毎日雨がしとしとと降り続き、気分が沈みがちな梅雨の時期。朝起きて雨が降っていたら、気持ちがどんよりするという人も多いのではないでしょうか。ですが、雨はあらゆる生命にとって欠かせない存在です。いにしえの日本人はそんな天の恵みである雨に様々な美しい名称をつけてきました。
日常でも使える「雨」にまつわる美しい言葉をお伝えします。
翠雨(すいう)
草や木の青葉に降り注ぐ雨のこと。初夏の美しい青葉をいっそうつややかに見せてくれます。また、若葉に降り注ぐ雨のことを「若葉雨」とも言います。
樹雨(きさめ)
樹木が生い茂った山間部では「樹雨」が降るといわれています。雨が降っていないはずなのに、木々の下を歩いていると水滴がぽたぽたと落ちてくることがありますよね。このように木の枝や葉っぱについた霧が水滴となって落ちてくることを「樹雨」と呼びます。樹雨は霧が発生しやすい山地でよく起こる現象で、木々の間を流れる霧の水分が木の葉や枝に少しずつ付着して水滴となり、それが雨のように地上に落ちてゆく様子からこのような名前が付けられたのだとか。少し曇りがかった日に樹雨の降る林の中をゆっくりと散歩するのも、なかなか風流ではありませんか。
白雨(しらさめ・はくう・びゃくう)
雲が薄明るい空から降るにわか雨のこと。雨が降っても空が白く明るいと、気持ちもぱっと明るくなりそうですね。
五月雨 (さみだれ)
五月雨とは旧暦の5月、つまり梅雨の時期である新暦の6月頃に降る雨のこと。止んだと思ったらすぐまた降り、いつまでもしとしとと降る雨にうんざりする方も多いと思いますが、そんな雨を「さみだれ」と呼ぶだけで、なんだか一気に風流な気分がしませんか? 梅雨の季節の晴れ間の日に「五月雨が続いていましたが、今日は久しぶりの五月晴れ(さつきばれ)ですね」と喜びを表したいですね。
涙雨(なみだあめ)
涙のようにしょぼしょぼと降る「涙雨」。また、泣きたい気分の時に、その気持ちに空が同情してくれているかのように降る雨のこともこう呼びます。悲しい時に雨が降っていると一層憂鬱な気分になりそうですが、そんな時はいっその事、悲しみを洗い流してもらうような気持ちで涙雨に打たれるのもいいかもしれませんね。
遣らずの雨(やらずのあめ)
遣らずの雨とは、訪ねてきた人が帰るのを引き止めるかのように降り出す雨のこと。雨の休日は、普段なかなかゆっくりと話す機会のない友人や、離れて暮らす家族と共に過ごす良い機会。帰り際になって雨が降ってきたら「遣らずの雨・・・。せっかくだから、もう少しゆっくりとしていって」と引き止めてみてはいかがでしょうか。
驟雨(しゅうう)
急にざっと降り出して、しばらくするとぱたりと止んでしまう雨のこと。日常的には「にわか雨」として親しまれています。
宿雨(しゅくう)
連日降り続く雨、前夜から降る雨のこと。まるで雨が一箇所に泊まっているかのように長く降り続く雨の様子を、昔の人はこのように表しました。ずっと降り続いていた雨が止み、空を見上げて「宿雨がようやく晴れましたね」と喜ぶあなたは風流人です。
篠突く雨(しのつくあめ)
「篠」とは細かく群がって生える「篠竹」のこと。その篠竹を束ねて地面に突き刺すようにざっと激しく降る大雨のことを「篠突く雨」と呼びます。大雨の日でも「篠突く雨の中を歩いてきた」とサラッと言える風流で余裕ある心を持ちたいですね。
憂鬱な気分になりがちな雨の日ですが、たまにはのんびりと雨宿りでもしながら情緒に浸ってみてはいかがでしょう?
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