手すき和紙の日本一は愛媛県
※写真はイメージです
このところ、和紙に触れた記憶がありますか? 筆者の暮らすマンションには和室が1部屋あるので、定期的に障子紙を張り替えています。
各種の調査によると、和室や畳のスペースを家に設ける人の割合も最近は増えているので、「イエス(触った)」という人のほうが意外に多いかもしれませんね。
そんな和紙の話。明治・大正・昭和を通じて全国各地の産地に衰退の波が押し寄せる中、昭和の途中から平成・令和と出荷額を伸ばし、現在は日本一にまでなった産地があります。それは、どこかご存じでしょうか?
2020年(令和2年)の『工業統計表』(経済産業省)によると、手すき和紙の出荷額全国1位は愛媛県 です。
映画『書道ガールズ!!わたしたちの甲子園』という映画の舞台は、「紙のまち」を自認する愛媛県の四国中央市です。その四国中央市でつくられる「伊予手漉き(すき)和紙」を中心とした愛媛県の手すき和紙が、日本一の出荷額を誇る のですね。
ちなみに、映画の舞台となった四国中央市は、映画でも描かれたとおり、製紙会社の煙突があちこちに見える街。パルプ・紙・紙加工品製造業でも日本一の規模を誇るようです。
「越前和紙」が日本最古
越前和紙の里 写真:福井県観光連盟
しかし、愛媛県の和紙づくりの産地で最も生産額が多い伊予和紙は、意外に歴史が浅いです。始まりは江戸時代とされています。
<この地方の手漉き和紙の歴史は浅く、宝暦年間(1751~1763)> (全国手すき和紙連合会の公式サイトより引用)
歴史の長さでいえば、全国で3番目の出荷額を誇る福井県内の「越前和紙」が日本最古 とされています。
<越前和紙は、日本に紙が伝えられた4~5世紀頃にはすでに優れた紙を漉いていたようです> (全国手すき和紙連合会の公式サイトより引用)
越前市には、紙の神様を祭る岡太神社・大瀧神社まであり、越前和紙は横山大観などの芸術家にも愛されてきました。
映画『書道ガールズ!!わたしたちの甲子園』のように、越前和紙を取り上げた物語で真っ先に思い出される作品といえば、水上勉さんが書いた小説『弥陀の舞』です。
越前の中でも、五箇という場所に暮らしながら紙をすく人たちを書いた小説で、越前の風土に生かされる人々の営みを深く豊かな視点で書いた名作だと個人的に思っています。
その五箇の地域には、昔ながらの産地の面影の中に、独立小経営の和紙業者の営みを感じられる古い街並みが残っています。五箇地区から徒歩圏内には『和紙の里』というテーマ型施設もあって、紙すき体験、和紙づくりの見学、紙の文化博物館の館内ツアーも楽しめます。
もちろん、四国中央市でも手すき体験は楽しめます。
芸術や工芸などに関心が高まる秋の旅行で、どこかいい場所がないかなと思ったら、愛媛県の四国中央市や福井県の越前市などを候補に入れてみてはいかがでしょうか?
[参考]
※ 2020年工業統計表 品目別統計表データ – 経済産業省
※ 笠井文保「和紙生産の立地と変遷(2)」
※ 南保勝「福井県における伝統的工芸品産業振興のための一考察―近年における産地の新たな動きを通じて―」
※ 和室は客室から子どもの遊び場へ、変わる若年層の畳ニーズ – 日経XTECH
※ 手漉き和紙の生産額の都道府県ランキング(平成29年) – 地域の入れ物
※ ふくいの工業 – 福井県
※ 越前和紙(えちぜんわし) – 全国手すき和紙連合会
※ 紙のまちランキング(紙関連の製造品出荷額等)16年連続日本一! – 四国中央市
※ えひめの地場・伝統産業-伊予手漉き和紙- – 愛媛県生涯学習センター
※ 手漉き体験学習ご案内 – 四国中央市
※ 紙のまち資料館 – 四国中央市
[Photos by Shutterstock.com]
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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