神戸・北野の街並 (C) Shutterstock.com
「1935年」建立、国際都市・神戸に住むムスリムの祈りの場
- 1934年(昭和9年)11月30日:モスク建設着工
- 1935年(昭和10年)7月末:モスク竣工
- 1935年(昭和10年)8月2日:献堂式を挙行
- 1935年(昭和10年)10月11日:約600名の来賓を迎えて旧トア・ホテルにて祝賀会を開催
(C)一般財団法人 神戸観光局
明治時代に神戸港が開港され、国際貿易の重要拠点となったことから、神戸にはさまざまな国から異国文化が流れ込みました。JR三宮駅の北側の北野エリアは外国人居留地として開かれ、明治・大正時代に外国からやって来た商人たちが住む洋館が多く建てられました。それら洋館をめぐる「異人館めぐり」は神戸観光の人気コースの1つですが、今回紹介するのは、その北野の街の一角にあるイスラム教の礼拝所「神戸ムスリムモスク」です。
異国情緒あふれる神戸・北野。アメリカやイギリス、ドイツ、オランダなどの異人館が多く建ち、西洋のイメージが強いエリアですが、実は当時からインドやトルコ、ペルシャといったイスラム文化圏の商人たちも多く移り住んでいました。
神戸ムスリムモスクは、そんなイスラム教を信仰するムスリムの人たちの祈りの場所。1935年(昭和10年)、日本初のモスクとして建立されたのが始まりです。
戦火と災害を乗り越えた日本最古のモスク
(C)一般財団法人 神戸観光局
神戸ムスリムモスクは、神戸三宮駅北口から徒歩10分ほどの「パールストリート」と呼ばれる通りに面しています。通りの名は、古くからこの界隈が真珠の加工・流通の拠点だったことに由来します。神戸で加工された真珠は神戸港から世界へ輸出されていて、現在も約220社の真珠関連業者がパールストリート周辺に集まっています。
マンションや雑居ビルが立ち並ぶ通りを歩いて行くと、突如、オリエンタルな様相のモスクが現れます。2基のミナレット(尖塔)とアラビア風のドーム。外壁にはアラベスク模様の装飾が施され、そこだけ中東の雰囲気に包まれています。
この神戸ムスリムモスクは昭和初期、M.A.K.ボチア氏を発起人に、神戸在住のトルコ人やタタール人、インド人貿易商らの出資と、在神教徒らの寄付金により建てられました。
モスクが完成した当時、お祝いに集まったのは日本に住むムスリムだけではありませんでした。インドやロシア、ドイツ、中国、トルキスタン、エジプト、アフガニスタンなど、さまざまな国からはるか海を越えて神戸に教徒が集まり、盛大に献堂式が行われました。
祝賀会も開催され、第8代神戸市長、勝田銀次郎氏も次のように祝辞を寄せています。
「余は此佳日(このよきひ)に際し回々教徒と喜びを共にするものであってこれが将来各民族間の親交を助長する機関たらん事を希望する」
また、当時の神戸ムスリム・モスク理事会による挨拶にも、「美(うる)はしい日づる国に始めて生まれたイスラム寺院の開院を宣言」とあります。親善と喜びを伝え合う両者の言葉に、国境や宗教を超えた心の交流が伝わってくるようです。
※参照:http://kobe-muslim-mosque.com/news/histories01.html
その後も、第二次世界大戦の戦火や阪神淡路大震災など、数々の困難を乗り越えてきたモスク。現存する日本最古のモスクとして、今もなお、日本に住むムスリムの人たちの心のよりどころとなっています。
オリエンタル美に包まれた礼拝堂は見学も可能!
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神戸ムスリムモスクは、イスラム信徒以外の人でも自由に中に入ることができ、誰でも見学が可能です。ただし礼拝中は見学ができないのでご留意を。ムスリムの礼拝は1日5回あり、礼拝時間は日の出と日没によって毎日変わります。日々の礼拝時間は公式サイトに記載されているので、お出かけの際は事前にチェックしておきましょう。
モスクの内部には豪華なシャンデリアが下げられ、イスラムの伝統と、美しく厳かな空気に包まれています。ステンドグラスから差し込む光は淡く輝き、神々しさを感じさせます。日本にいるのに、まるで中東の街に来たみたい。そんな旅気分も楽しめそうです。