
今宮神社の参道にある門前茶屋

茶人・千利休ゆかりの禅寺「大徳寺」境内の北側にある「今宮神社」。紫野(むらさきの)という美しい名で呼ばれるこの界隈は、閑静で独特の落ち着きがあります。

その東門を抜けると、

「あぶり餅」のお店2軒が向かい合っています。この参道は「今宮神社」の境内なのだそうです。楼門から入るものと思っていましたが、本来の参拝はこの参道を通って東門から入ります。雨に濡れた参道は、しっとりとして趣があります。
平安時代から続く「一文字屋和輔」

参道を歩くと、「おこしやす~」「ようお参りやす~」とはんなりとした京ことばで両店から声をかけられます。
今回は、平安時代創業という「一文字屋和輔(いちもんじやわすけ)」、通称「一和(いちわ)」に入ってみました。1020余年続く老舗中の老舗です。現在25代目の店主が営んでおられます。
風情ある建物の古い部分は江戸時代の元禄年間(1700年前後)、新しい方は大正時代のもので、店舗は京都市の景観重要建造物に指定されています。
長保2年(1000年)に疫病退散のため、今でも今宮神社で催されている「やすらい祭」が行われました。その際、このあぶり餅を参拝者にふるまったのが起源とされています。そのため厄除けの菓子として長く親しまれています。
すぐ南にある大徳寺にゆかりある茶人の千利休が、この餅を茶菓代わりに使ったというエピソードもあります。
京都市の景観重要建造物指定の店舗

軒先の畳の席にしました。席の後ろに格子で蓋をされているのは、平安時代から続く大きな井戸です。長いこと使われていたそうです。

向かいにある江戸時代創業の「かざりや」がよく見えます。江戸時代にタイムスリップしたかのような一角です。歴史の香り漂う通りが、いつまでもこのまま残されてほしいものです。

店内にはお庭を望める座敷席があります。こちらが一番贅沢な席でしょう。

掛け軸のある座敷席では、ほっこりとくつろげます。

表には椅子席もあります。門前茶屋らしい風情を醸し出しています。
誰にでも親しまれる素朴な味わい「あぶり餅」

席について注文すると、女将さんが店頭できな粉をまぶした一口大のお餅をあぶってくれます。メニューは「あぶり餅」500円(税込)のみ。炭火を使うのは昔からの手法です。

京都の白味噌を使ったほどよい甘さに少し塩気のある、とろりとした特製だれにお餅を絡めています。小ぶりで食べやすいのでパクパクといただけます。香ばしさとお餅のほど良いもちもち感、甘辛いタレのハーモニーがたまりません!
本当に素朴な味ですが、全て自然の素材を活かした手作りであぶりたて、近くを通ったら思わず立ち寄ってしまうクセになるおいしさです。平安時代には白味噌のみで味付けをし、砂糖が手に入りやすくなった江戸時代中期から、今に続く味になったとか。現代人にも親しまれる自然な味わいです。
持ち帰り用は3人前1,500円(税込)から包んでくれます。保存料は不使用なので、当日中にいただきましょう。

お茶はこんなに大きな急須でたっぷりといただけます。畳の上であぶり餅の味わいと緑茶をいただいていると、心の底からほっこりします。

観光で京都を訪れるのなら、一度は足を運んでみてほしいお店です。紫野界隈の散策、今宮神社や大徳寺参拝の後に一服すれば、日本の歴史と風情あふれる美しさに浸れるはずです。
一文字屋和輔
住所:京都府京都市北区紫野今宮町69
定休日:水曜日(1日、15日、祝日が水曜日の場合は営業、翌日休み)
営業時間:10:00~17:00
駐車場:あり(会計時に60分無料の駐車券をいただけます)
※新型コロナウイルスの影響で営業時間の変更や臨時休業の場合があります。
[All photos by Yo Rosinberg]
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ロザンベール葉
主に横浜・東京で育ち、縁あって京都に在住。美術書出版社勤務を経て、フリーランスライター歴20年余り。フランス人のパートナーと共に、フランスとイタリアを中心に気ままな旅をする。海はどこも好きだけど、「地中海」という響きに憧れる。マイペースが好き。
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