旅はめんどうくさいもの

Posted by: いわきあゆこ

掲載日: Oct 11th, 2023

TABIZINE10周年を記念して、ライターそれぞれが自由に綴る旅エッセイ。第11回目は、TABIZINE編集部のいわきあゆこです。TABIZINEが10周年ということで、あらためて旅の魅力について考えてみたところ、過去のさまざまな思い出があふれてきました。知らないところへ足を踏み入れ、見たこともないものを見たり、食べたことのないものを食べたり、知らない人と話をしたり、驚きや喜びや戸惑いや不安、さまざまな感情をかき立てられる、それが旅の醍醐味。でも、それだけでないことにも気づいたのです。

ハワイ・ダイヤモンドヘッドからの景色
ハワイ・ダイヤモンドヘッドからの眺め

道に迷ったり、飛行機に乗り遅れたり、飛行機が飛ばなくて空港で何時間も待たされたり、暴走するタクシーを途中で降りたり、親しげに話しかけてくる人に騙されたり、お腹をこわしたり、友人とけんかしたり、泊まるはずのホテルが完成していなくて予約サイトの会社に国際電話をかけたり、お土産に買った陶器を買った瞬間にレジの前で落として割ったりしたこともありました。振り返れば、どれも笑える思い出です。

タイ・バンコク・フアランポーン駅
タイ・バンコク・フアランポーン駅

今いるところから離れて、遠いところへ飛び出していくのは、とても大きな勇気がいること。勇気だけではありません。あらかじめ決められたツアーでなければ、その場所がどんなところか、何があるのか、行き方、そこへ行くためにはお金がいくらかかるのか、時間をかけていろいろなことを調べたり、準備したりしないといけないのです。

宮崎県・サンメッセ日南
宮崎県・サンメッセ日南

言ってみれば、旅というのはめんどうくさいものかもしれない。

韓国・済州島・ウェドルゲ
韓国・済州島・ウェドルゲ

でも、準備をしている時間は、実際に旅先に出かけているときと同じくらい楽しい時間ともなりえます。その旅の可能性は、自分次第でいくらでもふくらませることができるのです。

フランス・パリ・シルク・ディヴェール
フランス・パリ・シルク・ディヴェール

限られた時間の中で、どこへ行って、何を見て、何を食べて、何を買って、どこに泊まるか。遺跡や美術館で歴史や文化に触れたり、スパやマッサージ、美容室、ネイルサロンに行ってリフレッシュしたり、海で泳いだり釣りをしたり、料理や言語を学んだり、コンサートや演劇、映画を観たり、クラブやディスコで踊ったり、絶景や映えスポットの写真を撮ったり、飛行機や電車、バス、船、自転車に乗ったり……。

タイ・ピピ島
タイ・ピピ島

たくさんの選択肢から、時間とお金と自分の気持ちのバランスを考えながら、予定を決めていく――すでに旅は始まっているのです。

自転車に乗る人影

そして、現地で過ごす充実した時間は、綿密に調べた労力によって得られるものだし、旅先での時間が充実すればするほど、調べ物に費やした手間は忘れてしまうもの。

タイ・パンガー・ジェームズ・ボンド島
タイ・パンガー・ジェームズ・ボンド島

知らなかった国、行ったことのない地域、気になって行ってみたいと思っている街……。TABIZINEのライターさんが書いてくれた記事を読むと、その場所について知ることができます。

沖縄県・備瀬海岸
沖縄県・備瀬海岸

それは実際に行ったことに比べれば、ほんの小さな経験かもしれないけれど、読むことで、その場所への興味や関心が呼び起こされ、その街の人や建物、食べ物、文化、歴史、空気、いろいろなものへの想像がふくらむのではないでしょうか。

アメリカ・ミネアポリス
アメリカ・ミネアポリス

そのこと自体が豊かな行為であり、かけがえのない経験のはず。それが、誰かの旅が始まるきっかけになったらうれしく思います。
海面に映る航空機の影

[All photos by Ayuko Iwaki]
Do not use images without permission.

 


 

PROFILE

いわきあゆこ

Ayuko Iwaki

週刊誌記者、女性誌編集者を経て、タイで日本語新聞記者、フリーマガジン編集長として活動。帰国してウェブメディア編集長を務めた後、フリーランスの編集者・ライターとして活動。フットワークの軽さが取り柄です。

週刊誌記者、女性誌編集者を経て、タイで日本語新聞記者、フリーマガジン編集長として活動。帰国してウェブメディア編集長を務めた後、フリーランスの編集者・ライターとして活動。フットワークの軽さが取り柄です。

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