海外旅行経験なしの女子2人が、突然、おっとりと、でも用意周到にヴェネツィアに行く!
(C)TOSHI
初めて旅した時の喜びにひたれる、すてきな旅行記をご紹介します!「ヴェネツィアひよわ紀行」橘紫夕著(竹書房)です。
旅に出るのは、「海外経験がなく、パスポートすらない2人」の女子。作者の「橘」さんはマンガ家、友人の「瀬戸さん」は、当時タレント業でした。
橘さんは瀬戸さんと紅茶を飲みながら、
「ねぇ瀬戸さん 突然ですがヴェネツィアに行きませんか」
人生に疲れました、といいます。
「いいですね行きましょうか」
と、あくまでおっとりと、「なんとなく決定」した初めての海外、ヴェネツィアへの個人旅行です。
ヴェネツィア滞在が長いツアー旅行は見つからなかったため、個人旅行になりました。外国語が得意なわけではなく、橘さんは国内旅行もほぼしたことがありません。
けれど、この旅はあくまで用意周到。
事前に、イタリアの習慣、歴史、よいホテル、おいしい店、トラブル情報など、「とにかく調べて調べまくった」橘さん。
「ホテルを英語で予約もしちゃう」。ヴェネツィアは迷いやすい、と知って、方位磁石も持って旅に出ます。
「旅、海外旅行ってこんなに素晴らしいものだった」と思いだす!初々しい旅行記
この本は、旅の喜びにあふれています。
初めてのヴェネツィアの美しい部屋、おいしい食事、買いもの。2人でドレスアップしてカジノに繰り出し、散歩、2人を見たイタリア男子の反応・・・。それらがいきいきと書かれた初々しい旅行記です。
ちなみに筆者は、
「旅、海外旅行ってこんなに素晴らしいものだったんだな。少し忘れていた気がする」
と思いました。すごく新鮮で、感動しました。
すてきな女子2人の、ほのぼの旅に癒されます。マンガで読みやすい、おすすめの旅行記です。
「ヴェネツィアひよわ紀行」作者の橘紫夕先生にインタビュー!「えっ、その後、そんなところにまで!?」
そして今回、この「ヴェネツィアひよわ紀行」の作者である、橘紫夕先生がインタビューに応じて下さいました!! ご本人の、秘蔵旅行フォトまで拝見できるそうですよ!楽しみですね。
(C)橘紫夕
おお!これが作中にも出てくる、本場のゴンドラ。リアルですね。読んだ人だけに分かるネタですが、あのお兄さん、どうしているでしょうね。ご協力ありがとうございます。
――「海外には一生行かない」と思っていたそうですが、どうしてですか?
橘:学生の頃は日本に満足していました。
何でもあるし、きれいで便利だし、マンガやアニメもある生活から出る必要がなかったんです。
何かに行き詰っても学生のうちは些細なことでしたし。
それがずっと続くと思っていました。
――分かります。日本ってきれいで便利で、マンガも、コンビニエンスストアでも買えるんですもんね。
橘:でも社会に出ると疲れたり挫けたり、何をやってもうまくいかない・・・。
みたいな日がやはりあって、ストレスが蓄積されて行って。
――それもすごく分かる気がします。社会に出るといろいろありますよね。
橘:私は面倒くさがりなので、ちびちび気晴らしして暮らすよりドーンと突き抜けようと思い、友人瀬戸さんに声を掛けたら彼女も疲れていたのでちょうど良かったです(笑)。
――そこで「ドーンと」。綿密な計画をたてたとはいえ、初めての海外で個人旅行は、国内と勝手が違うこともあったのではないでしょうか。怖くありませんでしたか。
橘:もちろん怖いし勝手が違うことだらけで、言葉もわからず予定通りにいかず右往左往・・・でもそれが目的でもありました。
国内にいる時は何となくぼーっと生きていられますが、海外ではしっかり計画を立てて防犯して周りを見て・・・色々考えて動かないといけません。
すごく脳みそを使って頑張って生きている感じがあって、それもまた楽しかったです。
(C)橘紫夕
この写真は橘先生が撮られた、ヴェネツィアの魚市場です。こんなに本格的なんですね。
筆者はヴェネツィアに行ったことがありません。実は、一番行きたいところなのですが、何かの記念があったら行こうって、あえて、残してあるほど、憧れがある場所なのですよ。
(C)橘紫夕
――その後、どこへいらっしゃいましたか?
橘:あっという間に海外旅行好きになってしまった結果、イギリス・モナコ・フランス・フィンランド・エストニア・スウェーデン・ハワイ・台湾・ベルギー・オランダ・UAE(アラブ首長国連邦)・香港・マカオ・広州・・・随分行きました。
――本当にたくさんの場所に行ってらっしゃいますね。モナコやエストニア、行ってみたいです。一番よかった国、リピートしたい国や場所、おすすめがあれば。
橘:色々行った結果、やはり私はイタリアが一番好きです。
人の性格も、古い建物も、流れる空気も自然でいいです。
――イタリアいいですよね。ちょっと勝手が違っても、美しすぎる景色なんて見ると、「ああもうみんな許しちゃう!」って感じがあると思います。
橘:次点はイギリス。アンティークマーケット好きにはたまりません。
どちらかに2年位住んでみたいですが叶う日は来るのでしょうか。見果てぬ夢です。
――素敵なおじいさん、一般の人を見て、写真を撮りたいと思う・・・。「海外旅行あるある」だと深く共感しました。旅行中の幸せそうな老夫婦だとかも、ぐっときますよね。他の旅で、そういう、街の素敵な方に遭遇しましたか。
橘:2つお話ししたいです。
フィレンツェのグルメフードコートで食事したのですが・・・。
若い女性のコックさんが、オープンキッチンで調理しながらビールを飲んでいました。
ちょうどリゾットが出来上がった時に、隣のチーズ店の店員さんがチーズ盛り合わせを持ってきて物々交換。
チーズとビールで「ん~おいし~い!」とご機嫌に仕事していて、なんて楽しそうなんだ・・・と思って見ていたら目が合って、私のお皿にチーズを一つくれました(笑)。
自由で楽しく機嫌よく仕事をするなんて最高ですよね。
――分かります。楽しそうに仕事する姿って、日本人からするとまぶしいですよね。
橘:モナコで出会った40代の日本人女性とイタリア人男性の夫婦。
奥さんは最初日本人と結婚し日本で子育てをして、子供が成人したので離婚して海外へ。
今はモナコで6歳と4歳の子供がいるそうです。 まさに第二の人生!っていう感じで、何だかすごいパワーだなと思いました。
ちなみに、私の持っていた地図が古すぎてホテルへのバスがなくなっていたので車で送ってくれました。感謝です。
――そんな女性がいるんですか。本当にすごいパワーと「女子力」ですね!!
(C)橘紫夕
――旅の1番の楽しみはなんですか?
橘:古い街並みや建物が好きなので最初は街を歩くだけで楽しかったのですが、今はショッピングも楽しいです。
アンティークが好きなので、行く先に骨董市やフリマがないか調べていきます。
通称「どろぼう(が盗った品を並べる)市」と呼ばれる様なところにも、防犯を万全にして出かけました。
現在はそこそこ健全な観光地になっていましたが(笑)。
スーパー巡りも大好きです。 色んなご当地メニューがお安く気軽に試せます。お土産も安い!
――「正体のわからぬもの決して口にせぬ!!」と、「料理名と食材名めっちゃ覚えて行った」、と作中にあります。その後もそうですか?
橘:はい、出来るだけ覚えていきます。
好き嫌いがとても多くて、野菜全般と辛いのと苦いのと酸っぱいのがダメです。
ヨーロッパは外食がとても高いのと一人旅の時が多く、絶対失敗できないので必死です。
肉と魚介ときのこは大丈夫なので、トナカイのスープやステーキ、ラクダのハンバーガー、ご当地魚料理、巨大マッシュルームなどは美味しくいただきました。
(C)橘紫夕
――旅行グルメを満喫していらっしゃるじゃないですか!!上の写真はフィンランドのトナカイのスープですか、意外と、まったりした感じですね・・・。
(C)橘紫夕
――「長旅は性格が出るよね」ですよね。・・・個人的に、(筆者TOSHIは)珍しい料理を食べるのが旅の最たるテーマなので、すごく面白かったです。
橘:一緒に行った友人瀬戸さんとは長い付き合いなのですが、えっそんなところもあったんだ!?という発見もあったりしました。
そして旅行後も「楽しかった!もっと色んなところに行こう!(私)」
「楽しかった!またいつか、機会があれば行きたいなあ(瀬戸さん)」と方向が別れました。
普段の私はダラリとインドア派なので、意外な感じですよね。
――旅のアクシデントは?
橘:フィンランドのアパートを借りた時、ドアの鍵穴が歪んで内側から開けられなくなりました。
フロントなし、内線もなし、到着したばかりで食料も飲みものもなし。
多分あの時が一番ピンチだったと思います。
ポストから「助けて!!内側から開かない」と紙を出しておいた所、隣の住人が気付いて外側から開けてくれました。
最悪の場合はツイッターで「ヘルシンキにいる人助けてなう」するしかないかと・・・(笑)。
なおそのアパートはベランダのドアのハンドルも取れたので、クギの代わりに持っていたつまようじを刺して使いました。 海外の建物はガタガタでいい加減なメンテナンスの所が多いです。
――最後に、ぜひTABIZINEの読者にメッセージを。
橘:私は、絶対に行かないと思っていたはずの海外に出てみて、浅はかにもコロっと海外旅行大好き派に鞍替えしました(笑)。
「世界はこんなに広かった。日本にないよい所がたくさんある」と同時に「日本では何とも思っていなかったアレやコレがこんなにもありがたかったとは」とも思いました。
「日本が好きだから他の国は見なくていい」と言うのは、日本好きの観点からしてももったいないことをしていたなあと。
これからも、色んな所に行って新しい何かを発見したいです。旅行記漫画もまた描こうと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
――『「日本が好きだから他の国は見なくていい」と言うのは、日本好きの観点からしてももったいないことをしていたなあ』って、すごく共感します。今日は本当にありがとうございました。次の作品にも期待しております!