「女は愛嬌」「癒し系」「森ガール」「肉食女子」・・・時代によって、女性は様々な呼ばれ方をしてきました。
現代でこそ「キャリアウーマン」は当たり前になっていますが、「玉の輿」「社長夫人」など、夫のステータスが自分自身のステータスに直結する言葉が、未だ甘い響きを持っていることも確か。そんな中、近年赤マル急上昇の勝ち組ステータスがあります。それは「駐在妻」。
素敵妄想
海外へ赴任するほどの男性なんだから、語学堪能で仕事をバリバリこなし、スーツを翻しながら闊歩してそう。そんな殿方の選びし女性なのだからきっと才色兼備で、週末はホームパーティで多種多様な外国人と談笑したり、趣味と実益を兼ねたビーズアクセサリー教室開いてそう、など勝ち組女性の妄想がどんどん膨らんでいきます。
しかしながら、全ての駐在妻がそのようなライフスタイルを送っているわけではないのです。
社会からの断絶
現代の女性はバリバリ働きます。駐在妻だってかつてその一人でした。
大半の駐在妻は、仕事を辞めて夫について行きます。残業も厭わず仕事をこなし、金曜の仕事終わりの一杯をこよなく愛していた人間。それが突如右も左も分からない土地で、来る日も来る日も暇を持て余したらどうなるでしょう? 社会との接点は絶たれ、無力感・喪失感に襲われます。収入がないので、ショッピングもためらうように。夫の帰りを待つだけの生活が始まります。
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交流してみる
生気を失った妻を見かね、夫が駐在員のパーティに誘います(ここは妄想の通りです)。一応お洒落して到着するも、全員が初対面。「毎日家で一人」も退屈ですが、「大勢の見知らぬ人」はもっと地獄だった! 極度の引っ込み思案をそこで大発揮する駐在妻もいるのです。名前、出身地、職業(毎回「主婦です」と答えるのも苦痛)に始まり、毒にも薬にもならないお喋りを二、三人と交わす頃にはぐったりし、残り時間はビールのラベルを読むことに費やされます。勝ち組とは程遠い姿です。
蝶かダンゴムシか
新天地に赴くと、人は拠り所を求めて仲間を探します。誰とでもすぐに打ち解けられる人、時間をかけて厳選する人。人の入れ替わりの多い駐在の世界においては、どちらが苦労するかは自明のこと。パーティの度にリセットボタンを押されるような状況の中、前者は社交の蝶となりますが、後者はいずれ疲れ果て、「家」という名の石の下でじっとするダンゴムシと化します。
模索開始
しかし、しばらくするとダンゴムシにも元働く女性としてのジレンマが生まれるのです。「やっぱり社会と繋がっていたい。」「でもきっかけを作るには人と会わなければ。それには今、パーティしかない・・・!!」
敵前逃亡しっぱなしのまま、夫の任期が終わる日を指折り数えるなんて寂しすぎる。覚悟を決めたダンゴムシは、「今日はビールのラベルを読んでいいのは15分・・・いや20分まで!」という目標を掲げ、再びパーティへと向かうのでした。ビーズアクセサリー教室は開けないかもしれない。それでも、自分なりに誇れる「勝ち組駐在妻」を目指して。
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