なぜここをバケットリストに入れたのか?
人は一人では生きられません。それと同じように国家も諸外国と関係をもちながら発展してきました。日本にとって世紀を超え最も重要なパートナーのうちの1国は中国と言っても過言ではないでしょう。
中国には4000年の悠久の歴史があると言われています。広大な国土をもち、その領土を守ってきました。中でも万里の長城は5万km(現存するのは約2万1,196km)にも及ぶ要塞を張り巡らし、外敵の侵入を防いできたのです。この、人類史上でもまれな遺跡をご紹介しましょう。
地球規模の長さをもつ世界史上最長の人工建造物
万里の長城は、紀元前8世紀の春秋時代に始まり17世紀の明代まで2000年を超えて建設が続けられました。総延長は5万kmになると主張する研究者もいるようです。赤道の長さが約4万kmであることと比較すると、桁外れのスケールであることがわかります。
かつての中国の教科書には、万里の長城は「宇宙から肉眼で見える唯一の建造物」と紹介されていました。ところが2004年、国際宇宙ステーションから中国系アメリカ人のリロイ・チャオ飛行士が確認したところ、彼の眼には映らなかったようです。しかしながら、望遠レンズを装着すればデジタルカメラで実像を収めることには成功しました。教科書の記述は変更されたようですが、万里の長城は地球規模の建造物であることは間違いないようです。
ユネスコの世界遺産に登録される3つのエリア
地球規模の長城は全てが残っているわけではないので、総延長を実測することはできません。中国国家文物局では現存する遺構は21,196.18kmと発表しています。中国内の15の省、約44,000のスポットに分かれて点在しているのです。その中で、北京市郊外の八達嶺、秦皇島市の山海関、嘉峪関市の嘉峪関の3つのエリアが、1987年にユネスコの世界遺産に登録されました。八達嶺は、北京の市街地から北西約70kmに位置し交通の便もよいため、連日、夥しい数の人々が訪れています。
八達嶺の峰々を龍が這うように繋がる長城
八達嶺長城の全長は約3,700mです。このエリアは明代の1505年に造られたと言われています。八達嶺の稜線を北東から南西に、龍が這うように要塞が延々と繋がっています。
八達嶺長城の入口には堂々とした鑰鎖門が建造されており、独特な歴史感を漂わせています。
門をくぐり抜けるとルートは南北に分かれています。南は急勾配の男坂、北は傾斜が比較的緩やかな女坂へと繋がるのです。観光客の流れは、北の方向に向かうことが多いようです。
北方からの遊牧民族の侵入を防ぐために建造された要塞
山の緑の中に灰色の焼成レンガを積み上げられ、壮観なラインを作っています。要塞の色彩はモノトーンであるため、無機質で冷たく感じられるかもしれません。本来の目的は北方からの遊牧民族の侵入を防ぐためですから、カラフルにする必要はなかったのでしょう。とはいっても、峰々を繋ぐ樹木と壁が絶妙で見事な構図を造り上げているようです。
堅牢な要塞は幅6.5m前後、高さは平均7m、最も高いところは14mに達します。要塞の内側はシンプルな壁ですが、外側には切れ込みが施され、ここから弓矢などで外敵を攻撃したのでしょう。中国悠久の歴史の中で、どれほどの兵士がこの要塞を駆け抜けたかが偲ばれます。
要塞の要所には楼台が設置されています。ここから敵兵の動きを見張ったのでしょう。
眼下に絶景が広がる北八楼
女坂には8つの楼台が設けられています。桜台に大将が仁王立ちし要塞に大勢の兵士が並ぶと、中国版の戦国絵巻ができあがるかもしれません。
女坂の頂上の北八楼は標高約900mなので、遺跡巡りには登山体験の要素が加わるようです。気温も入口付近より低くなります。
北八楼からは障害物なく360度のパノラマで、八達嶺の峰々や万里の長城の絶景が広がります。
坂道を登るには体力が必要となりますが、男坂にも女坂にもロープウェイが設置されているので、省エネで北八楼へも南八楼にたどり着くことができます。
万里の長城をテーマとした中国長城博物館
麓の中国長城博物館では万里の長城をテーマとして、要塞付近からの出土品や歴史文献、写真、模型などが展示され、中国の歴史を深堀することができます。
隣国の歴史の知識を深める万里の長城
古くから様々な交流が行われてきた、日本海を隔てた隣国・中国。悠久の歴史を繋ぐ中国史の中でも、万里の長城は幾世紀にもわたって数々の王朝が建設を行いました。八達嶺長城を訪れれば、隣国の歴史に関する知識が深まります。きっと、隣人との交流に活かすことができることでしょう。
八達嶺長城(万里の長城)
住所:北京市延慶区軍都山関溝古道北口
電話番号:010-69122222
営業時間:9:00~16:00(10/1~2/11)、6:30~16:30(2/12~9/30の日曜日から翌週木曜日)、6:30~16:30・19:30~21:30(2/12~9/30の金・土曜日)
定休日:なし
施設 URL リンク
「八達嶺長城」公式ホームページ(日本語):
http://www.badaling.cn/language/jp.asp
[参考]
「八達嶺長城」公式ホームページ(日本語):http://www.badaling.cn/language/jp.asp
「北京観光」ホームページ(日本語):https://jr.visitbeijing.com.cn/attraction/5
「国家文物局」:https://www.gov.cn/jrzg/2012-06/05/content_2153766.htm
中嶋嶺雄著『中国』(中公新書)
天児慧・加藤千洋著『中国大陸をゆく』(岩波新書)
地球の歩き方『北京天津』
Hitoshi Obayashi ライター
2012年より数々のWebサイト、雑誌、書籍のメディアにおいてトラベルライターとして活動しております。国内では47の都道府県に全て訪問し、海外の渡航国は67カ国に達しました。この経験をもとに、日本全国、世界各国にあふれるユニークな特徴や魅力をご紹介して参ります。
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