南米の中でもエクアドルは、南米のよくある定番料理とはちょっと違うレパートリーがある国の一つ。地域によって料理そのものや味付けが違うことは多々ありますが、共通するのは「バナナ料理が多い」ということ。さすがはトップレベルのバナナの生産量を誇る国とも言えますが、そんなエクアドルの朝食を現地よりご紹介したいと思います。
家庭料理は日本の「アレ」に似てる!?
エクアドルを旅すると必ず目にする、こぶし大ほどの丸い揚げ物。これは「ボロン(Bolon)」と呼ばれるエクアドルの定番の朝食ですが、なんだかその見た目は日本人に馴染み深いあの料理、「コロッケ」にも似ています。ただ実際に使われているのはジャガイモではなく、その正体はやっぱり「バナナ」! 潰したバナナを団子のように丸め、その中にひき肉やチーズなどを入れて揚げており、簡単に食べることができる上に腹持ちも良い朝ごはんとして地元の人たちには大人気なんです。
ただこのボロンに使われているバナナは日本人の想像する甘いバナナとは違い、固くて青い食用バナナ。食用バナナは甘さも癖もないので、エクアドルでは果物というよりも、「野菜」感覚で食べている人が大半です。
病みつきになる真っ赤なスープ!
(C) Saya Meguro
赤く染まったスープのこの存在はエクアドルの国民食とも言える「セビーチェ(Ceviche)」。実はペルーにもセビーチェはありますが、ペルーとエクアドルには一口にセビーチェといっても異なる点が多くあります。エクアドルの方はレッドオニオンとトマト、そしてライムやオレンジなどの柑橘、そこにケチャップを混ぜ入れ、メインであるカマロン(エビ)を浸しているスタイル。
一方でペルーは白身魚がメインで、スープはほぼないマリネといった印象です。お刺身感覚で食べられ、大衆食堂などでは大体一食300円ほどということもあり日本旅行者にも人気のこのセビーチェ。
(C) Saya Meguro
店によっては「ミクスト(Mixto)」というエビや白身魚、タコなどの魚介類をすべてミックスさせたものもあり、これはもう絶品! 新鮮な海の幸を思う存分堪能することが出来てしまいます。
(C) Saya Meguro
そしてセビーチェを頼むと必ずといっていいほどついてくるのがこの「チフレ(Chifle)」というバナナチップス。これも「ボロン」と同様、甘くない食用バナナを揚げたもので、これを迷わずセビーチェのスープの中へと入れて食べるのがエクアドルの定番の食べ方です。チフレ以外にもポップコーンが付いてくることもありますが、ポップコーンも同じようにスープの中に入れて食べるのがエクアドル流。
筆者も店員さんや周りの人たちの指示に従い試してみましたが、感想としては「うーん、別々に食べたいかも・・・」というのが正直なところ。ただ甘さがない上に腹持ちがよく、小腹が空いたときにも食べられるこのチフレは、エクアドルの旅のお供にはぴったりのソウルフードにもなるんです。
メルカドで始まる朝
(C) Saya Meguro
地域によっては「メルカド(Mercado)」という市場と食堂が併設されている場所があり、ここでは朝早くから朝食を食べることが出来ます。大体は豆・サラダ・ライス・アボカド・バナナ、肉or魚といったラインナップですが、価格は約350円ほどと格安でボリュームたっぷり食べられることが人気の秘訣のよう。
オーダーしてから食にありつくまでかかる時間はおよそ5分以内と、ゆっくりした南米の中でもトップレベルの速さなので、朝が早いビジネスマンや学生たちにとっては強い味方のこのメルカド。席に着いたのは良いものの、何を選ぼうかとメニューを吟味していると「これは最高だよ!」と地元の人に教えてもらった一品はこちら!
体も心もポカポカに
(C) Saya Meguro
南米の人たちの生活には欠かせない「ソパ」。ソパはソパでも国によって種類や味付けは様々で、エクアドルという括りだけでも地域によって「定番」と呼ばれるものは変わってきます。たくさん美味しいソパは存在しますが、中でも筆者が一番心を惹きつけられたのは「モツ」がたっぷり入った「ヤグアルロクロ(YAGUARLOCRO)」という名のソパ。これは臓物スープの一種で、出汁をしっかり使ったスープは体の芯から温めてくれる、エクアドルの家庭の味そのものです。
ただ気になったのは、上に浮いている赤黒い正体。「これは何?」とお店の人に聞いてみましたが、「うふふふ・・・」という不敵な笑みの後に続いたのは、「血の塊だよ」という答え。なんと、血をそぼろ状にしたものをスープや炒め物に入れるのが、エクアドルでは普通なんだとか。血の風味が結構しっかりとあるため、好みはハッキリと分かれそうです。
「何個でもいけちゃう!」
(C) Saya Meguro
メルカドのような場所に入っている食堂であれば「必ず」といって良いほどあるのが、この「ジャピンガチョス(LLAPINGACHOS)」というマッシュポテト。言ってしまえば特になんの変哲もないただのマッシュポテトですが、これにチーズが入れられているものやアボカドが添えられているものがあったりと、マッシュポテト一つとっても食べ方は店によってそれぞれ。一個約30セントほどなので、小腹が減ったときの「おやつ」としても活躍します。
安い美味いヘルシーの「フーゴ」
(C) Saya Meguro
もしエクアドルに行く機会があったら是非オススメしたいのは、エクアドルの果物や野菜を使った「フーゴ(Jugo)」。これはジュースのことを指しますが、ただシンプルにオレンジなどを生絞りしたものからスムージーまで、フーゴだけでもいろいろな種類を楽しむことが出来ます。
特に筆者がオススメなのは、南米特有の「ワナワナ」、そして「ボロジョ」という名の果物の組み合わせ。ビタミンを多く含むこの二つのフルーツですが、さっぱりしていながらも濃厚なミルク感があり腹持ちも良いので朝ごはんにも最適です。大きなカップにこれでもかというほどに注いでくれるのに価格はなんと一杯たったの200円以下と、日本では信じられないほどの安さなのも魅力の一つ。
食卓に欠かせない「ピカンテ」の存在
(C) Saya Meguro
エクアドルのみならず、南米の食卓には絶対に用意されている「ピカンテ」という赤い物体。これはメインのトマトソースの中に刻んだパクチー、唐辛子やハバネロ、そしてみじん切りした玉ねぎ、ニンニクなどを入れ、最後にビネガーや塩で味を整えた調味料のことで、南米に住む人にとっては食卓に欠かせないマストアイテムとして知られています。肝心の味はというと、辛さは思ったよりも抑えられており、トマトの酸味とパクチーの風味が印象的な、メキシコ料理で有名なサルサソースのよう。
大抵の場合は作り置きをしていることが多く、足りなくなったらその都度注ぎ足しをするというのがエクアドルの基本です。まさに日本にとっての醤油と同じポジションとも言えるそのピカンテですが、エクアドルを訪れるときには南米の代表料理「エンパナーダ(Empanada)」にたっぷりかけて召し上がれ! ジューシーな肉汁とピカンテの組み合わせは最高です。
南米特有の油っこいもの以外でも、ソパやセビーチェ、フレッシュスムージーのようにヘルシー料理も多いエクアドル。それもそのはず、あの健康に敏感なアメリカ人が選ぶ移住先として、エクアドルは常にランクインしている国でもあるんです。アメリカ人だけでなく近隣国からの移民も多いエクアドルは自国の料理だけでなく、コロンビア料理やベネズエラ料理など、とにかくレパートリーが多いことでも有名です。
エクアドルの旅行の際には、いろいろな料理を食することで、その国の理解を深めてみるのもアリかもしれませんね。
[THE HUFFINGTON POST – The 10 Best Countries In The World For Living Abroad]