タイムスリップしたかのようなノスタルジックな空間に癒やされて
JR東海道本線「湯河原」駅から無料送迎(要予約)があり、閑静な高台にある「ゆがわら風雅」までは車で10分ほど。昭和初期に建てられた旅館は、まるでタイムスリップしたかのようなレトロな佇まい。隅々まで丁寧に手入れされ、清潔で風情あふれる宿でした。
多くの芸術品がちりばめられた館内は、まるで美術館の中を歩いているような気分に。木に対するこだわりが随所に見られ、客室や廊下、風呂にも木造の浴槽が使われていました。
チェックインの手続きは、事前に宿泊者情報を入力する「スマートチェックインサービス」がスムーズ。ウェルカムドリンクのほうじ茶と湯河原名物のきびもちでほっと一息つきながら、セラピスト監修のカラーセラピーのサービスを受けることができます。
テーブルの上に並べられた5本のカラーボトルの中から1つ選ぶと、その色に合った滞在の提案アイテムが入った巾着袋をいただけます。中には、ティーバッグやフェイスパックが入っており、滞在をたのしくさせてくれる工夫が。
支配人・接客スタッフに女性が多く、細やかなおもてなしも魅力。宿泊者は無料でレンタルできるかわいい浴衣のサービスもあります。
温泉露天風呂付きスイートルーム「風雅」
客室は全17室。落ち着いた雰囲気の和ベッドルームから、温泉露天風呂付きスイートルームまで、予算や目的に合わせたさまざまなタイプの客室を用意。
今回宿泊した温泉露天風呂付きスイートルーム「風雅」は、館内に1室しかない96平米のスイートルーム。定員4名の広々とした客室には、くつろげるスペースがたっぷり。友人や家族との旅行でも、プライベートな空間があるので、ゆったりとした時間を過ごすことができます。
ベッドは、多くのラグジュアリーホテルが客室に備える「シモンズ」社製を採用。窓を大きくとった部屋からは、緑豊かな湯河原の山々が望め、開放感たっぷり。窓を開ければさわやかな風を感じることができます。
誰にも邪魔されずにのんびり温泉ステイを満喫できる露天風呂付客室は、究極のおこもりステイを叶えてくれます。檜の香りが心地よく、滞在中、何度も入ってしまいました。
湯河原温泉は、夏目漱石や芥川龍之介など多くの文豪を魅了してきた名湯。まろやかで柔らかいお湯は、ナトリウム塩化物・硫酸塩泉、Ph値8.5弱アルカリ性。湯河原温泉源泉かけ流しのお湯を贅沢に堪能することができます。
スイートルームにはこの露天風呂のほかにシャワー付きの内風呂もあり、気分に合わせてお風呂を楽しんでみては。
大浴場「風雅のゆ」には、露天風呂と内湯が。無色透明でやや塩分を感じる湯河原温泉は、「美人の湯」と評され、まるで化粧水のようななめらかさ。温まりやすく冷めにくいのが特徴で、短い時間でも身体の芯から温まります。源泉からやや離れた位置にあるため、泉質はそのままに、まろやかで優しいお湯が評判です。
ジャンルにとらわれないコース料理は、お箸でいただくスタイル
温泉で身も心もほぐれたら、夕食は自慢の鉄板焼きをライブキッチンで。ジャンルにとらわれないコース料理は、お箸でいただくスタイルです。
美食の温泉街として有名な湯河原の畑、海、山をテーマにしたカルパッチョやフリットなど、美しく盛り付けられた前菜からスタート。神奈川県産野菜のラタトゥイユ、駿河湾産釜揚げシラスと桜えびのブルスケッタなど、湯河原や伊豆の地産食材にこだわり、なんとも繊細で華やかな見た目に心躍ります。
「湯河原の夜明け~パリの夕暮れオマージュ~」と名付けられたスープは、コンソメスープ、白だしのジュレ、かぼちゃのポタージュが層になった爽やかで夏らしい一品。
肉と魚がダブルメインというボリューム満点なラインナップ。伊豆名産の金目鯛は、うっすらとのった脂が微かな甘さを感じさせてくれ、ジューシーな帆立のポワレとの相性が抜群でした。
肉料理はオープンキッチンの鉄板で仕上げる国産牛のステーキ。ステーキを一切れずつ岩塩プレートで炙ることで、素材の旨味を引き出し、しっかりと塩味をつけてくれる贅沢な味わい方。
大きなサイフォンで抽出する出汁と大葉と茗荷の焼おにぎりのリゾットは、和洋折衷、見た目も楽しい一品。雑味が少なく澄んだ味わいの出汁と香ばしい焼きおにぎりは、コースの締めにぴったり。芳醇な香りと旨みを味わいに酔いしれます。
デザートは、日本庭園が望めるカフェ&ライブラリー 「牡丹」へ移動して、箱根登山鉄道「強羅駅」に店を構える評判のケーキショップ「カフェ・ド天翠」のシェフパティシエ若山料理長によるデザート盛り合わせ。湯河原レモンを使用したこだわりのスイーツやリキュールを入れていただく大人のコーヒーは、湯河原の旅の夜を彩ります。
温泉宿を訪れる際、客室やお風呂、食事も大切ですが、宿でのんびり過ごすには、パブリックスペースの快適さも重要なポイント。
こちらのカフェ&ライブラリー「牡丹」では、15:00~18:00、翌6:00~10:00まで、コーヒーや紅茶が無料でいただけます。長い時を経て、受け継がれた有田焼の美しいカップは、どれにするか選ぶのも楽しい時間。
写経や大人のぬりえなど、時間を忘れて没頭できるサービスも。無心で取り組むのは、意外と良いストレス発散に。本棚には懐かしのコミックやなかなかお目にかかれないレトロな雑誌など、1,000冊以上の本・雑誌・マンガが置かれており、宿泊者を飽きさせることがありません。
カサブランカの宿として名を馳せた旧施設「三枡屋」。レストランの奥にあるギャラリー「ミマスヤ」では、その歴史や由来を展示するとともに、映画『カサブランカ』を上映。ロマンチックなストーリーに想いを馳せて、過ごす湯河原の夜は、日ごろの喧騒を忘れて非日常を味わうのにぴったりです。
一日のスタートを「おいしい」から始められる絶品朝ごはん
日常では慌ただしく手軽に済ませてしまいがちだからこそ、ゆったりと時間をかけていただきたい旅館の朝食。畑の皿・山の皿・海の皿・洋の皿からなる小さなおかずのプレートに、トマトの印籠蒸し、目玉焼き、静岡県産厚切りベーコンとソーセージ、釜炊きご飯、白味噌とチーズのお味噌汁です。
ご飯は朝食の時間に合わせて炊き上げられるため、炊き立てホカホカを味わうことができます。一日のスタートを「おいしい」から始められる絶品朝ごはんで、しあわせな気持ちになること間違いなし。
ひとりでも大切な人と訪れても、多彩な楽しみ方ができるおこもりステイにぴったりな宿。古き良き雰囲気ときめ細かいおもてなしが光る「ゆがわら風雅」には、「またここに帰ってきたい」と思う、とっておきの時間がありました。
[All photos by Sakiko Kubo]