世界最大級のワインとソーセージの祭り、ドイツの「ヴルストマルクト」

Posted by: Mia

掲載日: Aug 30th, 2020

ドイツはビールのイメージがありますが、実はワインも非常に有名です。毎年9月には世界最大規模のワイン祭りがフランクルト近郊の街で開催され、多くの人々がワインを楽しみます。その始まりは、さかのぼること約600年前!時代を超えて愛され続けるイベントの秘密をご紹介します。

ワイングラス とお祭り

世界最大級のワイン祭りとは?

ワイン祭り大通り

フランクルトから南に約110キロの位置にあるBad Duerkheim(バート・デュルクハイム)は、温泉の街(ドイツ語でバートは「温泉」の意味)として観光客から人気のある場所です。しかし、この土地がさらなるにぎわいに包まれるのは、毎年9月の第2、3週目の週末に開催される「Durkheimer Wurstmarkt(デュルクハイマー・ヴルストマルクト)」の期間。世界中のワイン愛飲家が集結し、おいしいワインと食事に囲まれた至福のひとときを楽しみます。

ソーセージ店

ドイツビールのお祭りである「オクトーバーフェス」のワイン版といえばわかりやすいかもしれません。しかし、オクトーバーフェスと異なるのは、ジューシーな香りを放つソーセージ店などの出店料が無料ということ。街中のレストランなどは祭りの期間中お店を閉めて、わざわざ広場に厨房を移して極上のフードを提供します。

150種類以上のワインが勢ぞろい

ワインレストラン

バート・デュルクハイムは12世紀からブドウの木で覆われており、この地方で最も古い葡萄畑でした。また最近、ローマ時代のワイナリーが発掘され、一部が復元されています。そこにはブドウを踏んでいた溝がそのまま残っており、2000年前にローマ人が現在と同じ品種のブドウを栽培していたことが科学者によって明らかにされています。

ワイングラス

ワイン祭りでは、2000年前と同じ品種のブドウも使用した地元のワインが勢ぞろい。約40種類の歴史的なワイナリーから150種類以上の地元産ワインが提供され、ドイツワインで最もポピュラーなブドウ品種のリースリング、ピノ・ノワール、セクト(スパークリングワイン)、アイスワイン(デザートに最適なアイスワイン)に至るまで、さまざまな味を堪能できます。

ワイングラス 2

そして、ワイングラスも特別仕様。通常は古典的なステムグラス(脚付きグラス)でワインを味わいますが、お店によっては半リットルの「Dubbeglas(ダブグラス)」で提供され、よりお祭り気分が楽しめるんです。ダブグラスとは、地元のお肉屋さんが発明した特別なグラス。外側に円形のくぼみが施されたもので、ソーセージなどの脂を扱った後でも安定してグラスを握ることができるように、というワイン好きのお肉屋さんらしいアイディアから生まれました。

グラス返却システム

グラスはワインを飲んだ後にお店へ返却すると、注文時に支払ったグラスデポジット料金(約2ユーロ)を返してくれる仕組みもあります。

さらに、地元料理の多くにはワインが使用されており、ザワークラウトを作る酢の代わりやハンバーグのミンチを湿らせるため、仕上げのソースなど、ワイン試飲以外の方法でもワインを味わうことできます。

ワイン祭りの起源は約600年前

ワイン祭りパンフレット

今では、世界最大規模のワイン祭りとなったデュルクハイマー・ヴルストマルクトですが、その始まりは12世紀にまでさかのぼります。当時、この街の丘に聖ミヒャエル礼拝堂が建設されたことで、住民たちは礼拝堂にソーセージやワインなどの食べ物を手押し車で運び、奉納していました。その後、聖ミヒャエルの日である9月29日に多くの礼拝者たちが巡礼するようになり、地元の生産者たちは彼らに自分たちの生産物を販売するようになったのです。

聖ミヒャエルの日(聖ミカエル祭)といえば、旧約聖書や新約聖書に登場する天使の名前を冠した祝祭で、現在もイギリスで祝われています。中世ヨーロッパ時代より9月29日は聖ミヒャエルに敬意を示す日であると同時に、農業従事者にとっては収穫した作物量に応じて賃金を得た日でした。そのため、聖ミヒャエルは農業の守護者という側面も持ち合わせています。

日本では馴染みの薄い聖ミヒャエルですが、意外な部分で日本との関連もあるんですよ。日本でキリスト教(ローマ・カトリック)を初めて伝え広めた人物として有名なフランシスコ・ザビエルは、日本での布教を許可された日が9月29日だったことから、日本の守護者は聖ミヒャエルだとみなしていたといわれています。

15世紀中頃になると生産物を販売していた場所が手狭になり、現在のワイン祭り会場へ移転。規模が拡大するのと同時に教会が市場の秩序を保つため、教会のお祭りへと変化させました。さらに、市場は「自由市場」とされていたため、外国人商人も自由に商品を売ることが許されており、並ぶ商品は家庭用品から羽織物、家畜に至るまで多岐にわたりました。

世界最大のワイン祭りへ

カリーヴルスト

19世紀初頭にはラインハルトバーン(鉄道)が開通し、より多くの訪問者がワイン祭りにアクセスしやすくなりました。祭りの名前も「ミヒャエルシュマルクト」から、現在の「ヴルストマルクト」へと変更され、よりエンターテイメント性の高い内容へと移り変わります。「ヴルストマルクト」とは直訳すると「ソーセージ市場」の意味。時期同じくして、ドイツのファストフードであった大量のソーセージがワイン祭りで消費されたことから、その名で呼ばれるようになりました。

ソーセージ店外観

1949年には、「ソーセージ市場に適している」とされるワインだけが提供できるガイドラインを導入。こうして、ワインと農業の見本市からワインとソーセージで有名なお祭りへ成長するのに時間がかかりませんでした。

フード

期間も5日間では足りず、1985年に9日間へ延長。連日、小さなワインスタンドから大規模なワインホールまで、にぎやかな人々の笑い声とジューシーなソーセージの香りが充満します。

また、1988年には従来の聖ミヒャエル礼拝堂の近くで開催されていた市場のルーツに戻ろうと、人々が新たな礼拝堂建設に着手。1990年には完成し、再び祭りの地に礼拝堂が鎮座することとなりました。

文学からアトラクション、花火まで

アトラクション

デュルクハイマー・ヴルストマルクトの主役はもちろんワインですが、ワイン以外にも楽しみがたくさん用意されているんです。

ライドアトラクション

1995 年以降に始まった方言の詩人たちによる文学のコンテストや、子どもから大人まで夢中になるアトラクションの数々。観覧車に乗れば、最高の景色を眺めることもできます。

音楽家

さらに、ドイツの伝統的な音楽がブラスバンドによって演奏されたり、ポップスのヒット曲などがテント内で演奏され、訪れた人々が陽気に歌い踊っていたりします。この光景を眺めているだけでも楽しく、気軽にドイツらしい雰囲気を味わうことができます。また、最終日には色鮮やかな大輪の花火が夜空を彩り、大熱狂のまま祭りは幕を閉じます。

ワインスタンド

ドイツの一地域で始まったお祭りで、ここまでドイツの歴史や人々の文化を生き生きと表現しているものは珍しいでしょう。ワイン、美しい景色、彼らの陽気な性格、その全てが祭りに詰まっており、気づけば隣の人と腕を組み、愉快な音楽に合わせてグラスを鳴らしているかもしれません。

■参照
https://edition.cnn.com/travel/article/germany-wurstmarkt-wine-festival-oktoberfest/index.html
https://www.regionalgeschichte.net/pfalz/bad-duerkheim/einzelaspekte/der-bad-duerkheimer-wurstmarkt.html

BAD DÜRKHEIM’S WURSTMARKT
開催日:毎年9月の第2、3週目の週末
場所:Bad Duerkheim
住所:Kurbrunnenstraße 14, 67098 Bad Dürkheim, Germany
電話:+49 6322 935-140
公式HP:https://www.bad-duerkheim.de/kultur-tourismus/

[All photos by Mia]
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PROFILE

Mia

mia ライター

国際中継やLIVE撮影の仕事を経て、フリーライターに。音楽と旅が人生の舞台。忙しい日々に埋もれた「ワクワク」を掘り起こしてイラストと共にお届けします。旅の醍醐味は旅先で友だちを作ること。国際結婚を経て、ドイツへ移住(予定)元ディズニーキャスト。

国際中継やLIVE撮影の仕事を経て、フリーライターに。音楽と旅が人生の舞台。忙しい日々に埋もれた「ワクワク」を掘り起こしてイラストと共にお届けします。旅の醍醐味は旅先で友だちを作ること。国際結婚を経て、ドイツへ移住(予定)元ディズニーキャスト。

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