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夏目漱石ゆかりの道後温泉、その起源は「596年」
- 596年(推古天皇4年):聖徳太子が来浴
- 1894年(明治27年):道後温泉本館・神の湯本館棟竣工
- 1899年(明治32年):道後温泉本館・又新殿・霊の湯棟竣工
- 1924年(大正13年):道後温泉本館・南棟、玄関棟竣工
- 1994年(平成6年):本館が国の重要文化財の指定を受ける
(C)道後温泉事務所
愛媛県松山市の道後温泉といえば、夏目漱石ゆかりの温泉として知られています。漱石が道後温泉に親しんだのは1895年(明治28年)、中学校の英語教師として松山に赴任してきたことがきっかけでした。
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当時の友人への手紙には「道後温泉はよほど立派なる建物にて8銭出すと3階に上がり、茶を飲み、菓子を食い、湯に入れば頭まで石鹸で洗ってくれるというような始末、随分結構に御座候」と書き記しており、よほどのお気に入りようだったことがうかがえます。
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詩人・正岡子規や高浜虚子とともに温泉に出かけ、後に小説『坊っちゃん』が誕生したのはあまりにも有名な話。
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道後温泉の本館3階には、夏目漱石が湯上がりにくつろいだゆかりの部屋として「坊っちゃんの間」があり、漱石の見合い写真や胸像などが展示されています。
夏目漱石のエピソードで彩られることが多い道後温泉ですが、実はその歴史ははるか古く、およそ3000年前の神話の時代から続く日本最古の温泉といわれています。
聖徳太子や中大兄皇子も訪れた「神の湯」
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愛媛県の道後温泉は兵庫県の有馬温泉、和歌山県の白浜温泉と並ぶ日本三古湯(にほんさんことう)のひとつ。「伊予の温泉(ゆ)」の名称で「日本書紀」や「万葉集」、「源氏物語」などの文献にも登場しています。
「伊予国風土記逸文」には、大国主命(おおくにぬしのみこと)が重病にかかった少彦名命(すくなびこなのみこと)を道後温泉の湯で温めたところ、たちまち元気になり石の上で踊ったという話があり、その伝承の元となった「玉の石」は道後温泉本館の北側に奉られています(「玉の石」は2022年2月現在、保存修理中のため、観覧できません)。
斉明天皇、中大兄皇子などの来訪の記録も残されており、596年(推古天皇4年)に聖徳太子がこの地を訪れた際には、石碑を建てて「椿が生い茂り、まるで天寿国(理想の国)のようだ」と温泉を讃えた逸話も残っています。道後温泉本館の浴場は「神の湯」と名付けられていますが、こうした背景を踏まえてみると、あらためてその歴史の深さがひしひしと伝わってきます(「神の湯」は2022年2月現在、保存修理中のため、利用できません)。
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道後温泉本館の屋根の上には白鷺のオブジェが飾られていますが、これは道後温泉に伝わる白鷺伝説にちなむもの。はるか昔、脛に傷を負った白鷺が温泉に足を浸して傷を治したことから、それを知った人々が温泉を利用するようになったともいわれています。
この白鷺伝説にもあるように、道後温泉には筋肉や関節の痛み・こわばり、神経痛などを癒やし、疲労回復、健康増進に効能があるとされ、昔から湯治に訪れる人が絶えませんでした。
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神々の時代からさまざまな逸話や伝説が残る道後温泉。白鷺はそのシンボルとして、道後温泉の建物のあちこちに潜んでいます。
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屋根の上のほか、柵、ライト、浴室の壁画などに白鷺が隠れているので、ぜひ探してみてください。
国の重要文化財に指定された建物にも注目
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現在の道後温泉本館は1894年(明治27年)に当時としては破格の総工費13万5,000円を掛けて改築された建物。夏目漱石も小説『坊っちゃん』で「ほかの所は何を見ても東京の足元にも及ばないが、温泉だけは立派なものだ」と道後温泉を褒め称えています。
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1階が公衆浴場・神の湯、2・3階が休憩室となっている「本館棟」のほか、日本唯一の皇室専用浴室としてつくられた「又新殿(ゆうしんでん)・霊の湯棟」も備え、その歴史・文化的価値から1994年(平成6年)には公衆浴場として日本で初めて国の重要文化財に指定されました。
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日本唯一の皇室専用浴室「又新殿」は観覧も可能。豪華絢爛な内装に目を奪われます。
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もともと皇室専用としてつくられた浴室「霊の湯」も今では「神の湯」と同様に公衆浴場として利用することができます。「霊の湯」は最高級の花崗岩や大理石を使用しており、「神の湯」とはまた違う雰囲気です。
道後温泉の泉質は「アルカリ性単純泉」。アルカリ性のお湯は古い角質を溶かし、きめ細やかな赤ちゃんのようなすべすべ肌にしてくれる「美人の湯」とも謳われ、単純泉のため湯上がりはさっぱりと爽快感があるのが特徴です。源泉温度は約42℃前後で、無加温・無加水。源泉かけ流しの贅沢な温泉が楽しめます。
また、道後温泉本館から徒歩2分の場所には、昭和中期から続く公衆浴場「椿の湯」と、2017年にオープンした「道後温泉別館 飛鳥乃温泉(あすかのゆ)」もあります。
重厚な歴史を感じる「本館」、親しみやすさあふれる「椿の湯」、新しくおしゃれな「道後温泉別館 飛鳥乃温泉」。どの浴場もそれぞれ異なる魅力があります。ぶらりと街歩きを楽しみながらの湯めぐりで、道後温泉をぜひ満喫してみてください!
※道後温泉本館は2022年2月現在、営業しながらの保存修理工事中のため、外観の見え方等が掲載されている写真と異なる場合や、利用できない浴室や休憩室があります。詳しくは道後温泉公式サイトをご確認ください。