【実は日本が世界一】西表島が最小?100頭の「イリオモテヤマネコの秘密」

Posted by: 山口彩

掲載日: Nov 13th, 2021

知られざる「実は日本が世界一」を紹介するトリビアシリーズ、今回は2021年7月に世界遺産に認定された西表島に注目。西表島は野生のネコ科動物が暮らす島として、世界で一番小さい島なんです。え、何だそんなこと?と思いますか? でも実はこれだけ小さい島にイリオモテヤマネコのような肉食獣が住んでいることが奇跡的なのだそう。国の特別天然記念物であり、絶滅危惧種にも分類されているイリオモテヤマネコ。特徴や生息数・生息地・食べ物など、生き抜くために進化したその秘密に迫ります。


環境省西表野生生物保護センター提供

教えてくれたのは星野リゾート 西表島ホテル「イリオモテヤマネコの学校」

西表石垣国立公園に位置する日本初のエコツーリズムリゾート「星野リゾート 西表島ホテル」では、宿泊者向けの無料イベントとして、「イリオモテヤマネコの学校」を開催しています。

ホテルスタッフがイリオモテヤマネコについての特徴を、クイズ形式で楽しく説明してくれるプログラムです。

>>>星野リゾート 西表島ホテルの宿泊レポはこちら

【イリオモテヤマネコの秘密その1】とにかく希少!


環境省西表野生生物保護センター提供

イリオモテヤマネコの学名は「Prionailurus bengalensis iriomotensis」、英語では「Iriomote Cat」です。

体長は50〜60cmほど。一見、家ネコと見間違えそうですよね。実際、昔からヤママヤーなどと呼ばれ存在は知られていたものの、家ネコが野良化したものか、新種かわからなかったそうです。正式に発見されたのは、1965年になります。

特筆すべきはその希少性。

その1 西表島にしかいない!
その2 国の特別天然記念物
その3 絶滅危惧種

 


環境省西表野生生物保護センター提供

推定生息数は約100頭(2008年調査結果)。コウノトリやトキと同じく、ごく近い将来に絶滅する危険性が極めて高いと考えられているグループに属しています。ジャイアントパンダやベンガルトラより希少で、その数は現在も減少傾向なんです。

そもそもイリオモテヤマネコは、氷期に大陸から渡ってきたヤマネコが、間氷期に戻れなくなり、西表島で独自の進化を遂げた動物。だから西表島にしか生息していない固有種なんですね。

【イリオモテヤマネコの秘密その2】チャームポイントはハート型の鼻


見た目の特徴は、目の周りが白く、耳が丸く、胴長短足でしっぽが太い。毛並みは黒みかかった濃い茶色でヒョウ柄に近い。チャームポイントは鼻の頭がハート型ということ。

生息地はかなり広範囲です。ヤマネコという名前なので山の中に住んでいるのかと思いきや、ジャングルや田んぼ、海岸線、マングローブ林など低地に生息しています。


剥製から忠実に再現された模型(星野リゾート 西表島ホテル)

とはいえ、地元の人でもなかなかイリオモテヤマネコには出会えないそうです。主に夜行性なので、日暮れ時や明け方に活発に動くのだとか。滞在中に出会えたら、ラッキーですね!

イリオモテヤマネコはあまり鳴きませんが、2〜4月の繁殖期には発情して鳴く声を聞くことができます。録音された鳴き声を聞かせてもらったところ、筆者はネコというより人の悲鳴のように聞こえましたが……。

4〜6月の出産・子育て期を経て、夏には離乳し、秋には子ネコが独り立ちします。

【イリオモテヤマネコの秘密その3】ジャングルの王者!カメは甲羅ごと食べる

絶滅危惧種というとか弱いイメージもありますが、イリオモテヤマネコは実は西表島の食物連鎖のトップに君臨する、ジャングルの王者です。泳ぐこともできます。


環境省西表野生生物保護センター提供

トカゲ、ヘビ、カエルやコオロギなどの昆虫、オオコウモリ、鳥類、テナガエビなどさまざまな動物を食べます。カメは甲羅ごと食べます。糞からイノシシの毛が発見されたこともあるそうです。


イリオモテヤマネコのおやつにもなるマダラコオロギ

このように何でも食べるイリオモテヤマネコですが、世界的に見るとこれは稀なことなんです。
ヨーロッパヤマネコ、ツシマヤマネコなどを見ても、通常ヤマネコは哺乳類を餌にすることが圧倒的に多い生き物。イリオモテヤマネコの食の多様性は、哺乳類があまりいない西表島で生き抜くために進化した結果なのです。

【イリオモテヤマネコの秘密その4】ロードキルが深刻な問題に

低地に住んでいるイリオモテヤマネコは、道路に出没することも。車に轢かれた生き物を餌にするためだとか、アスファルトの上の方が狩りをしやすいだとか言われますが、2021年はすでに5件もの交通事故があり、希少なイリオモテヤマネコの数がさらに減る原因となっています。

もしイリオモテヤマネコが絶滅してしまったら……天敵がいなくなった鳥類やイノシシの数が増え、それらの餌であるカエルやトカゲなどが減少し、さらに食物連鎖の下層にいるエビや昆虫の数が爆増。

そうなると、農作物が昆虫に食べられてしまうなど深刻な影響が想定されます。

イリオモテヤマネコの交通事故防止には、注意を促す看板や、100カ所以上のヤマネコトンネル(アンダーパス)などいろいろと工夫はされていますが、今後も私たちみなが気をつけて行くべき問題です。

筆者はヤマネコトンネルの存在を知り、送迎バスの運転手さんに「近くにあるなら見に行きたい!」と言いましたが、「一度人の匂いのついたトンネルを、イリオモテヤマネコは使いたがらない。トンネル1つ造るのに1000万円くらいかかっている」と言われました。なるほど……軽い気持ちで観光目的で見にいくのはやめたほうがいいですね。

もしイリオモテヤマネコに遭遇することがあったら、西表野生生物保護センターにぜひ連絡を。みなさんからの目撃情報をもとに、運転注意マップを作成しています。

イリオモテヤマネコを見たよ!連絡はこちらへ
https://iwcc.jp/inquiry/report_iriomotecat/


星野リゾート 西表島ホテル限定「イリオモテヤマネコ 塩黒糖クッキー」3枚入り920円


星野リゾート 西表島ホテルのハロウィンイベントに登場したイリオモテヤマネコがかわいかった!

星野リゾート 西表島ホテル
https://iriomotehotel.com
沖縄県八重山郡竹富町上原2-2
宿泊予約  0570-073-022(9:30〜18:00)

参考
[西表野生生物保護センター]
[環境省「環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」]
[NHK「世界自然遺産へ 西表島 ヤマネコの謎と宝の森」]
[第二東京弁護士会 環境保全委員会「イリオモテヤマネコの保全に向けた 法制度的観点からの調査報告書」]

[Photos by Chika & Aya Yamaguchi ]

PROFILE

山口彩

Aya Yamaguchi 統括編集長

インターネットプロバイダ、旅行会社、編集プロダクションなどを経てフリーに。旅と自由をテーマとしたライフスタイルメディア「TABIZINE」編集長を経て、姉妹媒体「イエモネ」を立ち上げる。現在は「TABIZINE(タビジン)」「イエモネ」「novice(ノーヴィス)」「bizSPA!フレッシュ」統括編集長。可愛いものとおいしいものとへんなものが好き。いつか宇宙に行きたい。

インターネットプロバイダ、旅行会社、編集プロダクションなどを経てフリーに。旅と自由をテーマとしたライフスタイルメディア「TABIZINE」編集長を経て、姉妹媒体「イエモネ」を立ち上げる。現在は「TABIZINE(タビジン)」「イエモネ」「novice(ノーヴィス)」「bizSPA!フレッシュ」統括編集長。可愛いものとおいしいものとへんなものが好き。いつか宇宙に行きたい。

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