日本語学習者数は世界に約379万人
国際交流基金が3年に1度行っている調査「2021年度海外日本語教育機関調査」によると、日本語を学んでいる人の数は379万4,714人で、過去3番目の多さだそうです。
前回の2018年度と比較して学習者数が増加した国・地域は、中国、オーストラリア、トルクメニスタンで、逆に学習者数が減少したのは、韓国、台湾、ミャンマーでした。コロナ禍で、全世界の「日本語教育機関数」「日本語教師数」「日本語学習者数」は減少傾向にあるそうです。
日本語学習者の多い国・地域トップ10
第1位 中華人民共和国(中国)105万7,318人
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日本語学習者の多い国・地域の第1位は中国。前回2018年度調査に引き続き100万人を超え、5.2%増加の約105万人となりました。
学習者が増えている要因としては、日中間の緊密な経済関係が、日本留学、日系企業への就職などの実利的なニーズをもたらしていること、日本のアニメ・マンガ、ファッション、ポップカルチャー、観光などの文化的側面が、日本への興味・関心を強く喚起していることが背景にあると考えられます。
第2位 インドネシア71万1,732人
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経済成長が好調なインドネシアが、71万1,732人で第2位。高校の第二外国語の一つに日本語が指定されていることもあり、学習者の大部分は高校生です。
インドネシアは日本と経済面での結びつきが強いことから、以前は実利的な目的で日本語を学習する人が多かったのが、最近は日本のアニメ・マンガ・J-POPをきっかけに学び始める若者が増えているようです。
第3位 大韓民国(韓国)47万334人
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約47万人の日本語学習人口を擁する韓国が第3位。中等学校、高等学校ともに選択科目の中の外国語に日本語が入っており、小学生から一般成人まで幅広い層が日本語を学んでいます。
ここ数年は日本への就職を目的に日本語・日本文化を学ぶ学生が増加傾向。また、「学院」と呼ばれる民間の教育機関や、各種文化センター、公民館等での日本語教育が盛んなのも特徴的です。
第4位 オーストラリア41万5,348人
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第4位はオーストラリアで、日本語学習者の数は約41.5万人。その約96%が初等・中等教育における学習者です。外国語学習は、ほとんどの州で必修化されていますが、初等教育段階での日本語教育においては、学校によって大きく学習時間数が異なっています。
日本語を学ぶ理由は、経済などの実利的な目的よりも、日本の文化、特にポップカルチャー(アニメ、マンガ、ドラマ、J-POPなど)への興味を挙げる学生が多い一方、それだけでなく伝統文化や歴史、言語そのものに関心を持つ学生もいて、関心分野の広がりや深化が徐々に進んでいるそうです。
第5位 タイ18万3,957人
日本語学習者が18万3,957人のタイが第5位。その約8割を中等教育機関での学習者が占めています。タイの日本語教育は歴史が古く、1981年に高校の第二外国語のひとつ(8つの外国語からひとつを選択)として正式に日本語が加えられました。
親日的感情、日本とタイの経済関係の強さ、アニメや歌、コンピューターゲームといった日本のポップカルチャーの流入などとともに、タイに進出している日系企業の増加も、日本語教育進展の要因となっています。また、2013年に一部ビザ免除によりタイ人訪日観光客が増加していることも関係ありそうです。
第6位 ベトナム16万9,582人
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6位は学習者16万9,582人のベトナム。日本との経済交流、文化交流の拡大が続いていることから、学校教育における日本語教育は堅調に伸びています。
2022年時点においては、日本国内で実施されている、特定技能人材としての日本語能力水準を判定する日本語試験(国際交流基金日本語基礎テスト:Japan Foundation Test for Basic Japanese(JFT-Basic))の受験者の多くがベトナム国籍だそうです。
第7位 アメリカ合衆国(米国)16万1,402人
アメリカが7位で、学習者は16万1,402人。1980年代以降、日系企業の進出に伴い、日本語ブームが起きた後、日本のバブル崩壊から、行政や世論の日本に対する関心が薄れたと言われてきました。一方で、近年ではマンガ、アニメやゲームなど日本のポップカルチャーをきっかけに日本語を学ぶ人が増えているそうです。
米国での日本語教育は学校教育が主流のため、民間の語学学校などにおいて日本語講座が占める割合は少ないものの、ここ数年、インターネットなどを利用して日本語を学習する「自立学習者」が増えている傾向があるとのこと。
第8位 台湾14万3,632人
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8位は学習者14万3,632人の台湾です。1996年から高等学校(高級中学)での第二外国語教育が試験的に実施され始め、2000年代に入ってからは、徐々に小学校や中学校においても日本語をカリキュラムや課外活動に取り入れる機関が登場。
台湾において、日本語は英語に次いで学習者の多い外国語となっています。日本語能力試験の応募者数は7万5,227人、受験者数は6万6,445人(2022年度)で、応募者数・受験者数ともに日本語学習者の多い上位10カ国中でも随一。また、6歳から90歳までと受験者の年齢も幅広いのも特徴です。
第9位 フィリピン4万4,457人
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第9位はフィリピンで、4万4,457人でした。フィリピンでは、日本語は観光業関連か就労目的といった動機で学ばれていましたが、近年になって、若い世代の間に日本のアニメやポップカルチャーに対する興味から、日本語を学び始める人が増加しています。
2008年12月のEPA発効によって、2009年5月から、フィリピン人看護師及び介護福祉士候補者が日本に迎え入れられるようになり、再度日本語教育が注目され始めました。
第10位 マレーシア3万8,129人
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学習者3万8,129人のマレーシアが10位でした。1984年に中等教育機関6校で開始された日本語教育は、2023年1月現在、約130校で行われています。日本語を選択希望する生徒は少なくないものの、学校側ではフランス語・ドイツ語・韓国語といった言語の履修者を均等にしようとしているところもあり、大学では教師の数が足りないという実情があります。
一方、学校教育以外においては経済面・文化面で存在感を増している中国語や韓国語の人気が上昇しており、日本語の人気は相対的には以前より低下しているそうです。
[参考]
国際交流基金「海外の日本語教育の現状 2021年度日本語教育機関調査」
国際交流基金-日本語教育 国・地域別情報 2022年度
2022年版Duolingo言語レポート
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