「財閥」とは何か?
「世界三大財閥」を紹介する前に言葉の定義の確認から。小学館『日本大百科全書』によると「財閥」とはもともと、ジャーナリズム用語なのだとか。
辞書的に言えば、
<財界に勢力のある大資本家、大企業家の一族一門。同族支配に特徴づけられた封鎖的な多角的事業経営体>(『精選版 日本国語大辞典』より引用)
といった定義になるそう。
財閥はかつて日本にも存在し、三井、岩崎(三菱)、住友などの大富豪と、その大富豪の支配下で営まれる事業組織を財閥と呼びました。
もちろん財閥は、世界にもあって「世界三大財閥」と呼ばれる超巨大な国際金融財閥も存在します。
ユダヤの国際金融財閥「ロスチャイルド」
テルアビブのロスチャイルド通り ©️Boris-B / Shutterstock.com
ほかの世界三大○○と同じで「世界三大財閥」も、世界的に共通した考え方が存在するわけではないようです。ただ、ロスチャイルド家を、世界三大財閥の1つに数える向きは多い様子。
ロスチャイルドという言葉から、陰謀論か何かを連想する人もいるかと思います。何か、ミステリアスで、きな臭い感じがしますよね。
ロスチャイルドの場合、直系の男子にしか経営に関与させず、内部の情報について「語るなかれ」という伝統があるため、世界的な存在感の大きさの一方で謎が多く、陰謀論のネタになりやすいといった側面があるようです。
そもそも、ロスチャイルドとは、ユダヤ人の家系の一族によって成り立つ国際金融財閥です。
初代のマイヤー・アムシェルは当初、古銭商を営むだけの身分でした。しかし、1760年代、ドイツの王侯貴族ヘッセン伯ウィルヘルム9世と知り合い、宮廷銀行家の立場を得ると、その後に事業を拡大していきます。
さらに、自分の子どもたち5人を、フランクフルト、ロンドン、パリ、ウィーン、ナポリに送り、それぞれに拠点を構えさせ、国境を越えた形でヨーロッパで金融活動を展開していきます。
ナポレオン戦争の時には、反ナポレオン陣営諸国に軍資金を貸し付けるなどして巨万の富を得て、ヨーロッパ最大の金融王国をつくります。さらには石油、金、ダイヤモンド、ワインなどの事業を展開し、確固たる地位を築いていくのですね。
ロスチャイルドと並ぶ国際金融財閥「モルガン」
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そのロスチャイルドに並び称される国際的な金融財閥がモルガンです。
アメリカ三大財閥、あるいは四大財閥ともいわれる存在で、それらの中でも最大の存在感を放ち、ほかの財閥と共に、アメリカの政権を動かす力を持った時代もあったそう。
モルガンの始まりは、イギリスのウェールズから1636年に移住してきたマイルス・モルガンにまでさかのぼります。
職工、農民、コーヒー店、旅館、不動産、保険業などを次々と手がけ、身を起こし、その子のジュニアス・スペンサー・モルガンが銀行業を始めます。
その父親の銀行に入行し、修行したジョン・ピアポント・モルガンが、近代的な銀行の「モルガン商会」を子会社として設立します。このモルガン商会は普仏戦争のときに、フランス政府に対して国際協調融資を組み、ヨーロッパにも足がかりをつくりました。
そのヨーロッパとの関係を背景に、国内での影響力を高めます。主要鉄道会社を支配したり、エジソン電灯会社・ベル電話会社と関係を結び、巨大独占企業ゼネラル・エレクトリック(GE)、AT&Tを育て上げたりと、数々の実績を残して、世界三大財閥の1つといわれるくらいの存在に成り上っていったのですね。
アメリカの石油王「ロックフェラー」
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そのモルガンと同じく、アメリカの三大財閥、あるいは四大財閥ともいわれるロックフェラーを「世界三大財閥」の1つに数える人も多いようです。
ロックフェラーといえば「アメリカの石油王」という言葉を連想する方も多いのではないでしょうか。
もともとは、決して裕福ではなかった薬の行商人の息子のサクセスストーリーがベースになっています。創始者ジョン・D・ロックフェラーは、農産物仲買商の会計係を経て19歳で独立、いろいろな事業に投資しながら資金をため、石油精製業に進出します。
1870年に「石油産業の始まり」と後にいわれる、スタンダード・オイル社を資本金100万ドルで立ち上げ、アメリカ全土の石油市場を10年余りでほぼ独占するまでに至ります。その後、鉱山、化学、銀行などの事業を展開し、多目的財団を1913年に立ち上げ、自然科学の分野に貢献する存在になりました。
第二次世界大戦後にもさらに飛躍し、モルガンに肩を並べる存在にまでなっていったようですね。
以上が、世界三大財閥の顔ぶれになります。興味を持った方はあわせて、日本の財閥についても調べてみてはかがでしょうか。より、財閥の存在がわかるかもしれませんね。
[参考]
※ 小学館『日本大百科全書』
※ 平凡社『百科事典マイペディア』
※ 旺文社『旺文社日本史事典』
※ 平凡社『世界大百科事典』
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