
多種多様な動植物が生息する自然の宝庫

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三方を丘陵に囲まれ、東は太平洋に接する霧多布(きりたっぷ)湿原。約3,000平方メートルと国内有数の広さを誇る湿原です。夏から秋にかけては約300種の花々が湿原を彩ることから「花の湿原」という別名を持つほど。数々の希少な野鳥が生息し、その自然環境の豊かさから1993年にはラムサール条約登録湿原地に認定されています。
大自然に抱かれるペンション

“霧多布の玄関前(porch)”という意味が込められた「ペンションポーチ」。佇むのは霧多布湿原と太平洋のあいだ。まさに大自然のど真ん中といえるロケーションです。周囲の環境と美しく溶け合う、有機的な佇まいが印象的。
オーナーを務めるのは浜中町出身の瓜田勝也さん。昆布漁家に生まれ育ち、長らく漁師をしていたものの、東京出身移住者の「湿原は宝物だ」という一言から地元の魅力を再発見。「霧多布の自然を発信したい」という熱意から一大決心で漁師を辞め、1986年、ペンションを開業するに至ったのだそう。

目の前に広がる霧多布湿原。木道も整備されていて湿原内を散策することもできます。草木の香りを含んだ空気が心地よく、深呼吸するとカラダの隅々まで浄化されるのを実感しました。
木の温もりがゲストを迎える客室

客室は湿原側のツインルーム、海側のシングルルームの全4室。壁や天井など空間全体が木の温もりに包まれ、身も心もほっと和みます。“絵画を鑑賞するように眺めてほしい”という思いを込めて作られた窓からは湿原を一望。きらめく満天の星空を眺めながら寝落ち・・・なんて贅沢体験も!
ベッドリネンはパリッと仕上げられ、タオルはふんわり。バス・トイレは共用ですが、掃除が行き届いていてとても清潔。バスタブはゆったりサイズで快適でした。

中2階はミニラウンジに。北海道にゆかりのある画家の作品が展示され、多彩なアートとの出合いも楽しめます。

1階はダイニングスペース。オーナー選りすぐりのジャズが空間をシックに彩り、居心地の良さもひとしおです。
土地の恵みがひしめく料理の数々

料理はオーナーの奥様が担当。メニューはこちらのかわいらしい黒板に。地産地消へのこだわりも強く、できるだけ地元産の食材を使っているそう。

前菜はさんま南蛮漬け、タコと野菜のマリネ、鶏ハム、かぼちゃサラダなど。どれも驚くほど滋味深く、ひと口噛みしめるごとに素材の魅力を再発見できる味わいです。

牡蠣とホタテ、海老のアヒージョ。魚介のコクが溶け出したニンニクオイルはカリッと焼かれたバゲットとうれしいぐらいよく合います。

メインは秋鮭のソテー。旨味が濃厚な秋鮭は清涼感あるタルタルソースと絶妙なハーモニーに。キノコがたっぷり入ったお味噌汁は身も心もほっこりします。素材のおいしさを実感するとともに、すべての料理が大変丁寧に作られていることにも脱帽です!
地元の魅力を楽しく知れる上映会

夕食後はオーナーの瓜田さんによるスライド上映会を開催。霧多布湿原の魅力や自然の大切さが写真や資料ともに紹介されます。
豊かな植生や美しい景観から国内外から価値が認められている霧多布湿原。一方で周辺の民有地の開発による環境破壊が懸念されていたそう。そこで瓜田さんは地元の有志とともに湿原の保全を目的に、2000年「NPO法人霧多布湿原トラスト」を設立し、ナショナルトラストによる用地の買い取り、環境や動植物の調査といった活動を進めているといいます。

地元の歴史や産業についてのお話もありました。霧多布湿原からミネラル分が豊富に流れ込み、昆布の生育に絶好環境である浜中町。水揚げ量は全国の1割を占めるのだとか。驚いたのが昔の昆布漁風景。かつては馬と人間が協力して漁を行っていたようです。
湿原のみならず自然への造詣も深いオーナー。ユニークなエピソードとも繰り広げられるお話は実に興味深く、多くを学べた充実のひとときでした。

朝食は和定食スタイル。夕食同様に地元産の食材がふんだんに使われ、土地の豊かさを知れる内容です。北海道産米ゆめぴりかは一粒一粒がふっくらつやつや。口の中でほのかな甘みが広がります。
自然を探訪し、環境保護を学ぶエコツアー

ペンションポーチの特筆すべきは、大自然を体感できるエコツアー。“環境と観光をつなぐ”をテーマに、無人島ウォーキングや雪の湿原散策など多彩なツアーが用意されています。今回は琵琶瀬川カヌー下りツアーに参加。ジャケットや長靴も貸し出しされるので手ぶらでOKです。

霧多布湿原のほぼ中央を流れる琵琶瀬川。スタート地点周辺は川幅が狭いためススキが間近に迫り、想像以上にスリリング!

川幅が広くなったら本格的にオールを動かしていきます。水面を滑るように進んでいく感覚が最高に気持ちいい。

狭くなったり広くなったり。川幅の変化に富んでいるのも湿原カヌーの醍醐味です。カヌーでしか来られない場所にいるという特別感も相まって、心が一層高揚します。

しばらく進むと一気に視界が開けます。この日は風がほとんどなく、水面には空色のリフレクション。幻想的な雰囲気に包まれ、息を呑む美しさに包まれます。野鳥のさえずりや、風のざわめき、川のせせらぎ──。自然のBGMに身を委ねれば、気分が新鮮な潤いで満たされることでしょう。
豊かな自然を身近な感じながら、あたたかな手料理とホスピタリティーに癒やされる。次の北海道旅はとっておきのペンションで、スロートラベルな一日を過ごしてみてはいかがでしょうか。
[Photos by Nao]
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Nao ライター
メーカー、ITベンチャー勤務を経てフリーランスに。
学生時代から旅を続け、渡航国は現在50カ国。
特技は陸路国境越え。グルメレポート翌日に大学の最先端研究を取材したり、ロシア州知事にインタビューしたり。幅広い対応力とフットワークの軽さが自慢。日本ソムリエ協会認定資格ワインエキスパート保有。
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