姉妹編のお願い上手の英会話に続き、クレーム上手なトラベル英会話を考える今回の連載。5回目はショッピング編として、幾つかのシチュエーションを想像し、英会話表現を考えたいと思います。
基本的なスタンスは初回に記してありますので、今回から読み始めたという方は、初回の記事もチェックしてみてくださいね。
欠陥品を売りつけられた場合のクレーム表現は?
最初はショッピングで欠陥品を売りつけられた場合のクレーム表現を考えてみましょう。返品や交換がお願いできる場面では、どのように言えばいいのでしょうか。
今回もこの表を中心に状況を整理してみます。クレームを言う相手はショップ店員ですから、初対面、もしくは初対面に近いですね。「返金してほしい」「商品の交換をしてほしい」というこちらの要求に相手が応じる義務や責任があるかないかは、商品の種類、お店の格式、レシートの有無などさまざまな状況が関係してくるため、その都度判断したいです。相手が応じる義務や責任があったとすると、状況はDですね。「慎重にクレームと要求」を伝える必要があります。
次は自分の被害の大きさを考えて、表現の丁重さや慎重さを調整します。わざわざ返金や交換をお願いしに行く場面を想定していますから、それなりに被害は大きいと予想されます。よって迷惑の分だけDをD-に格下げし、「慎重にクレームと要求」を「普通にクレームと要求」に落としても問題ないと思われます。
ただ、他の回でも述べてきましたが、ショップの店員は対等の立場にあります。会社の上司と部下というわけでもありません。頭ごなしにクレームをぶつけたり、非難する言葉を口にしたりすると、トラブルの原因にもなりかねません。呼びかけや前置き、状況の説明など言葉を尽くして、相手にこちらの要求を伝えていく方が無難です。
「Hello.」
と、買い物をしたお店の店員に話しかけたら、
「I bought this watch yesterday here and this is the receipt. It seems that the watch I bought yesterday does not work. Can you help me with this?」(私はここで昨日この時計を買いました。これがレシートです。私が買ったこの時計は動かないように思えます。何とかしてもらえますか?)
最初の下線で前置きの言葉を口にして、次の下線では状況を説明します。相手をとがめる言葉は使わず、あくまでも時計に問題があると伝えます。言葉自体は別に丁寧というわけではありませんが、相手に頭ごなしに批判していませんので、トラブルになる心配はありません。
「Can I have a new one?」(新品に替えてもらえますか?)
などと、商品が完全に欠陥品だと判明した場合は、状況に応じて付け加えてくださいね。
値段が不当に高いと感じたときのクレーム表現は?
海外だと値段の相場がつかめません。不当に高い値段を要求されても、「そんなものかな」と受け入れてしまう場合もあるはずです。しかし、明らかに不当な料金を請求されていると分かった場合は、どのようにクレームをぶつけ、適正な値段を出させればいいのでしょうか。
販売員は初対面の相手。「不当に高い値段を下げろ」という要求に、相手は応える義務や責任があるのでしょうか。この場合、不当かどうかは現状で証拠がないのですから、相手に値下げの義務や責任はないという前提が必要かもしれません。よって状況はBですね。
自分が被る負担や迷惑について考えてみましょう。どうしても支払わなければいけないお金の場合、被害は大きくなります。迷惑度の大きさを考えて、「かなり慎重にクレームと要求」を「慎重にクレームと要求」に格下げしても問題ないと考えられます。
「I’d like to ask just to make sure. Is this price really the same for both tourists and locals? It seem too high considering the prices here.」(念のため聞かせてもらいます。この値段は本当に観光客と地元の人で同じですか? 物価水準を考えると高すぎるように思えるのですが)
などと、言葉にしてください。最初の下線では前置きの言葉を口にしています。次の下線では、確認作業を行い、言葉を尽くして疑問を伝えます。I’dのwouldなど助動詞の過去形を使いながら、丁寧な印象も演出しています。助動詞の過去形については他の回で繰り返し紹介してきましたが、遠慮がちな気持ちや謙遜する気持ちを出すために、英語の場合は時制を過去に遠ざけると、少し控えめな気持ちが伝わると述べましたね。
しつこい店員を撃退したいときのクレーム表現は?
最後は買わないと言っても食い下がってくる店員をいなす表現を考えてみましょう。
相手は初対面か初対面に近い相手です。「もう買わないので、これ以上、追い回さないでくれ」という要求に、相手は応じる義務や責任が通常はあると言えます。よって状況はDですね。
次は自分の迷惑の大きさを考えてみます。店員にしつこく言葉をかけられると、場合によってはそれなりに迷惑は大きいとも言えます。そうであれば、迷惑の分を差し引いて、同じDでもD-、「慎重にクレームと要求」を「普通にクレームと要求」に格下げしても問題ないと言えます。ただ、何度も繰り返しますが、相手とは対等な立場です。頭ごなしに相手を卑下する言葉は慎みたいです。
「I’m sorry, but I will not buy anything. I’m going to go to the National Museum, thank you.」(ごめんなさい、何も買う気はありません。国立博物館に行く予定がありますので。ありがとうございました)
などと、最初の下線の部分のように謝罪を口にし、相手が聞き入れるムードを作ってから、こちらの意思を伝えてください。それでも食い下がってくる場合は、次の下線のように急ぐ理由などを伝え、とどめにあえて感謝の意を伝えるなどして、お店を後にしたいです。何かを命令するのではなく、状況を伝え、謝意や感謝の気持ちを伝えて相手を遠ざけるのですね。
以上、クレーム上手なトラベル英会話のショッピング編を考えましたが、いかがでしたか? 旅先で出会う相手は対等の立場にあるケースがほとんどです。直接的に相手を卑下するのではなく、状況の説明などで言葉を尽くして、相手にこちらの意向を伝えてください。トラブルには注意してくださいね。
※本文中の英文は全てネイティブスピーカーのチェックを受けています。
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