世界には数々の木造建築が現存しますが、ことに教会は古くからの建築様式を受け継いだ不思議な美しさを放つ建物が多いと感じます。
一見、何で造られているの? ミニチュアじゃないの? と目をこらしてしまうような独特の趣きを持つ教会たちを紹介します。
ロシアのプレオブラジェンスカヤ聖堂
ロシアのオネガ湖に浮かぶ秘島、キジ島には、一度見ると忘れられないタマネギ型ドームの教会があります。釘を一本も使っていないというのが信じられないような曲線美。
長年雨風にさらされた22個のドームは、光を受けると銀の鱗のように輝きます。本当に不思議な質感。他にも鐘楼や農家、風車小屋など数々の木造建築が並び、島全体が木造建築の博物館のようになっています。
ポーランドの南部マウォポルスカの木造教会群
「木造建築の道」という長さ1,500 km以上の観光ルートには、232もの木造建築が並んでいます。くさび形の板を組み合わせた屋根は独自のもの。その昔日曜のミサのため遠路はるばる来た人たちが、屋根の下で土曜の夜を過ごしたため、軒下は「土曜日」と呼ばれているそうです。また、センコヴァの聖フィリポ・聖ヤコブ教会は茅葺きのような独特の屋根が板葺きで造られています。ビナロヴァの大天使ミカエル教会は、内部も見事です。新約聖書の場面が連作で描かれた多彩装飾は、とても貴重なものだそう。
ノルウェーのボルグンド・スターヴ教会
まるで武将の鎧のようなこの建物は、ノルウェーに30近くあるスターヴ教会のひとつ。スターヴとは垂直に立てた太い柱が屋根を支える、この地ならではの建築様式です。日本のシャチホコのように、屋根の端には竜の装飾が施されています。なんとなく、ヴァイキングっぽいと思ったのですが、それもそのはず、同じものでした。教会にはヴァイキング船の造船技術が生かされているそうです。
光の加減や補修の関係により、見た目は真っ黒のこともあれば、木の風合いが感じられることも。たしかにこうして見ると、箱船っぽい雰囲気もありますね。
一言で木造といっても、その柔軟性や多様性には目をみはるものがあります。昔の人々の、少ない素材を生かす知恵が、そこには息づいているように感じます。
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