寺院装飾が散りばめられた唯一無二の居心地
京都中心部の寺町通りに2020年9月に開業した「三井ガーデンホテル京都河原町浄教寺」。なんと日本初ともいえる“ホテルの中にお寺があるホテル”なのです。参道ともいえるアプローチを進んでエントランスを抜けると、雨に濡れた石畳みを思わす広いロビーが広がり、照明の落とされた天井高約7mの大空間に、香老舗松栄堂のお香がふわりと香ります。
ちょっとホテルとは思えないような不思議な空間。金屏風・亀・獅子・木象・・・モノトーンでまとめられたホテルには、500年以上の歴史をもつ浄教寺で使われていた意匠が散りばめられているのです。
「三井ガーデンホテル京都河原町浄教寺」は、人口減少や檀家離れが進む中、寺院とホテルが一体となり伽藍再建・寺院再生を目指したもの。まさしく“ホテルの中にお寺がある”のです。それを裏付けるように、ロビー脇の窓からは金色に輝く本堂を眺めることもできます。
毎朝6時40分から行われる所要30分ほどの宿泊者限定「朝のおつとめ」(人数制限あり・中止日あり・300円)に参加すれば、京都らしい新鮮な体験に加え、絢爛豪華な本堂を見学することもでき、御朱印(300円)をもらうことも可能です。
浄教寺のご本尊は阿弥陀如来。本堂の上には9階建てのホテルの客室棟があるのですが、この阿弥陀如来の上だけは、天空まで遮るものなく続いているとかいないとか。
さりげなく京都らしさを感じる和の雰囲気
エレベーターの内装も変わっています!伽藍をイメージさせるような金箔風のデザイン。
エレベーターホールは、浄教寺で使われていた掛け軸などがアクセントに。各フロアによって異なるあしらい。
灯籠のような客室サインに誘われてドアを開ければ、漆喰風の白壁からなる落ち着いた客室が広がるのですが・・・
こ、こ、これは!なんとも斬新なレイアウト。手水鉢を思わせる真白なシンクに迎えられます。
遠目から見ると、上に行くに従って広がるフォルムが、蠟燭のようにも見えてくるから不思議です。
全167室のうち一番多いモデレートツインは、広さ約24平方メートル。ハリウッドツイン仕様のベッドには、身体を優しく包み込むサータ社製のマットレスを使用。
ランダムに桟が入る障子も粋です!
宿泊したのはコーナールームだったので、2面採光の窓が設けられ、広さ以上のゆとりある空間。床面から立ち上がる大きな窓もゆとりある間取りにひと役買っています。
京都らしい和の雰囲気は、一保堂茶舗の緑茶やほうじ茶などにも。
ほとんどの客室にバスタブはなく、シャワーブースのみ。普通のシャワーに加えてレインシャワーも備えられているのでリラックスできますが、せっかくなら幻想空間へと誘われる驚愕の大浴場へ!
お風呂に広がるシアターのようなドラマチックな幻想世界
男女別に設けられた大浴場はホテルの2階。赤と青の暖簾の向こうに広がっています。
白木が美しい清潔感たっぷりの脱衣場を抜けると・・・
墨絵アートがスクリーンに映し出されるような、シアターを思わせる真っ暗な空間。到底お風呂からは想像できないようなドラマチックな大浴場が広がります。
白い玉砂利が敷かれたアプローチ・手水鉢を思わせるオブジェ・墨絵・・・初めて出会うお風呂空間には、裸でちょっととまどいそう。
心静まる薄明りに映し出された湯船に身を沈めれば、温泉ではないのですが、「極楽極楽」と口にしてしまいそう!あれ、もしかして・・・ここは極楽浄土ということ?そういうわけではありませんが、瞑想をテーマにしているんだとか。耳を澄ませば、ホテルオリジナルBGMから風や鐘の音も聞こえてきます。
こちらは、女性用の大浴場。ほぼ同じような造りですが、男性より広い造りで墨絵が異なります。女性は「輪廻」、男性は「無常」。滞在中何度か足を運んだのですが、この幻想空間には驚くばかり!後客も初めて見る空間に“あれッ~”と溜息とも感嘆ともとれぬ声で入ってきます。
揺れる湯面に光と影を落とす幻想の瞑想世界に包まれるお風呂は、“ホテルの中にお寺があるホテル“の真骨頂といえる静寂のパワーがみなぎっています。
※2020年11月現在、新型コロナウイルス感染症対策のためサービス体制や料理提供方法などが通常と異なることがあります
[All Photos by (C)tawawa]
TAI WATANABE ライター・エディター・ディレクター
10代のころ、自転車でメキシコ・グアテマラを縦断し多くのことを学ぶ。それをきっかけに情報誌・旅行誌の取材を通じて、中南米・カリブ海を中心に世界各国で豊富な取材を経験。海外を見てきたからこそ日本は大好き! 紙とWEB、ふたつの媒体特性に精通した複眼的視点を持っている。
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