線路にライオンの糞を撒いてみた!
9月から11月はシカの繁殖期。活動的になるシカと電車との衝突事故が日本各地で増えます。なぜシカが線路に立ち入るかというと、鉄分補給でレールを舐めに来ていると言われています。
日本で最初にライオンの糞を使った鉄道会社は、おそらくJR西日本の和歌山支社です。三重県と和歌山県をつなぐ紀勢線では、シカの衝突事故で列車の遅れや運休が発生していて、2002年は202件に達しました。その年の11月、動物園がある複合施設のアドベンチャーワールド(和歌山県)からライオンの糞40kgを譲ってもらい、それを水に溶いて線路に散布。
その散布から臭いが薄まるまでの3か月の間、衝突事故が0件になったという結果が!しかし近隣住民から「臭い!」といったクレームが寄せられたり、糞を入手して薄めて撒くという手間の問題などもあり、その後は続かなかったそうです。
そもそもなぜライオン?
日本のシカは、ライオンに遭ったこともないのに、なぜライオンの糞の臭いをかいで、危険だと判断するのでしょうか?はっきりは分かっていないのですが、シカには、捕食者の臭いを避ける本能があると考えられています。
この研究をしている岩手大学が、ライオン以外の他のネコ科、ピューマやチーターなどの動物の糞でも実験したところ、ライオンのものが一番高い忌避性があると確認されたそうです。ライオンの糞と他のネコ科の糞とは主要な成分が似ていることから、効果があるのは、ライオンの糞の非常に微量なものと考えられています。
ライオンの糞を使った忌避剤は今も使われている
岩手大学は、JR東日本と2004年からライオンの糞を利用したシカの忌避剤についての共同研究を行っています。
JR東日本の盛岡支社管内では、今年も8月にライオンの糞から抽出した成分を加えた液剤を散布しています。釜石線では、2004年から毎年1回散布していて、今年は5kmの区間でしたが、過去5年ほどは10km程度の区間に対して行っています。天候などの影響はありますが、1回の散布で2~4か月ほど効果を期待しています。
他にも高さ2mの高さのネット(画像で見る限りはナイロン製)を設置し、2018年からは赤と緑のレーザーの光を点滅・回転なども行っていますが、衝突事故ゼロには至っていないようです。
ちなみに、山ライオンの尿を100%使った動物除けが日本国内の通販で買えます。猿、イノシシ、シカ、タヌキ、アライグマ、キツネなどに効果あるとか。
オランダでも使用検討
オランダの北海沿岸に位置するザントフォールトでも、ライオンの糞の臭いを利用したシカ除けの検討が行われているというニュースが昨年ありました。この町の場合、鉄道ではなく、道路や公園、住宅に侵入する気性の荒いダマシカ対策です。
ライオンの糞そのものや成分を使うのではなく、似た臭いを、油や17種類のハーブ、雨にさらした灰皿のような臭いの物質を混ぜて作り上げています。ドイツの科学者が、クリスマスツリーの苗木の農園を荒らすシカ除けに開発したものなのだそうです。アムステルダム自由大学教授は、全ての動物の恐怖心を本能的に煽る臭いだと説明しています。
ちなみに、オランダではないのですが、ライオンをおびき寄せるためにゾウの糞を活用した人たちがいます。ライオンの写真を至近距離で撮影したい写真家が、ゾウの糞の山に赤外線センサー付きデジカメをセットしたとか。撮影は見事成功!糞も使い道があるんですね。
(参考)
Exciteニュース
朝日新聞
四国新聞社
JR東日本ニュース
文春オンライン
岩手大学大学院 研究論文
AFP
GIZMODO
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