そのころはすでに天候が回復し、晴れ間が戻っていました。「怖かったでしょう」とマリーナのスタッフに心配されました。ゲリラ豪雨の危険性を体験した瞬間でした。
ゲリラ豪雨は5月や夏が危ない
ゲリラ豪雨とは以上のように、局地的に発達した積乱雲によって生じる自然現象をいいます。
気象庁の情報によれば、積乱雲の高さは十数キロメートル、水平方向の広がりは数キロメートルから十数キロメートルに達します。5月や夏の大気の状態が不安定な時に、単独の積乱雲が発達して、大雨やひょう、雷、竜巻などの突風が局地的に発生するのだとか。
要するに、ゲリラ豪雨はピンポイントで、いわゆる「バケツをひっくり返した」ような雨が、短時間で降って静まる自然現象なのですね。
先ほども書いたように、ピークは5月や夏。行楽シーズンとして、キャンプ、バーベキュー、川遊び、海釣りなど、屋外で遊ぶ機会が増える時期です。
今は新型コロナウイルス感染症の影響で、都道府県の境を超えるような旅行は自粛している人も多いと思いますが、住まいの近くにある山や海に出掛けたときに遭遇してもおかしくないですよね。
ゲリラ豪雨の予兆と対策は?
ゲリラ豪雨の被害に遭わないためには、どうすればいいのでしょうか?
外出する前であれば、インターネット、テレビ、ラジオなどで丁寧に天気予報をチェックし、注意報や警報の有無を把握する慎重さが大切だといわれています。
外出先で心配な空模様に気づいた場合は、スマートフォンを使って、例えば気象庁の「高解像度降水ナウキャスト」など気象レーダーによる雨域をチェックしたいです。
ただ、こうした情報収集は怠ってしまうかもしれませんし、情報が出ていても見逃してしまうかもしれません。その意味で、旅人らしく五感をフルに活用して、ゲリラ豪雨の予兆をキャッチしたいところ。
気象庁によれば、
- ・真っ黒い雲が近づく
- ・周囲が急に暗くなる
- ・雷鳴が聞こえる
- ・雷光が見える
- ・急にヒヤッと冷たい空気が吹き出す
- ・大粒の雨やひょうが降り始める
といった変化が、ゲリラ豪雨の兆しだといいます。
さらに、今いる場所でゲリラ豪雨が降っていなくても、川遊びをしている場所の上流で降り、急に水かさが増すなどの事故も考えられます。
- ・水かさが増えた
- ・水が濁ってきた
- ・流木や落ち葉が流されてきた
- ・警報装置のサイレン音が聞こえる
などは、上流で降った雨が一気に流れてくる予兆です。川に取り残されるなど、極めて危険な事態が迫っています。スマートフォンで気象レーダーによる雨域をチェックしながら、高齢者、幼児、障がい者などに配慮しつつ、速やかに避難したいです。
以上が、ゲリラ豪雨の基礎知識。山や海だけでなく、もちろん都市でも危険が迫っています。地下街の浸水、道路の冠水などがいつ発生してもおかしくないですから、予兆を感じたら、すぐに安全な場所に避難したいですね。
[参考]
雨雲の動き(高解像度降水ナウキャスト) – 気象庁
局地的大雨から身を守るために―防災気象情報の活用の手引き― – 気象庁
特集「雨の国・日本に暮らす」 – 国土交通省
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