見どころいっぱいの霧島にオープンした星野リゾートの新施設
羽田空港から2時間ほどのフライトで鹿児島空港へ。そこからレンタカーで30分ほど走り、神々が宿るといわれる神話の大地「霧島」にやってきました。九州屈指のパワースポットとして知られる「霧島神宮」や誰もが一度は目にしたことがあるカフェオレでおなじみの「高千穂牧場」など、見どころも満載。
正直に言うと、霧島はもっとずっと遠いイメージをしていたのですが、空港からのアクセスが良いこと、魅力的なスポットが多いことにも驚きました。
「界 霧島」は、日本初の国立公園として知られる「霧島錦江湾国立公園」の中にあります。晴れていれば、全49室の客室から霧島高原や錦江湾、もくもくと煙を上げる桜島を見渡すことができる全室“桜島ビュー”の大パノラマは想像以上。大きな窓から見る景色は、まるで絵画のような美しさです。
国立公園内にはたくさんの動物や植物が生息しており、客室の窓からシカがエサを食べているところを目撃。宿の至る所から自然の景色を眺められるのは、環境の保護に努め、自然との共存を大切にしているからこそ。どこまでも広がる水平線のスケールの大きさに圧倒されるとともに、時間や天候によって変化する自然の表情から目が離せません。
鹿児島の伝統工芸と文化を存分に感じるご当地部屋
「界」ブランドでは、地域の伝統工芸や文化を存分に感じられる「ご当地部屋」が存在。限定3室の「薩摩シラス大地の間 特別室」は、3面ガラス張りの高千穂峰が間近に見える贅沢なお部屋。
霧島連山を表現したヘッドボードには、室内の温度や湿度を一定に保ってくれる効果や抗菌性もある火山噴出物の“シラス”を使用。ほかにも薩摩和紙を用いた照明や大島紬の壁飾りなど、客室の至る所に地域の伝統工芸品が設置されており、まるで小さな美術館のようにワクワクします。
ルームキーには鹿児島の伝統工芸品「薩摩ボタン」を採用。この薩摩ボタン、日本文化のひとつとして多くファンがいましたが、繊細な技法のために作り手が途絶えてしまった過去も。近年まで“幻のボタン”ともいわれてきましたが、絵付師の室田志保さんの手により現代に蘇った美しい絵柄は必見です。
全館Wi-Fi完備でパソコン台やライトなどのワ―ケーショングッズも充実(数量限定のため、当日フロントにお申し込みが必要です)。客室の真ん中には大きなデスクがあり、こんな素敵な空間で仕事をしたらインスピレーションが湧いてきそう。コロナ禍で需要が高まるワーケションにも対応しています。
プライベートな空間で、のんびりと温泉に浸かりながら癒やしのひとときを味わえる「露天風呂付き和室」も人気。静寂に包まれた雄大な自然や桜島の絶景を見渡すことができ、こんな贅沢な露天風呂は、ほかではなかなか味わえません。
スロープカーで行くユニークな絶景温泉
温泉をより楽しむには、鹿児島にゆかりのある書籍のそろうトラベルライブラリーで毎日開催される、温泉をより楽しむための「温泉いろは」への参加がおすすめ。宿泊者は無料で参加することができ、“湯守り”と呼ばれるスタッフから入浴効果を高めるための入浴時のポイントや泉質や効能を学ぶことができます。ちなみに「界 霧島」では、「あつ湯」と「ぬる湯」の2つの湯を交互に入浴をすることで、血行を促して体の芯まで温めることができるそうですよ。
客室棟から温泉のある湯浴み小屋までは、ガラス張りのスロープカーというユニークな移動手段。ボタンひとつ、セルフで運転することができ、冒険心をくすぐられます。
スロープカーを降り、すすき野原に佇む湯浴み小屋の中に入ると、源泉かけ流しの「あつ湯」と温泉成分を流す「ぬる湯」があります。
霧島の弱酸性の硫黄泉は、湯上がりの肌に透明感と明るさをもたらしてくれる美肌湯ともいわれています。熱すぎず、ぬるすぎず、快適な温度となっており、からだの芯まで温まるので、上がったあともぽかぽかが続きます。
内風呂の奥にある絶景露天風呂から見るすすき野原越しのダイナミックな桜島の景色は、開放感抜群。あまりの素敵な空間に、滞在中何度も足を運んでしまいました。
混雑回避アプリで湯浴み小屋の混み具合がわかるので、人混みを気にせず満喫できるのもうれしいポイントです。
湯上がり処には、この土地ならではの飲み物、黒酢ドリンクや霧島茶に加え、アイスキャンディーが用意されているので、ドリンクを片手にテラス席に座ってのんびりくつろぐ贅沢な時間もしあわせなひととき。
神話の大地「霧島」の理解を深めるご当地楽
ロビーにある9本の逆鉾(さかほこ)のオブジェは、日本に古くから伝わる神話「天孫降臨」の中で、この高千穂峰に降り立ったとされる9人の神様にちなんだもの。施設内のしつらえや食事、湯浴みに至るまで、この土地ならではの文化とおもてなしをさり気なく取り込むというこだわりが垣間見えます。
「界」が各地で展開する伝統工芸や伝統芸能に触れられる体験プログラム“ご当地楽”もそのひとつ。「界 霧島」では、神話「天孫降臨」のストーリーを表現したオリジナルの演舞「天孫降臨ENBU」を毎晩開催。スタッフが太⿎や神楽鈴とともに力強く舞う姿は迫力満点!これを無料で楽しめるなんて、なんて贅沢なんでしょう・・・!
「食の宝庫」鹿児島県の食材を贅沢に味わう黒豚しゃぶしゃぶ会席
料理も「界 霧島」に宿泊する楽しみのひとつ。プライベート感を重視した半個室でのんびりと鹿児島県ならではの食文化を存分に味わえる料理を楽しむことができます。夕飯の会席料理は、鹿児島名物の餅菓子「あくまき」を雲丹とアレンジした先付けからスタート。
「宝楽盛り 八寸」は、フォアグラの枝豆茶巾、海老の小袖寿司など、旬の食材を華やかに盛り付けた遊び心が感じられるメニュー。ひとつひとつの料理が丁寧に作られており、食べるのがもったいないくらい!
削りたてのかつお節をこれでもか!というほど、たっぷりとアゴ出汁の鍋に投入した「黒豚しゃぶしゃぶ」は、鹿児島県の名産品として知られる黒豚を使用。美しく盛り付けられた豚バラ肉は、“薔薇”と豚“バラ”肉にかけているそうですよ。素材の旨みが引き立つ上品な出汁の鍋と、さっぱりとした脂身までおいしい黒豚は、なんとも贅沢な味わい。
薩摩焼をはじめとした器も必見です。「食の宝庫」でもある鹿児島県の食材を贅沢に使い、繊細に整えられた品々は、まさに至極の逸品ぞろい。大満足の夕食となりました。
お部屋にもどった後は、焼酎とラムレーズンアイス最中が入った「だれやめセット」でほっと一息。「だれやめ」とは、南九州の方言で、焼酎を飲む晩酌のこと。 だれ(疲れ)をやめる(とめる)というのが由来だそうです。
朝からしあわせな気分に浸れるやさしい味わい「ご当地朝食」
大きな窓から差し込む朝日に照らされて目覚める朝は心地よく、澄んだ空気にはっきりと浮かび上がる自然を堪能できるしあわせをかみしめていました。
素敵な朝を迎えられる郷土の調理法を取り入れた「ご当地朝食」は、りんご黒酢ジュース、鶏肉と野菜を使った具だくさんの郷土料理「さつま汁」。そして、さつま揚げってこんなにおいしいのか・・・!と驚いた3種類のさつま揚げなど、朝から元気になれるやさしい味わいの料理が並びます。
とくに、削りたての鰹節をごはんやおぼろ豆腐にかけ、薩摩醤油をたらしていただくのが、おいしくて印象に残っています。薩摩醤油は、甘さとまろやかさが調和した味わいが気に入り、お土産に購入して帰りました。
また訪れたいと思わせてくれるおもてなし
鹿児島の歴史や文化、自然にまつわるユニークな本と出会えるトラベルライブラリーでは、「お部屋以外にもくつろぎの場所を」という思いから、コーヒーや紅茶、霧島茶など無料で提供。色とりどりのカップは、桜島の灰から作られたものだといいます。
客室や温泉はさることながら、ホスピタリティあふれるおもてなしも魅力的。星野リゾートのスタッフは、フロントやお料理のサービス、客室清掃まで、複数の役割を担っています。「先ほど料理をサービスしてくれたスタッフの方がフロントにいる・・・!」と驚くこともありますが、一貫性のあるきめ細やかなサービスを提供でき、型にはまらない面白さがあります。日本中から“性格が良い人”を集めたのではないか?と思うくらい素敵な方ばかりで、スタッフの方との会話も楽しみのひとつ。館内の伝統工芸品の裏話やサービスが生まれたきっかけ、周辺の観光情報など、丁寧に教えていただきました。
温泉もお部屋からの絶景もおいしい郷土料理も、思い出すだけで「こんな素敵な宿をずっと探していた・・・!」と高まる気持ちを抑えきれません。女子旅から子連れのファミリー、そして親との旅行など、幅広い世代で鹿児島の魅力を存分に楽しむことができる「界 霧島」。1泊2日の旅でしたが、文化を体験することでぐっと親しみがわき、また必ず訪れたいと強く思うほど大好きな場所となりました。
住所:鹿児島県霧島市霧島田口2583−21
電話:0570-073-011
チェックイン/アウト:15:00/12:00
公式サイト:https://kai-ryokan.jp/kirishima/
[All Photos by Sakiko Kubo]